第3曲目 第60小節目:You’re Not Sorry
「なるほどなるほどっ! イギリス流のスキンシップだったということなのですねっ!」
売店のすぐ近くのラウンジにて3人、
ラウンジにはおれたちともう1組だけ離れたテーブルに座っているだけだ。教室や食堂でご飯を食べている人が多いのだろうか。
「また一つ異文化について知ることが出来て良かったですっ!
「そぉだよぉー、イギリスでは当たり前なんだからぁー」
英里奈さんはへらへら笑いを顔に貼り付けてこたえた。
そうだったのか、これまでのあの小悪魔的なスキンシップは全部お
おれがこっそり衝撃を受けていると、英里奈さんはスッとおれのみみみみ耳元に唇を近づけて
「まぁ、普通よりは特別な相手じゃないとやらないけどねぇー?」
そう
「……こほん」
ですが、おれレベルになると、英里奈さんからのこんなからかいにはそう
何はともあれ、小悪魔属性は英里奈さん個人にちゃんと紐づいているものらしい。良かった。(別に良くない)
そんなやりとりの
「いやはや、てっきり自分の憧れ直した『リア充』という種族が、やっぱりインターネットで言われているのと同じようなただの
「アバズレ……」「こうしょくかん……?」
突然ボキャブラリー外の言葉を放り込まれて復唱するおれと英里奈さん。
「でもでも、たしかに、英里奈先輩には心に決めた方がいらっしゃったはずですもんねっ!」
にこぱっと笑った平良ちゃんの言葉に、
「あぁ、うん……」
英里奈さんがうつむく。
すると、
「あれあれ……? 自分、変なこと言っちゃいましたかね……?」
「あー、いや……」
平良ちゃんが言ってるのはもしかしなくても、学園祭ライブにてチェリーボーイズが演奏した『
今ちょうどデリケートな話ではあるが、それは事情を知らない平良ちゃんにはどうしようもないことだ。
「わぁー、そぉだよねぇ……。みんな見てたんだもんねぇ……」
英里奈さんには珍しく、頬を赤く染め始める。
「えりな、みんなが見てるとこであんなことして恥ずかしいなぁ……。やっぱりなかったことにしたいよぉ……」
そう言いながら、英里奈さんが額を抑えて突っ伏しそうになるところを、
「そんなこと絶対にありませんっ!」
ダン! と机に缶を叩くように置きながら平良ちゃんが立ち上がる。
「ほぇ……?」
突然の大声に英里奈さんが平良ちゃんを見上げた。
「恥ずかしいなんてっ、なかったことにしたいなんてっ! そんなことありませんよっ!」
「平良ちゃん?」
「あのあのっ! 自分はあのライブの英里奈先輩を拝見して、とっても感動したのですっ! 恋ってキラキラしてるなぁって、自分もリア充になった
「それはっ! 自分にはわかりませんけど、もちろん……叶わない時もあると思います。でも、でも……!」
「でも……?」
目を見開いて首をかしげる英里奈さんに、平良ちゃんは勢いをゆるめず、強く言い切る。
「少なくともここに一つ、英里奈先輩のあの言葉で動いた心が、あるのですっ! そしてそして、きっと……」
平良ちゃんは自分の胸元を
「
「そっかぁ……」
「はい、きっと……いえ、絶対ですっ! ……あれ?」
平良ちゃんはそこまで話し終えると、ハッと我に返る。
「はっ! す、すみませんすみませんっ!」
これも学園祭ライブの時みたいだなあ、とおれはつい吹き出した。
「こんなの、ほぼ初対面の
「ううん、そぉんなことないよぉー?」
英里奈さんは嬉しそうに
「ありがとぉ、つばめっち」
「つばめっち……?」
初めての
「うん、つばめっち! えりなの妹になっちゃいなよぉー!」
英里奈さんが『んんー!』と平良ちゃんを抱きしめて
「わ、わぁっ! これが
「んんー……?
「あ、あずませんぱいですぅ……」
英里奈さんの
そこにとどめをさすように。
「そぉんなの、えりなが
英里奈さんが、見ているだけのおれですらゾクっとするほど
「は、はうぅ……」
いや、いきなり何やってんだよ。ていうかなんで全方位に悪魔なんだよ……。
とは思いながら、英里奈さんの気が楽になったのなら何よりだなと、おれは状況に似つかわしくなく、優しい微笑みを浮かべた。
「ちょっ……ちょっと……小沼先輩ぃ……、そんな、いやらしい顔で笑ってないで……助けて……くださいっ……!」
あれ、優しい微笑みのつもりだったんだけど?
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