14
その日の夜。
「お父さん、いる?」
雨はふすまを開けて遠野神社の中に入るとそう言った。
「いるよ」
祭壇の近くで仕事をしていた雨のお父さんが後ろを振り返ってそう言った。
お父さんは祭壇の前に正座をして座っていた。
雨はお父さんの座っているところまで移動して、お父さんの横に同じく正座をして座った。
「お父さん。それはなに?」
雨は言う。
お父さんの座っているところの前の床の上には古い木箱の中に入っている、一冊の古い本が置かれていた。
本、と言っても現代の本ではなくて、もっともっと古い、たとえば江戸時代とか平安時代とか、そんな時代に使用されていたような作りの本だった。
「これはこの遠野神社の言い伝えを記載した、この土地の歴史、というのかな? まあ伝説のようなものが記されている本なんだよ」
にっこりと笑って、雨のお父さんはそう言った。
「いい伝え? 伝説? それってなに?」
雨は尋ねる。
「そうだね。いい機会だから、雨にそれを今、教えようか。時間大丈夫? なにか僕に用事があったんじゃないの?」
「ううん。大丈夫。聞かせて、お父さん」
にっこりと笑って雨は言った。
すると「わかった」と言って、お父さんはその古い本を手に取ると、雨と向き合うような形に座り直して(雨もお父さんのほうに体を向けた)、お父さんはその本を開きながら、雨に遠野の土地にある古い言い伝えを教えてくれた。
それはこんな風な伝説だった。
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