月の決まりごと_その三・勉強


午後の時間は勉強をすることに決めている。

歴史、哲学、政治それから恋愛小説。

魔女様の家にはたくさんの本がある。

種類も様々、言語も異国の言葉から失われし古の言語さえ使われている。

月はそれを一つ一つ丁寧に読んでいく。

わからないところは魔女様に聞いたり。

それが恋愛小説だった時には、彼は羞恥に頬を染めたけれど。

でも、それ以来時たま恋愛小説も手に取るようにしている。

絡繰人形の彼の心に、足りないことがいっぱい詰まっているように感じたので。


だから魔女様は、小説が動かされた後を見てはクスリと笑ってしまう。

彼が人間に近づいていくようでつい。



本を読む時には、出窓に腰掛けるのがお約束。

一旦本を開けば頁を閉じるまで彼は集中を切らさない。

時折小人の仕業みたいに、小柄な白髪の少女が足元にそっとポットとお菓子を置いていく。

埃を被らないようにかけれた布からは、ほのかに花の香りがして。

まるで、いつの間にかそっと寄り添ってくれている彼女みたい。


雪と月が喧嘩しても彼女と喧嘩しないのはこう言う理由。

三人の中で一番無口で無表情。でも誰よりも心が優しい子。





さて、次は唯一の女の子、花の話をしようか。














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