「Birth Of The Cool」 Miles Davis
二枚続けてのマイルス。
今度は打って変わって彼のデビュー作です。
作風は、ビッグバンド。
管楽器たくさんとリズムセクションでできてるものだと思って大丈夫です。
この作品の優れたところは、一曲が短いこと。
わかりやすいのに、レベルが高いこと。
アドリブが少ないこと。
以上の三つです。
ビッグバンドは構成やアレンジを聴くのが主体なので、
ジャズであることを気にしすぎないで済みます。
1.「Move」
明るいオープニング曲。
とにかくこのアルバムはメロディが明快。
その下で何が起きているかなんてわからなくても十分楽しめます。
そしてそのうち気づくでしょう。
あれ?実は伴奏めっちゃカラフルじゃね?と。
そうなんです。
もの凄いアレンジメントが水面下では起きているのです。
アレンジャーはギルエヴァンス。
マイルスは度々彼の力を借りていますので、
ジャズを聴いて行けばまた巡り合う名前でしょう。
Move、というだけあり、動きのある良曲。
2.「Jeru」
ポップで親しみやすい曲。
まあ、ほぼ前曲そうですが。
でも、本当にビッグバンドがどういうものかを知るにはもってこいのアルバム。
合わせ技やアレンジの妙が体験できます。
3.「Moon Dreams」
前二曲とは打って変わってスローなバラード。
中盤の構成美が光ります。
丁度いいので、『クール』について少し。
クールというのはジャズのスタイルの一つ。
あまりビブラートを利かせたり、こぶしを利かせずに真っすぐ吹く。
白人的な整然さ。
これらがクールの特徴ですね。
このアルバムで誕生したっぽいです。
名前的には確実にそうですが、実際は古すぎてわかりません。
4.「Venus De Milo」
優雅できれいな曲。
ビッグバンドのいいところは、基本的にアドリブの持ち回りが短いことです。
楽器が切り替わるのが早いし、メインはアレンジなのでしつこくない。
あと、これ何人くらいいるかわかりますかね?
九人なんですよ。
六管+ピアノベースドラム。
九人を少ないと思うか多いと思うか。
微妙なラインです。
ただ、何にせよこのアレンジはめっちゃかっこいいです。
六管の使い方がバカみたいにうまくて、
一斉に動いたり、一部だけ動かしたり。
一曲の中でも工夫が凝らされていて、三分がすぐ終わる。
優れたビッグバンドです。
8.「Boplicity」
メロディが一音変わるごとにハーモニーごと変えるテーマ。
こういうの、トゥッティとか言います。
複雑で繊細な色付け。
全てのアレンジャーはこうあるべきですね。
楽しく、意外性を持って、自分らしく塗り変える。
素晴らしい仕事っぷり。
さすがギルエヴァンス。
10.「Israel」
ビルエヴァンスなんかもしょっちゅうプレイするチューン。
この曲の中ではキリッとしたかっこいい曲です。
テーマにおける対位法的な六管の使い方。
今までに比べピアノが前に出ていることにも注目してください。
カチッとした早いテンポを決めるためにそうなっているんです。
あと、ハイブリッドなコードを表すためにも。
11.「Rouge」
とにかく楽しいラストにふさわしい曲。
ストップタイムやターンアラウンドをふんだんに使ってゴージャスに仕上げます。
かわるがわる取られるソロは流れるようで、
楽器ごとの個性が光ります。
ドラムをフィーチャーしたインタープレイも圧巻。
締め方まで遊びに溢れており、まさにビッグバンドの真骨頂と言えるでしょう。
まとめ
1948にレコーディングされたとは思えないレベルのアルバムでしたね。
さすがはマイルスです。
現代にも通用するような革新的なアレンジ。
明確なコンセプト。
キャッチーな選曲。
どこを取っても一流です。
映画音楽やクラシックが好きな人には特におすすめですが、
かなりポップなので誰しもにおすすめできます。
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