他の色に嫉妬して望んで手にするも、青い芝は灰色に変わる

 私が醜いのは私が知っている。

 私が醜いのはあなたも知っている。


 そうだと思っていた。

 でも私が醜いことを私は理解していない。

 私が醜いことをあなたは理解しているつもりで理解できていない。


 私が知らないことをあなたが知るはずも無いし

 あなたが知っているのに私が気が付かないこともあるでしょう。

 

 私が誰かに嫉妬してその色を手にしようとしたとしても

 私が手にしたとたん、それは灰色へと変わり私の色となる


 私が灰色である以上、どんな色を手にしたとしても灰色以外にはなれず

 灰色以外の色を求めたとしても、私の手に収まった途端にそれは灰色になる


 私はそれを知っていたはずなのに、

 どこまでも貪欲で

 どこまでも無知で

 どこまでも学習しない


 同じことを繰り返しては

 灰色を掴んで落胆する


 私が灰色では無い色になりたくて

 灰色を脱ぎ捨てようとしても

 灰色は私を追いかけて

 私に追いかぶさって

 私が灰色が好きだったかのように

 灰色は私のことを包み込む


 本当はそんなことは無くて

 私自身が灰色を望み

 どこまでもあいまいで

 どこまでも薄汚れた

 どこまでも醜い

 そんな色であることに安心していた


 灰色であることは

 私であり

 私であるということは

 灰色であるということを

 私自身が望んでいる


 灰色が悪い色であると

 勝手に決めつけて

 私自身が悪いやつだと

 追い込むことで

 私は私のことを許さないと

 自分を痛めつけることで

 安心している


 安心とは何か

 心の平穏とは何か

 手にするものが灰色であることは

 私にとっての平穏なのか


 世界が灰色になれば

 その時、私は灰色でいることを望むのだろうか


 私には分からない

 私には理解できない

 私は考えたくない


 きっと世界は色に満ち溢れていて

 灰色であることを望むはずが無いと思っている


 だから私は灰色であることで

 私自身のアイデンティティを保てていると

 思い込んでいるのだ


 私は他の色に嫉妬して

 他の色よりも

 灰色であることが良いことと思い込もうとしている


 いつまでも灰色で

 灰色であることが私にとっての平穏で

 手にするものが灰色であることを

 私自身が望んでいた

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