楽園 ―かみさまのものがたり―

仲仁へび(旧:離久)

プロローグ



 あるところに仲の良い双子の姉妹がいました。

 何もかもができる姉と、何もできない妹が。


 姉と妹は仲が良く、姉はよく妹を気にかけて守り、妹はよく姉を称え頼りにしました。


 ある日、何もできない妹は物語を作ることにしました。

 何もできない妹は、他の人と比べてあまりにも何もできないけれど、何かをしたいという憧れだけは強くありました。

 だから、何もできない妹は、自分のできないを詰めたたくさんの楽しい物語を作る天才になりました。


 けれど、何もできない妹が生きていた世界や物語が、必要とされる世界ではありませんでした。

 何かができることが求められる世界だったので、創り出された無数の世界の価値は誰にも気づかれることがないままでした。

 その内に、妹は物語を綴る手をとめてしまいます。


 しかし、何もかもができる姉は、何もできない妹が作ったその物語を手に取って読みました。

 それは何もかもができる姉には作れない物ばかりでした。


 無から有を作り出し、時の流れを編んで、命の在り方を紡ぎ出す。

 まるでそれは、魔法のようでした。


 何もかもができる姉は、物語へと呼びかけます。


 どうか、もういちど物語が書けるように妹を励ましてほしい、と。


 姉は妹のために、自らの言葉に応えてくれる人を探す為に、物語の世界へと旅立っていきました。


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