24
四葉は高校時代に一人の女性と付き合っていた。
彼女は四葉と同じ高校の同級生だった。
その彼女とは、大学進学と同じころに別れた。
どちらともなく、二人の関係が高校を卒業するのと同時に終わると、四葉にも彼女にもなんとなくわかっていた。
四葉と彼女は三年間、ずっと一緒にいた。
でも二人の距離はほとんど(離れることもない代わりに)縮まることは全然なかった。
どうすれば彼女に近づけるのか、わからなかった。
四葉は彼女のことが好きだった。(彼女も四葉のことを好きだと言ってくれた)
だけど、四葉は彼女のことを、本当に、心のそこから愛することができなかった。(四葉だけではなく、彼女もきっとそうだったと思う)
あのころの僕は、人を本当に愛するということが、どういうことなのか、うまく理解することができなかった。
その理由を、四葉は自分がまだ子供であるということと、自分が恋に対して未熟であったこと、(彼女は四葉の初めての恋人だった)そして、自分の心をうまく理解することができなくて、また相手(彼女)の心もうまく理解することができないからだと思っていた。(お互いに、僕たちは本当に子供だった)
今日、詩織に十五年ぶりに再会するまでは……。
あの日、(理由はわからないけど、突然)ずっと忘れていたはずの雨宮詩織の夢を見るまでは、……僕は、ずっとそう思っていた。
しばらくの間、四葉はずっと黙っていた。(なにかを深く考えているみたいだった)
その間、真昼は外に降る雨の音に耳を澄ませていた。
「ごめん。村上さん」
と、四葉は言った。
ごめん。……ごめんなさい。村上さん。あなたとは、お付き合いはできません、か。
うん。
まあ、そうだよね。
わかってはいた。
告白をすれば、たぶん、私は秋野先輩に振られるだろうと、わかってはいたのだ。(だからずっと告白できなかったのだ)
こうなるだろうって、そう思っていた。
ずっと前からわかってた。
「そうですか。わかりました」
にっこりと笑って、真昼は言った。
どんな答えでも、絶対に泣かないって、告白をする前に真昼は心に決めていた。でも、……真昼はなんだかすごく泣きそうだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます