第11話 リミナルゼ → 訓練開始
名前: リミナルゼ
状態: 健常
LV: 3
称号: 村の子供(なし)
年齢: 9歳
種族: 猫人族
技能: 採取3/料理3/手当2/裁縫1
特殊技能: 一途
才覚: 魔術の
僕は突然のリミの宣言に、唖然としながらもリミのステータスを確認していた。
リミ自身のレベルはまだ三だけどスキルの伸びがいい。結構頑張ってるけど未だにレベル二のスキルしかない僕に比べてスキルは四つだけど(これでも九歳としては破格の数だ)その内ふたつがレベル三になっている。
勿論、これは百パーセントリミの努力の結果だと思うけど、リミの特殊スキルの恩恵もある気がする。リミの特殊スキルは【一途(いちず)】。これは『強い想いを長く抱き続ければ早く高みに達する』というスキルらしい。だからといってすぐに効果が出るようなものじゃなくて、どうも効果が表れ始めるのは最低でも五年くらいは気持ちが持続してなければならないみたい。ここ最近のリミの伸びがいいのはこの条件を満たしてきているからかもしれない。
ということは、リミもずっと前から冒険者になりたいと思っていたということだろうか。それなら僕からは止めることはできない。女の子だから危ないとかいえることはあるけど、僕のお母さんも立派な冒険者だったんだから、それを理由に止めるのはお母さんを否定しちゃうことになるからできればしたくない。
「……リミがどうしてもっていうなら僕は応援する。でも、ちゃんとおじさんとおばさんには許可をもらわないと駄目だよ」
「ほんと! 本当にリミも冒険者になっていいの、りゅーちゃん」
「え? ……だって僕が冒険者になることを諦められないのに、リミにやめろなんて僕はいえないよ」
「そっか……うん! でもいまはいいか。大丈夫、ちゃんとお父さんとお母さんにはこれから時間をかけて説得するよ。だから明日……ううん、今日の夕方から私もガードンおじさんとマリシャおばさんの訓練を一緒に受けることにする!」
お父さんとお母さんの訓練は結構厳しいんだけどいいのかな。でも、それで諦めちゃうくらいならまだ諦められる夢だったってことだからそれはそれでいいのかも。
「わかった。帰ったらお母さんたちに伝えておくから夕方、うちにおいで」
「うん!」
『きゅきゅん!』
っと、モフが帰って来た。
……周りを見てくるだけで、随分遅いと思ったら野兎を狩ってきたらしい。固くした二本の耳に兎が貫かれている。あぁもう、せっかっくのモフの白い毛が血塗れだ。でも、素早い兎をあっさりと仕留めて帰ってくるあたりモフは凄い。
この周辺はそんなに獣影が濃くないので、あんまり狩りには適していない。だから、この辺で狩った獣で小型のものは狩った人が持って帰っていいことになっている。つまりモフが狩った兎は僕たちが持って帰って食べてもいいんだ。これはモフを褒めてあげないといけない。
「モフ! おいで」
『きゅん! きゅん!』
後ろ髪を引かれつつリミの太ももから離れてモフを出迎えると、まず兎を耳から外して、剣で首筋を裂いて血抜きをする。リミに後ろ足を持ってもらって血抜きを任せながらモフを川まで連れて行って洗う。洗いながらたっぷりと撫でて褒めてあげた。こうするとモフは喜ぶんだよね。
その後、簡単に解体を済ませてから仕掛けをあげ、十匹ほどの魚と三匹のうなぎを手に入れてほくほく顔で村へと帰った。
村の財産を管理して配布する管理所に獲れた魚とウナギを預けてくる。獲ってきた人の優先分として僕とリミで一匹ずつ魚をわけてもらって、あとはこの日の村人たちの希望とか過去の配布状況などを考えて魚たちは分配されていくことになる。管理所のレイミさんに手を振ってお別れすると魚を手ににこにこ顔のリミと一旦わかれて家に帰る。
「ただいま~」
「おかえり、リューマ。どうだった?」
お母さんは家にいたみたいだ、声は台所からかな。魚とか渡さなきゃいけないから丁度よかった。
「うん、大漁だったよ。はいこれ、大きいの一匹貰ってきたよ。あとモフが兎を狩ってくれたからこれも。半分はリミにあげちゃったけど」
「あらあら……モフちゃん、頑張ったわねぇ」
『きゅきゅ~』
お母さんは魚と兎を受け取りもせずにモフを抱き上げて頬ずりしている。何気に僕の次にモフを溺愛しているのはお母さんだったりする。
僕は苦笑しながら魚をたらいに入れて水を張る。少しでも冷やしておかないと悪くなっちゃうからね。兎の肉は今日食べちゃうことになるだろうから取りあえず吊るしておく。毛皮は後で洗浄したりしてから、加工しなきゃいけないので井戸の方に持って行って干しておく。
家に戻るともう一度台所にいって、魚をさばいているお母さんに今日のリミの話をする。
「そう、リミちゃんがそう言ったのね……まあでもようやくというか、いまさらというか」
「え?」
「わかったわ、ミランやデクスが最終的に認めるかどうかはわからないけど、女の子だって身を守る為に戦えたほうがいいに決まってるわ。今日の夕方の訓練から一緒にやりなさい」
なんだか拍子抜けするほど簡単に許可が出てしまった。でも、お母さんのいうことはもっともだ。ポルック村にいる以上、常に魔物に襲われる危険はあると思っておかなきゃいけない。いざというときに戦闘系スキルをひとつ持ってるか持っていないかは生死をわける。そう教えてくれたのはお母さんだった。
結局、その日の夕方からリミは訓練に参加するようになった。ご両親の許可はまだみたいだけど、反対というわけではなくこれから努力をして、冒険者としてやっていけるだけの最低限の力を身に付けることができたら反対はしないということみたい。
夕方はお父さんによる剣の訓練。もう僕は基礎の段階は終えていて、最近はお父さんとの模擬戦に終始することが多かった。だから僕はひとりで素振りと型の確認で、お父さんはリミの指導にかかりきりだった。最初は九歳の女の子にデレデレしているお父さんにちょっとムッとしたけど、リミが想像以上に真面目な気持ちだということがわかるとお父さんも厳しく指導をしていた。
リミの体格や獣人として身体能力を考慮して剣は片手剣を使うのではなく小剣と呼ばれる普通の片手剣の半分くらいの長さの剣を両手に持って敏捷性を活かした戦いを想定していくみたいだった。
あとは、後列からの攻撃手段として弓も並行していくらしく朝のお母さんの訓練では槍ではなく弓の練習をしていくことになった。
村の生活は身体が資本だったので、もともと基礎体力は備わっていたリミはお父さんたちの熱血指導を受けてぐんぐんと実力を付けていった。
ただ魔法に関しては、ポルック村にはお母さんがごく弱い【回復魔法】を使えるくらいで、他に魔法を使える指導者がいないためか残念ながら【魔術の才】は潜在したままだった。
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