灰は灰に

空音ココロ

色が混ざり過ぎた世界

 私が見ているのは灰色の世界。

 でも世界には色が溢れているはずで、赤、青、緑や黄色のような原色系も水色、ピンクみたいなパステルカラーも、シックな黒や清楚な白。

 いろんな色がお互いを引き立て合いながら、反発し合いながら世界を作っていた。


 それなのに私が見ている世界は灰色で、物と物の境界がはっきりとしない曖昧に混ざり合ってできた世界。

 どんな色も灰色の中に混ざっていけば灰色になる。

 私に触れたカラフルなものは灰色になって色を失う。

 街を行く人が私に道を尋ねてきた時も、私と話をしている間に灰色に変わっているのだろう。

 段々と引きつった顔になって行き、そして去っていく。

 私はこんなにも普通なのに、みんなと合わせようとして、顔色を窺っているのに。


 まぁどれだけ顔色を窺っても灰色にしか見えないのだけれど。


 昔はもっとカラフルな色が見えていた。

 淡いパステルカラーが好きだった。ふわふわとしたお花畑みたいな考えだったのかもしれないけれど、それでも私を取り巻く素敵な色は私を豊かにしてくれていた。


 私が歳を取る度に色が増えていく。

 みんなが私に色をくれた。

 私はみんなの色を見て、どんどんその色に染まっていった。

 情熱の赤、クールな青、爽やかな緑、眩しい黄色、妖艶な紫、人それぞれが持っている雰囲気と持っている色。

 その色を吸収する度に私は満たされていく気持ちになったが、どんどん灰色に近づいて行った。


 綺麗な色が好きで、綺麗な色になろうとするともっと灰色になった。


 どうしたらあんな色になれるの?


 私は頑張って色を重ね合わせる度に灰色へとなっていく。


 いつしか見える景色も灰色に変わっていった。


 色の混ざり過ぎた世界。


 それが私が見ることになった世界。


 世界はこんなにも混ざり合っていて、曖昧で、灰色だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る