「出会い系」を使ってた時の話しでもしようか。
アトオシ(永井弘人)デザイナー
「出会い系」を使ってた時の話しでもしようか。
私はグラフィックデザイナーであり、二児の父でもある。
父になるには、当然のことながら、妻がいてこそ。「おいおい、散々、過去のカクヨムで女性に恵まれないってことを駄弁っておきながら、しっかりと結婚してんじゃねぇか?」
……ふふ。なめるな。私の妻。どこで出会ったか教えようか? ストレートに、「出会い系」だ。
*
独立前の前職。忙殺される毎日。唯一、あるかないかの週一休み。日曜。休みはありがたいが、彼女も、気軽に会える友だちもいなかった。さらには一人暮らし、というコンボ。
公園にいって、日なたぼっこをしながらの読書や、ワンマン映画やらしていたのだけど、じょじょに、じょじょに、たまっていく感情。「とにかく…とにかく……誰かと…話しがしたい……!!」
平日仕事のプレッシャーから全力逃避もあって、あふれんばかりの会話欲求は、とうに私のコップからじゃぶじゃぶと漏れだしていた。…会話…会話……たわいない会話…誰かと…いんや、女性と……。気づくと、僕は出会い系に登録をしてたんだ。
*
有名な話しだけど、「出会い系」には、「サクラ」がつきもの。
「サクラ」は、魅力的な異性になりすまし、直接会っていない画面上で、会話をなが〜くつなげてくる。で、「サクラ」は、その出会い系サービスの運営会社が雇っていたり。
なんでそんなことをするかってーと、「1会話」する度にポイントが必要で、ポイント購入にはお金が必要で、会話を“無駄に”つなげればつなげるほど、運営会社がジャンジャン儲かるのだ。
今は、「アプリ」を中心とした「出会い系」が多いようだが(無論、今は引退している)、当時は「アプリ」ではなく、「PC」or「携帯」のどちらかを軸とした「出会い系」が多かった。
ん? 多かった? なんで知ってるのって? はは、僕、デザイナーですよ? 最高の正解にたどり着くには、検証が必須って話し、しましたよね?
そう、無数にある「出会い系サービス」から、「サクラ」に出会わず、「直接会って、本当に会話できる女性」を探す方法。真剣、かつ、効率よく考えた時。複数のサービスに一気に登録して、色んな相手と同時に、まずはオンライン上で会話をつなげる必要があったのだ。
*
どのサービスに「サクラ」が蔓延しているか。なにもわからず、手探りの状態だ。生真面目な会社の上司に、
「今、出会い系やってるんすけど、この子、サクラだと思います??」
なんてことを相談できるわけもなく、一人で夜な夜な、
「この子は……どっちだ? 愛想がよすぎる…あやしい……本当はおっさんじゃなかろうか? いや、考えすぎか。うーしかし、おっさんだった場合、メッセージを打ち込む時間もポイントももったいない……でもでも、カワイコちゃんだった場合、それこそ、もったいない!」
と、考えてはメールを送る、悩んでは会話をつなげる、ということを繰り返していた。早く寝りゃあいいのに。
*
春でもないのに満開のサクラを避けつつ、舞い散る花びらを背に、経験値をコツコツと高めた末。直接、女性と会うことができた。様々な女性と会話をする内に、一つの法則に気づく。
「PCメインの出会い系」には、いい意味で普通で真面目な女性が多く、「携帯メインの出会い系」には、いい意味でノリが軽い女性が多い。(“いい意味で”って便利な言葉ですね。いい意味で!)
