第42小節目:Geeting Better
とはいえ、
おれと同様に誘われている
来た道を教室の方に引き返していくと、むくれながらも、
おれが他のクラスに一人で行けないのを心配してくれてるんだろうか。めちゃくちゃその通りだからありがたいなあ……と御礼を言うと、
「たくとくんは、えりなが売店に行くついでにたくとくんを誘ってるって、本気で思ってるんだねぇ……?」
と
「さこっしゅー! さこっしゅのたくとくんが来たよ!」
4組の教室の引き戸を『たのもー!』とばかりに開けた英里奈さんは、一直線に飛ぶ5Gみたいな声を金髪の親友に送る。
……いや、引き戸は開いてたな。英里奈さんの堂々たる態度がおれにそんな幻覚を見せただけだ。
だがしかし。
「……?」
返ってきたのはおれの知らない生徒たちのポカン顔だけ。
「あれ、さこっしゅー……? おぉーい」
「いや、いないんじゃない?」
謎に粘り強く呼び続ける英里奈さんの肩を叩く。
「あぁ、そぉいうこと?」
『でも、なんでえりなが来るときにいないの?』みたいな顔をしてるあたり、本当に英里奈さんは英里奈さんだなあ、と思う。
「あ、あの、エリナ……ちゃん!」
「んー?」
すると、おれの知らない女子が英里奈さんに話しかけにきた。
「
「えぇ!?」
……波須さんと由莉ちゃん。そうか、たしかに、波須さんと由莉ちゃんだな。
なんだかそう呼ばれてるところをほとんどどちらも聞いたことのない組み合わせで、それはおれのバンドメンバーのあの二人なんだろうか、とちょっと
「ほらぁ、たくとくん! だから売店に行っておけばよかったんだよぉ!」
「いや、そんなこと言われても……」
ふくれっ
「たくとくん……って、拓人……くん? 小沼拓人くん?」
と、二人の行き先を教えてくれた女子に超意味不明なことを聞かれた。
「え、はい、小沼ですけど、なに、どういう意味……?」
「あ、ううん。なんでもない!」
えへへ、ごめんごめん、とてへぺろしてから彼女は席に戻っていく。
「よぉし、じゃあ売店に行くよぉ!」
「お、おう……?」
「英里奈さん、さっきの女子って知り合い?」
「知り合い? うぅーん、多分、去年同じクラスだったかなぁ」
「多分って……。名前は?」
「知らなぁーい」
「まじか……」
英里奈さんはやっぱり不意に冷淡なところが出てくる。
英里奈さんと同じクラスだったってことは沙子とも同じクラスだったってことだろう。まあ、だから何というわけではないんだけど。
「で、なんでおれの名前を知ってるんだろう? バンドのライブを見てくれたのかな」
「違うんじゃないかなぁ? バンド見てたなら、名前聞く前に『もしかして、amaneの小沼くんですか?』って言ってくるでしょぉ」
「確かに……」
そんな芸能人みたいな絡み方をしてもらえるかは知らないが、名前を聞いて初めて思い当たったような反応をするのは不自然だ。
「まあ、たくとくんは、最近ちょっと有名人なんだよぉ。特に4組で、ね?」
「はあ……?」
おれの気の抜けた返事が腹立たしかったのか、背中をぱしん、と叩かれた。
「痛い……」
そんなやりとりをしながら、売店についたわけだが。
「あれぇ、いないねぇ……」
「そうなあ……」
つい一昨日くらいにも、吾妻と一緒に神野さんを探してこんな風に校内を歩き回った。
まあ、おれたちが売店と教室を1.5往復しているうちに、売店での買い物を終えて戻っている可能性はある。
せっかく売店に来たので、英里奈さんと買い物をして、もう一度教室の方に戻ることにする。
さっきまでと同じルートだとつまらないので、別ルートで戻るかあ、と、売店のある棟、昇降口の近くの階段を上がると。
「あれ、なんだろぉ……?」
2階の
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