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 四葉は高校時代に一人の女性と付き合っていた。


 彼女は四葉と同じ高校の同級生だった。


 その彼女とは、大学進学と同じころに別れた。

 どちらともなく、二人の関係が高校を卒業するのと同時に終わると、四葉にも彼女にもなんとなくわかっていた。


 四葉と彼女は三年間、ずっと一緒にいた。

 でも二人の距離はほとんど(離れることもない代わりに)縮まることは全然なかった。

 どうすれば彼女に近づけるのか、わからなかった。


 四葉は彼女のことが好きだった。(彼女も四葉のことを好きだと言ってくれた)


 だけど、四葉は彼女のことを、本当に、心のそこから愛することができなかった。(四葉だけではなく、彼女もきっとそうだったと思う)

 あのころの僕は、人を本当に愛するということが、どういうことなのか、うまく理解することができなかった。

 その理由を、四葉は自分がまだ子供であるということと、自分が恋に対して未熟であったこと、(彼女は四葉の初めての恋人だった)そして、自分の心をうまく理解することができなくて、また相手(彼女)の心もうまく理解することができないからだと思っていた。(お互いに、僕たちは本当に子供だった)


 今日、詩織に十五年ぶりに再会するまでは……。

 あの日、(理由はわからないけど、突然)ずっと忘れていたはずの雨宮詩織の夢を見るまでは、……僕は、ずっとそう思っていた。


 しばらくの間、四葉はずっと黙っていた。(なにかを深く考えているみたいだった)

 その間、真昼は外に降る雨の音に耳を澄ませていた。


「ごめん。村上さん」

 と、四葉は言った。

 ごめん。……ごめんなさい。村上さん。あなたとは、お付き合いはできません、か。

 うん。

 まあ、そうだよね。

 わかってはいた。

 告白をすれば、たぶん、私は秋野先輩に振られるだろうと、わかってはいたのだ。(だからずっと告白できなかったのだ)

 こうなるだろうって、そう思っていた。

 ずっと前からわかってた。


「そうですか。わかりました」

 にっこりと笑って、真昼は言った。

 どんな答えでも、絶対に泣かないって、告白をする前に真昼は心に決めていた。でも、……真昼はなんだかすごく泣きそうだった。

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