16
「雨ー。 お父さーん。ご飯だよー」
そんな姉の雪の声が聞こえた。
「じゃあ、そろそろ行こうか」
床の上に立ち上がりながらお父さんが言った。
「うん」
雨も同じように立ち上がる。
すると少しだけ、足がしびれて痛かった。雨が足のしびれと戦っている間に、お父さんは遠野の言い伝えが記させた本を木箱の中に戻して、それおを祭壇の近くにある同じく古い木製の棚の中にそっとしまった。
それから二人は遠野神社を出て、神社の隣にある家に向かって移動を始めた。
「ねえ、お父さん。どうしてあの本をさっき取り出していたの?」
雨は聞いた。
雨は遠野神社の手伝いを昔から姉の雪と一緒に手伝ってきたのだけど、この神社にあのような本があるということを(そして今聞いたような言い伝えがあるということも)、ついさっきまでまったく知らなかった。
「ああ、それはね。水瀬くんのお父さんがその本についてのことを聞くために、最近神社にやってきたからだよ。ほら、この間。守くんと一緒にきてたでしょ? あのときだよ」
とお父さんは言った。
水瀬くんと一緒に神社の周りを見て回って、それから一緒に赤い鳥居を階段下まで見に行ったときだ、と雨は思った。
「水瀬くんも神社のこと、すごく興味津々だったけど、水瀬くんのお父さんもそうなんだね」と雨は言った。
「水瀬くんのお父さんは大学の研究者さんなんだよ。本職のね」と雨のお父さんは雨を見ながらそう言った。
二人は家に入り、台所まで移動した。
「遅いよ二人とも」
するとすぐに雪に二人とも怒られた。
雨と雨のお父さんは「ごめん」と雪に謝ってから椅子に座って、三人でいただきますをしてから、夕食を食べ始めた。
夕食の献立は、あったかいごはん、豆腐のお味噌汁、さんま、ほうれん草のおひたし、それに肉じゃがだった。
「美味しい」雨は言った。
「当たり前でしょ」にっこりと笑って姉の雪がそう言った。
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