Ⅱ
Ⅱ
午前中の授業は、普通に聞いて。休み時間になると小説を読み始める。誰も僕に話しかけなかった、多分僕には一種の特殊能力があるのだろう。人を寄せ付けない、とか。
昼休みの授業、クラスの中は、がら空きだった。僕しかいなかった。なんでわざわざ友達と食べるのか、僕には到底理解できなかった。
教室のドアが開くと同時に、声が入る。
「よう、春野」
北川だった。サンドウィッチみたいなやつを二つ持って、僕に向かって投げてきた。そのサンドウィッチは地球の引力に引き寄せられて、見事に地面と激突した。
「なんで取らないんだよ!」
彼はそう言いながら拾ってくれた、僕の前の席の椅子を引っ張り、座った。
「これ、お前のな」そう言いながら落ちていない方を僕に渡した。案外、優しいんだな、と思ったりした。
「別に仲良くなった覚えはないけど」
「いいだろ、じゃあこれから仲良くな」
「勝手だなぁ」
僕はサンドウィッチを食べる。野菜があんまり入っていなかった。
「驚いた、お前が急に学校にくるから」
僕は「うん」と相槌を打ちながら、彼が次の話題を投げてくるのを待つ。
「お前、どうしたんだよ」
「何が?」
「雷坂希濤と、何かあったんだろ」
「別に」
「アイツ、最近俺と話す時、元気がないんだよ」
あー、そういえば彼は希濤と会っているんだっけ。ま、どうでもいいけど。希濤は多分もう僕に愛想尽きて、嫌いになったと思う。だから彼女が落ち込む理由は、
「偶然機嫌が悪かったんじゃないの?」
「いや毎回だぞ、お前アホかよ」
「僕は極めて平凡だよ」
彼は、冷静で、日常を語るように、僕に言った。
「アイツ、また入院らしいぞ」
僕は、答えたくなかった。会いに行く理由もないし。向こうも会いたくないだろう。
「俺さ、今日ちょっと野暮用があって、アイツにプリントを届けられないんだ。だから代わりに、届けてくれないか」
「なんで君は、そんなに僕を彼女に会いさせたいの?」
彼はしらばっくれる、外の夏風が、窓を通り、教室を駆ける。
「君は嘘が下手だね」
「察してくれよ」
彼の表情の下には、何かあると思う。優しさと、嘘の他に、さらに何か、得体の知れない何かがある。
でも、かき消された。
放課後、彼は僕に渡すプリントをフォルダに挟んで、くれる。彼が仕舞う時は、丁寧だった。結構外見とのギャップがあるな、とよく思わされる。
周りの人は、僕と彼が喋るのを不思議がっていた。
「なぁ春野」
僕は振り向く。
「仲直り、ちゃんとして来いよ。さすがに高校生だし、できるよな」
彼の表情は、真面目で、声のトーンは、本気だった。どうしたんだよ、と思った。直接聞けなかったから、いつか聞こうと思った。
僕も真面目に、本心で言った。
「うん」
教室を出て、早足で廊下を渡る。
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