異世界日記
犬神まき子
第1話 見たり、聞いたり、感じたり
子供の頃から、オカルトには興味があった。そして小・中・高を通して、かなりの「オカルト好き少女」であった私の愛読書は、おまじない大好き少女御用達の「マイバースデイ」。そしてオカルトホラー漫画少女雑誌「ハロウィン」であった。こちらの「ハロウィン」は毎月13日発行という気合の入ったオカルトぶりで、毎度「呪われたらどうしよう」と思いつつも、ついつい継続して購入してしまう雑誌であった。
特に「ハロウィン」紙上にて当時連載されていた、御茶漬海苔先生の「惨劇館」は毎度、ゾクゾクしながら読んだ(今もあるのかな、『ハロウィン』)。そして巻末にある魔女グッズというか魔術グッズの広告に心惹かれ、「いつしか、これらを駆使し、立派な魔女に・・・」などという野望を若干、もったりしたものである。なんちゅう思春期。
今も覚えているのが「ドラゴンの血」という赤い粉末。瓶詰にされていて、一体何に使うのかよくわからなかったが、大変にそそられる一品であった。だいたい、8000円くらいだったような気がする。なんとなく「ちょっと手が出ない」からこそ、より、その商品の神秘性が増すような気がしていた(今、べつにいらないけど)。
そんな思春期。実際、「おまじない少女」であった私は日々、おまじないを実践していた。朝、50円玉を弾いて表が出たらその日は1日ラッキー、とか。それで楽しかったのだからまあいいかと思うが、ちょっと説教してやりたい感もある。そんな娘を母がどう見ていたのか、それがありありとわかる瞬間がある日、やってくる。
3者面談があった中学1年生の時、担任からの
「娘さん、ご家庭ではどうですか」
という質問に、母がいきなり
「この子ったら、おまじないなんかやってるんですよ。まったくもう、ねえ」
などと言い出したんである。(あんた、いきなりなに言っちゃってんの)と思い、大いに自尊心を傷つけられたことを思い出す。
担任にそんなこと言って、何がしたかったのか。理解できない娘のことを「この子ったら、おかしいんですよ。ホホホ」とわざわざ他人に告げ、理解されたかったのだろうことは想像できる。母は昔から終始そういう人であり、たいへんムカつく存在であることを申し添えておく。
まあそもそも、そうしたオカルトものにハマってしまったのも、家庭環境にも問題
があったことは否めない。もともと「オカルト好き」な下地があったところに
日々、何をしてもしなくても、いちいち干渉されて支配されていたもんで心の拠り所が「そういうもの」しかなかったんである。そして「そういうもの」と過ごす時間は、実に心地よいのだった。あたたかい闇というか。
ある時、「妖精コボルトさんを呼んでみましょう」という「妖精呼び出し」の儀式を行ったことがある。中学1年の時である。今も覚えているのだが、机の上に白い布をひき、その上にチーズとはちみつを用意し、「コボルトさん、コボルトさん、うちに来てください」というようなことを唱えると夜、コボルトさんがやってきてチーズを口にする、というようなものだった。そして、それを行うことで妖精の国への道筋ができ、いずれ妖精がわんさか部屋にやってきますよ・・・そんな感じのことが書いてあったと思う。コボルト、とは「地の精霊」である。とりあえず温厚そうな、太ったおっさん妖精と仲良くなるのだ。私は意気込んだ。
で、やってみたんである。すべて、本の指示の通りに。
夜、10時前くらいに上記の儀式を行い、床についた。すると・・・しばらくして壁の中から「ひそひそひそひそ・・・」という声がし、それが大きなささやき声となり、チーズを置いてある机までそれが聞こえ、壁から半円形を描くような形でその、「ひそひそ」が聞こえまくった。その時の私のオノノキぶりときたら。マジで「ヤバい」であった。汗びっしょりで布団にくるまり「お願いですから帰ってください」と必死で祈った。
翌朝みたらチーズにもはちみつにも変化はなく、ただ、「怖い体験をしてしまった」というトラウマが残っただけであった。それ以降「妖精ってコワい」ということで妖精呼び出しはしなくなったものの、そのあと別のモノを呼び出す、ということにチャレンジしてしまった、そんな思春期であった。
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