不確かな僕ら

入川軽衣

プロローグ 生まれ持った使命


 この世に生を受けた人々それぞれに、もし、何らかの使命があるとして、こんな何もない、冴えない俺に与えられるような使命とは一体何だろうか。

 頭の回転が速く勉強がよく出来、将来この国を背負って立つようなキャプテンシーなんて到底あるわけもなく、クラスの人気者になれるユーモアや笑いのセンスもない。周囲に気を配り、老若男女問わず誰にでも優しく手を差し伸べられるような奉仕の精神もなく、運動神経が良くてスポーツの才があるわけでもない。

 もちろん、誰もがそんな特筆したチカラがあるわけではない。それでも人それぞれに長所、短所という、その人に当てはまる形容が少なくとも一つくらいはあるわけだ。

 小学校の道徳とかなんかで経験したことがあるのじゃないだろうか。

「○○さんのいいところを伝えましょう」

 こんな感じのテーマの授業に心当たりがある人はいるだろう。中学英語の形容詞の授業でもあり得るかもしれない。

 こんな授業、仮初や忖度でのやり取りになるか、仲良し同士でイチャイチャするだけで時間の無駄だろう。後者ならまだ良かったが、俺にそんな相手など生まれてこの方いやしない。

 この世に生を受けた人々それぞれに、もし、何らかの使命があるとしたら、俺は誰かの為に捧げる人生がいい。

 それは償いで、また単なるワガママなのかもしれないけれど……。

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