その6 相棒の行方と似た者同士(事件編)

「頼むのだ!」



ジャパリパークのどこかのエリア。

そこに、古びたその建物はある。

とあるコンビのなわばり。

今日もそこを訪れるフレンズがいた。



「ここが、ダブルスフィアのじむしょ?で合ってるのだ?」

「うん、そうだよ!」

「とりあえず、どうぞ、この椅子に腰をかけて下さい。」

「私、お茶淹れるね!え?失敗しないか心配?大丈夫、他の事件の依頼主に教わったからね!」


依頼人のフレンズは、椅子に腰かけた。

ダブルスフィアの1人……オオアルマジロのアルマーがお茶を淹れた器を並べる。

そして、依頼人のフレンズと向かいの椅子に座るオオセンザンコウのセンが、質問する。


「まず、お名前を」

「あ、アライさんはアライグマのアライさんなのだ!」

「今日は、どうされたのですか?」

「実は……アライさんの1番の親友が、最近アライさんと別行動をするようになってきたのだ!」

「別行動」

「そう、フェネックギツネのフェネックっていうのだ……。すぐ戻ってはくるんだけど心配なのだ!」

「なるほど……。」


そう言って、2人はお茶を啜った。

それを見たアルマーも、もう1脚の椅子に座り、自分のお茶を啜る。


「分かりました。その依頼、引き受けましょう。」

「やったーなのだ!じゃあ早速、アライさんが向かう方向にフェネックがいるから、こっそりついてきてほしいのだ!」






そう言って出ていったアライさんについていって数分後。

アライさんは立ち止まって、キョロキョロした。

そしてダブルスフィアを見つけると、慌てて手招きをした。


「どうしたのー?」

「アルマーさん、声が大きいです」

「ごめんごめん」

「そんなことよりあれを見るのだ!フェネックが……変なフレンズと仲良くしてるのだ!」


アライさんが指さした方向を見ると、黄色いフレンズと灰色のフレンズが一緒に歩いていた。


「あれが、フェネックさんで間違いないのですか?」

「うんなのだ!黄色い髪なのだ、大きい耳なのだ。間違いないのだ!」

「どうしよう、突撃しちゃう?」

「とりあえず、近づかないことには始まりません。怪しい素振りを見せず、話しかけてみましょう。」






「ちょーっと、いいかなー?」


怪しい2人組に、声をかける。

だが、そのうちの1人の口調は意外なものだった。



「──何なのだ?」



名探偵2人と依頼主は、微妙な空気を作り出した。

2人のうち1人は、依頼主と全く同じ口調だった。

それに、同じ口調の2人は少し似ている。

まあこれも偶然かもしれないと、アルマーは続けた。


「えぇっと、私達はなんていうか、通りすがりのフレンズなんだけど」


それを遮るように、依頼主は言った。


「おい、あんた!自分のフェネックに近づくななのだ!」

「何ィ!?何てことを言うのだ!?」

「これ以上喋るななのだ!観念しろなのだ!」


同じ口調の2人は言い合いをしたが、やがてダブルスフィアが動く。


「そこのあなた、いい加減に吐いて下さい」

「肉食のけものに威嚇された時の怖さで、私達はぱわーあっぷしたんだからね!似たような手口を使っても……」


アルマーは突然、似たような、という言葉に反応したかのように言葉を引っ込めた。


「どうしたのですか?アルマーさん。」

「センちゃん……。もしかして……。」


アルマーはセンの手を引いて、茂みに隠れた。






「私、ちょっと閃いちゃったかもしれないんだ!センちゃんの手冷たいね。あの2人ってそっくり!」

「言葉が繋がっていないようですが……私の手を握っているのは冷たいからでしょうか」

「うん!温めてあげる……じゃないや。あのね、私、本当に閃いちゃったの!アルマーさんの名推理、聞きたい?」


センが、しぶしぶ首を縦に振った。

アルマーが、にかっと笑った。


「私達、騙されてた……いや、化かされてたんだよ!」

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