公園での再会

勝利だギューちゃん

第1話

家の近くに公園がある。

小さな児童公園だ。


お昼時や、休日などは、子供たちが元気よく遊んでいる。

とても、微笑ましい。


ここは下町に位置するので、子供たちは口が悪い。

でも、根はいい子なので、誰とでもすぐに打ち解ける。

なので、いじめはない。


平和だ。


僕は、ベンチに腰を下ろして、パンと紅茶を口にする。

これが、憩いの一時だ。


しかし、同じ事を考える人はいるもので、同じようにベンチに座り、軽食を取っている。

でも、暗黙の了解なのか、会話はない。

軽く会釈をする程度だ。


その日も、軽食を持って、その児童公園に行った。

すると、ベンチはほぼ満席だった。

見渡すと、ひとつだけ開いているベンチがあり、そこに腰を下ろした。


しばらくすると、ひとりの女性が声をかけてきた。

「お隣、よろしいですか?」

僕は、断る理由もないので、どうぞと頷いた。


しばらくは、そのまま沈黙が続いた。

悪い意味ではない。

互いの干渉はしないというのが、ここの決まりなのだ。


「子供たち、元気いいですね」

女性が声をかけてきた。

驚いた。

まさか、声をかけてくるとは・・・


でも、無視をするのは失礼なので、僕は返事をした。

「そうですね。最近の子供にしては、外で遊んでいるので、元気です」

「そうですか・・・私、最近越して来たばかりなので・・・」

なるほど、道理で知らないわけだ。


「すいません。ここは他人の干渉はしてはいけないんでしたよね」

「いえ、このくらいの会話なら、許容範囲です」

女性は、笑って頷いた。


その後は会話がなかった。

遊んでいる子供たち・・・

それを眺めていると、微笑ましかった。


「さてと、私はこれで、失礼します」

女性は丁寧に挨拶をした。

僕は、軽く会釈をした。


「ひろや、帰るわよ」

子供の中の1人が、女性の所に来た。

5歳くらいか・・・

女性の子供のようだ。


「この子は、息子のひろやです。友達が出来るか心配でしたが、

すぐにできて、とても安心しています。」

「ひろやです。5歳です。よろしくお願いします」

子供らしくない口調だが、とても、元気がよかった。


「私たちは、母子家庭なんですが、こちらへ来てよかったです。」

「皆さん、そう言いますよ」

この町へ越してきて、後悔した人はいない。


「あのう、よろしければ、お名前教えていただけますか?

私は、森里佳代子です。この子は、ひろやです」

丁寧に挨拶されて、くすぐったくなった。


別に恋をしたわけではないが、やはりいきなりは照れくさい。


「僕・・・いえ、私の名前は・・・」


その瞬間、女性の顔色が変わったのを、見過ごさなかった。

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公園での再会 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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