また、「PCメイン」は、真面目な傾向ゆえ、会うまでに2〜3ヶ月、メールのみのやり取りを要する。「携帯メイン」は、会うまでの時間が、まぁ早い。極端な話し、当日のお昼に初めてやりとりして、夜にご飯いくことだって可能なんだ。
そして、ポイント購入システムではない、月額いくらとかの、定額制の出会い系にはサクラがほとんどいないことも判明した。会話を“無駄”に長くつなげたところで、運営会社の儲けにはならないから。メモっておきましょう。
*
私が使っていたPCメインのサービスには、「職業絞り」なる機能がついていて、例えば、「クリエイティブ系の女性を探す」って検索がかけちゃうんだ! おぉ、ワイもデザイナーだし、これは話しが合いそうだぁ、と「クリエイティブ系絞り」にして、会いました。
*
同じ“ものづくり”をやっている者同士、会話はそれなりに弾む。しかし、メンタルが癒やされない。クリエイティブトークになると、自分の中での「デザイナーモード」にスイッチがカチリと入る。気が張る。あ、モリモリ仕事している平日と変わらん!
なにより、クリエイティブ職の人間は、“面倒くさい”人が多い! ←これ、褒め言葉です。男女問わず、何かをつくる人はこだわり強く、「面倒くさくあるべき」だと思います。お互い様!
CM制作会社に勤めている女性と食事に行ったのですが、予約した店に入るなり、
「私、この店、イヤ」
と言われた時は、もぉどうしようかと思いましたよ、奥さん。あ、あと、クリエイティブとか、まったく関係ない相手なんだけど、初見の日に、
「あたし、今日が誕生日なんだ。だから、なんか買って!」
と、告げられ、新宿の丸井一階に連れていかれたこともあったよ。
「これ、ほしー!」
と、そこまで高くもない、絶妙なアクセサリーに指をさす。女性店員さんに向かって、
「あたし、今日が誕生日なんですよー!」
「えー! おめでとうございます!」
「これ、とってもかわいいですねっ!」
「お似合いだと思いますよ!」
気づけば、2人が結託している。これは困ったな…。女性店員さんは、多分、私が“彼氏”だと勘違いしているのだろう。無言の圧が送られてきた。
「(おいおい、そんなに高くねぇーだろ、これ。彼氏だったら、迷わずバシッと買ってやれよ)」
「(い、いや、ちがうんです! さっき、初めて会ったばっかなんです! 出会い系で会った人なんですよー!)」
言いたいたくても、言えない。伝えたくても、伝えられない。がんじがらめ地雷。う、うわぁー!! ……まぁ、買ったけどね。
*
数々の経験を超えて、今の妻に巡り会ったわけです。こうゆう話しをすると、よく聞かれる。
「結婚式の時とか、『どこで出会った』って説明したんですか?」
おいおい。まるで、「出会い系サービスで、出会ったこと」が後ろめたいみたいじゃないか。失礼な話しだ。聞かれりゃあ、答えるよ。迷いなく、
「紹介です」
この一言だ。あとは何も言わない。ウイスキーみたいにクール。素の味。ピュアモルト。嘘はついてないだろう。「出会い系」からの「紹介」さ。後ろめたさなんかありゃしない。ちょっと説明不足なだけだ。ふふん。
*
異性に限らず、「より良い出会い」は、自発的に動きまわってこそ、ブチあたる。ルーティーンで退屈な毎日になってないか? オモロイことが起きるのを、会社や学校、環境頼みにしてないか?
愛を探そう。走って、転んで。途中経過は指さされ、笑われたってかまわない。だって、探してる途中なんだもの。むしろ、笑いのない、話しのネタにもならないような、途中経過なんぞ、たいした経験値がたまってない、ということだ。
ありがとう、「出会い系」。恩返しに、書かせてもらったよ。というか、響きがアレなだけで、カクヨムも、その他SNSも、まるっと「出会い系」だと思うわけですよ。人と人。人間交差点。
有益な情報も、くだらない冗談も、すべてが「愛」。それに「出会う」。言ってしまえば、皆、オンラインの旅人だ。ここは道の駅。それでは、また。良い旅の続きを。いってらっしゃーい!
「出会い系」を使ってた時の話しでもしようか。 アトオシ(永井弘人)デザイナー @hirotonagai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます