第25話 って魔王(なんか)来たっ?!




「……はぁ、やっと陸に辿り着きました……」


 海の上を歩いて途中である小さな島で休んでまた海上を歩く。


 それが数十日も続けば、さすがの魔王イラベルでも辟易する。

 彼女ようやく大陸に辿り着き、とりあえず潮風でべたついた身体を清めようと、川辺に向かった。

 幸い移動中に河口が見つかったので、そこに向かって進んだため、川を探す必要はない。


 ある程度上流に行き、人目もなさそうなところで服を脱ぎ、水浴びをしてさっぱりとする。

 そして、川の中で丁度いい石に腰掛け、歩き通しでジンジンしてきた脚を揉み解し、しばらく火照った体を冷やした後、川から上がってどこからか取り出した新しい着替えを取り出し、身に着ける。


「ここはどの辺りなのでしょうか?

 ……周囲には誰の気配もなさそうですね……」


 そして、彼女は座ったまま目を瞑り、動かなくなった。


「……そう、きちんとファース大陸に辿り着いたのですね……」


 胸がズキズキする。

 彼女は久しぶりにとある魔法を使い、その代償として、避けられない後遺症に耐える。


「あまり魔法は使いたくはありませんが……」


 何故なら過去に魔法を使いすぎた後遺症により、使えば死にそうな目に合うからだ。

 今使った魔法は精霊眼といい、自然に存在する精霊と交信する能力である。


 ラストラやインヴィスの様な情報収集能力はないが、それでも最低限の情報は得られる。


「マンボー……そう呼ばれる街にラスたちは居るのですか……そして理由は不明ですが、あの男も……」


 彼女は渉の顔を思い出し、今までの穏やかな雰囲気が嘘だったかのように怒気をまき散らす。


「ふぅ、いけない……ご先祖様たちに叱られてしまいますね……」


 憤怒の魔王……魔王の中で唯一世襲制であり、イラベルは現在4代目当主。

 数千年の歴史の中で、歴代の憤怒の魔王たちは、子孫に怒りの感情を制御せよと、言い聞かせてきた。

 

「少し引き籠りすぎましたか……あまりにも穏やかな数百年で、少し弛んでいたみたいです。

 私もまだまだ未熟ですね……」


 自分が未だに青いということを自覚し、苦笑する。


「さて、行きますか!」


 彼女は森を抜け、草原に出る。


「素晴らしい景色ですね」


 なだらかな丘が立ち並んで、青々として目を楽しませる。

 しばらく景色を眺め、気を落ち着けたところで、覚悟を決め、彼女は転移魔法を使う。


「距離と方角はあちら……込める魔力はこのくらいかしら?」


 そして、彼女の前にブラックホールのような穴が出来る。


「待っていなさい。

 すぐにチリにしてあげます……」


 イラベルはその穴に歩を進め、姿を消す……











「きゃあああああああっ?!」


 だが、久しぶりに使った魔法に、込める魔力の量を間違っていたせいで、彼女が消え去った後も穴は残り続け、丘の向こうに居た不幸な人類の集団も巻き添えになり、穴に吸い込まれたところでようやく消えた。










――――――――――――――――――――――――――――












 時折ラストラに頼んでキャロルの動向を確認しながら数週間、俺は孤児院に通い詰めた。


「わーちゃん、えほんよんで」

「べるちゃん」


 幼児といえる年齢のエリックとパルナが懐いてくる。

 二人とも餌付けで調きょ……ごほごほっ、躾の結果、舌足らずに俺をわーちゃんと呼ぶ。


 それが可愛くて、以前買ってやった絵本を何度も読めとせがんでくるので、何度も読んでやる。


 胡坐をかいた俺の上に二人が乗って、彼らを抱き込むようにして絵本を持って読んでやると、パルナのフサフサの尻尾がフリフリする。


 そう、パルナは犬の獣人だ。

 ほとんど人間と変わらないのだが、違うのは耳の位置と、尻尾があるくらいの女の子だ。


 まさにファンタジー……ヤンデレ魔王ラストラや、蟲魔王インヴィスや、ビスチェツンデレと違い、普通にほのぼのとする。

 美人のイリアさんも居て、日本に居た頃と違い、何とも充実した日々だ……



「ワタル、お話があります」


 そんなことを思っていたその日の夜、宿でビスチェに呼び出された。


(俺何やらかしたっけ?)


 ビスチェが敬語を使うときは、大概何かやらかしたのを叱られたり怒られる時だ……まったく記憶にないな……


 ビスチェの部屋に行くと、ラストラとインヴィスとグラトルも居た。


「さて、皆には言いたいことがあります」


 この時のビスチェは怖いので、さすがに魔王たちも静かに聞いている。


「この数週間、実に平和で何もありませんでした」


 俺達は顔を見合わせて、こくんと頷いた。


「ええ、本当に何もありませんでした。

 全く何もしませんでしたね……」


 奇麗なお顔に青筋が徐々に立ってくる。

 ちょっとヤバいかな?

 と思った俺達は誰からともなく床に正座した。


「さて、人は働かなくては収入が無いのはご存知ですね?」


 俺達は視線を逸らす。


「確かに、今まで持っていたお金を孤児院に全て寄付することは大変尊い行為だと思います。

 でもその後の宿代や、食事代は誰が払っているのでしょうか?」


 冷や汗が流れてくるが、俺達にも言いたいことはある!!


「でも、グラトルと離れたくないし……」

「でも、私たち魔王だし……」

「だって、ブライを助けた恩返しに、せめてお金出すって言ってたし……」


「でもでもだって言い訳しない!!

 貴方たちは私より年上なのよ!!

 働かずに食っちゃねして自分が恥ずかしくないの?!」


(別に……)


 俺達は心の中ではそう思ったが、口に出せば鬼が降臨することが分かっているので、ただただ沈黙して顔を伏せる。


「さすがに今の貴方たちの堕落ぶりは見ていられません!

 明日からはきちんと働くように!!」


「ぇっ」


「何か?!」


 口を開いた瞬間に睨まれて、声を出せなかった。


「返事は?」


『はい、頑張ります』


 俺達は揃って土下座した。


『あ、今ビスチェに「魔王を土下座させた女」と「かかあ天下」という称号が付きましたね。

 まだ独身なのに不思議ですね?』


 というテノンの声が聞こえたが、俺は耳を塞いだ。








「くすくすっ、あっ、すみません。

 ビスチェさんが……くすくすっ」


 次の日、孤児院に行き、イリアさんに事情を話してしばらく仕事を探すということを伝えた。

 その際、今までのように子供の遊び相手にはなれないことも……


「でしたら、明日から3日ほど朝から夕方まで子供たちの面倒を見ては頂けませんか?」


「???

 今までと変わりないのでは?」


「実は、ここを出て冒険者になった子達がいるのです。

 彼らはまだなり立てなので、思うように稼ぐことが出来ないので、元冒険者の私にいろいろと教わりたいそうで……」


 今までもイリアさんはちょくちょく獲物を狩に町の外に出ていたが、子供たちの世話や家事もあり、朝食と昼食の合間に、昼食と夕食の合間になど、なかなか纏まった時間が取れず、思うように収穫が無かったようだ。


 だから、3日ほど纏まった時間で技術指導と一緒に獲物を狩ってきたいと思っていたらしい。

 それにここを出て行った子たちも、恩返しとしてなけなしの収入から支援してくれているようなのだが、思ったように収入が上がらず、色々とじり貧になっているらしい。


 なので、この3日で金を稼ぎ、何とか父である院長が復帰するまで保たせたいそうだ。


(確かに、これで技術を学んで成長すれば、将来的にその子たちも十分な支援を孤児院に出来るかもしれないな……イリアさんは望んではいないだろうが、それで助かる子供たちもいるだろうし……)


「分かりました。

 引き受けましょう!」


「ありがとうございます!

 報酬の方は……」


「うーん……取れた獲物の1割ということで。

 イリアさんが頑張るほど私の報酬も上がるので頑張ってくださいね?」


「ふふふっ、ありがとうございます。

 それでは彼らに話をしてきますので、明日からよろしくお願いしますね?」











 その後2日間は平和に仕事をしていた。

 ブラック企業とは違い、ノルマもないし不安に掻き立てられることもない非常にホワイトな環境だ。


「強くなりたい」


 ファイヤーゴブリンカズヤがそう言いながら筋トレをする横で、大きい子供たちも一緒に筋トレし、コーラスロックの歌声に合わせて小さな子供たちも一生懸命で楽しそうに踊っていた。


(普通に幼稚園みたいだな……)


 まさかの元魔物せいれいと幼子たちがキャイキャイ遊ぶその場面を見ると、ほんの少しまで人類の脅威であったなどとは思えない。


 グラトルが浄化された影響か、魔物達の動きは非常に少なり、民たちの被害はなくなってきている様だ。




「頑張った私にご褒美……んんっ~!!」


「グラちゃん、お菓子ですよぉ」


「がうっ……んぐんぐ……」


 インヴィスはどこそのOLみたいなことを言っているし、ラストラは稼いだ金をグラトルに貢いでいる。


 彼女たちの持っているお菓子は、依然食べさせたアルテの手作りのお菓子と比べると、味は数段劣るはずだが、自分たちが働いたお金で勝ったということで、もの凄い美味に感じているらしい。


「アルテの料理か……料理はいいけどアルテには会いたいと思わないからなぁ」


 数々の精神的苦痛ひがいを受け、余り拠点には顔を出さなくなっていた。

 もう数週間は戻っていないなと思いつつも、そう呟いたと思ったら、何故か頭の中に”ガーン?!”とショックを受けているアルテのイメージがわいてきた……


 頭を振ってそのイメージを追い出す。


 イリアさんはもともと優秀な冒険者だったらしく、割とこの2日で稼いでいるようで、とてもいい笑顔だった。


 明日は最終日……無事に帰ってきてもらいたい。






















「それで今日まで子供たちを見ることになっているのね?」


 ビスチェがエリックと手を繋いで横を歩いている。


「ああ、今日の夕方までだな」


 俺はパルナと手を繋いでいる。


 よほど魔女っ娘の絵本が気に入ったのか、手にずっと持ったままだ。


 今日はビスチェも一緒に孤児院に来ており、昼飯の用意をするために買い物に行こうとしたら、エリックとパルナもついて行きたいと言ってきた。


 孤児院の方はマナたちが留守番している。


 


「今日の昼は野菜スープとから揚げだな」


「貴方意外と料理できるのね?」


「1人暮らししてたんだ。

 自炊ぐらい出来るさ」


「そ、そうね……」


「おい、何で目を逸らすんだ?」


「うるさいわね!」


「……料理が出来ないか下手なのか?」


「~~~っ?!」


 俺はドヤ顔を見せると、ビスチェはぐぬぬと歯を食いしばっていた。


「ぐっ……できれば教えてくれるとありがたいわ……」


 しかしなんだかんだと素直な彼女は、そういうことも割とあっさり言えるようだ。


「そんなに教えられないぞ?

 まあ、少しは料理できる女の方が、嫁の貰い手は多いだろうしな」


 なんて言っていると……


「わーちゃんとねえちゃんけっこんするの?」

「ふーふ、ふーふ?」


「なっ、そ、そんなことないわよ!!

 私がワタルとなんて~~~っ!!」


 ビスチェが初心な反応を見せる。

 はははっ、市民権持ちフツメン以上ならばほほえましいラブコメ展開だが、女神アルテ公認のマイルド魔物面マモノヅラの俺が対象ならガチの拒絶だろう……


 泣きそう……傷ついた心に耐えながら、俺は年長者として、割と微笑ましい反応をする彼女に助け舟を出す。


「そうだぞ。

 俺とビスチェなんてありえない。

 第一俺はイリアさん位お淑やかで、そんでおっぱいが大きいぃぃぃっ?!」


 ビスチェが無表情で俺の脇腹にグッサリと指突を放っていた。


「がはっ……ちょ……これはあかんですたい……」


「わーちゃん、ねえちゃんせんせいとふーふ?」


「ヒュー……ヒュー……」


 想像以上にグッサりきたので、呼吸が変になる。


「ふーふなんだ!」

「わーちゃんとねえちゃんせんせいがふーふ!」


 ちびっ子たちは大興奮で叫んでいる。

 その所為で道行く人たちは微笑んでいるが、今すぐ誤解を解かなければイリアさんに迷惑が掛かる……でもそれどころではない……


 何とかビスチェに誤解を解いてもらいたいが、本人はぶすっとしながらぷいっと顔を背ける。


 うんもう無理だ……出来ることはないな……後でイリアさんには謝ろう。

 











 そんなトラブルはありつつも買い物を終わらせながら4人で大通りを通って、噴水広場で休憩する。

 俺は座っているが、ビスチェがちびっ子たちを連れて飲み物や軽食を買いに行っている。


「今日でこの仕事も終わりか……」


 そんな何とも言えない寂寥感を感じていると、不意にビリっと悪寒に襲われる。

 見られている……

 視線を感じる先は大通り……そちらを向くと、一人の女がいた。


『渉さん!

 彼女は憤怒の魔王イラベルです!!

 渉さんに敵意満々です!?

 逃げて下さい!!!』


 テノンが慌てて逃げろと言っているが、俺は彼女から目が離せなかった。


 何故か彼女を見ていると、酷く鳩尾みぞおちの辺りが重く感じる。

 

(あの女はダメだ!!)


 こちらの世界に来てから目にしてきた美人たちと遜色ないほど美しい女なのに、訳が分からないほど凄まじい不快感に襲われる。


(何なんだこの女?!)


 初対面の美人にこれほど不快感を覚えるなんて……


『イラベルは魔王の中でも最強と呼ばれる存在です!!

 何で?

 数百年も自分の城の中に引きこもっていたのに……』






「グラトルを倒した男……間違いありませんね?」


 10mほど離れた位置で立ち止まり、そう問いかけてくる。


「ああ……」


「ならば死んでいただきます」


「出て来いお前ら!!」



 人通りが多かろうと関係ない!

 行動しなければやられる!!


「ビスチェ!!

 住人たちを非難させて逃げろ!!」


 あらん限りの声を出して叫び、精霊たちを呼び出す。





「ほいほ」


シュッ


 カズヤが現れた瞬間、持っていた剣を鞘ごとかるくふる。


「Oh……Thank you sir……」


 一瞬でカズヤが昇天まんぞくして逝った。


「ド~」

「レ~」

「ミ~」


シャッ


 コーラスロック達が出てきた瞬間にも同じく剣を横なぎに振るう。


「や~」

「ら~」

「れ~」

『た~』


 10匹ほど飛んでいった。


「……馬鹿にされている気分ですね」


 いや、うん……まあ……


「それでは……っ?!」


「ゴブゥ(〇×▽■●÷△◇アビス・レイ)」


 ア〇〇ゴブリンアナゴさんがいつの間にかイラベルの背後に回って必殺技を出す。


「決まった!」


キンッ


『?!』


 透明な障壁がイラベルの背後に現れ、アビス・レイが防がれた?!

 俺とアナゴさんは驚愕し、その一瞬でアナゴさんもどこかに飛んでいった。


「さて……」


 そう言いながら直刀なのに抜刀のような構えを見せ……


「ラブル! アタカ!!」


 ビスチェの精霊が背後から突撃した。


「ビスチェ!

 何で逃げなかった!!」


「置いて行けるわけないでしょ!!

 それよりあの女は誰?!」


「憤怒の魔王、イラベルらしい」


「何ですって?!」


『グワァー?!』


 一瞬でラブルとアタカも錐もみしながら飛んでいった。


「いい加減邪魔は鬱陶しいですね」


「っ?!」


「やめろぉ!!」


 振り返ってビスチェの方に動き出したラストラに急いでしがみつく。


「ビスチェ!!

 逃げろ!!」


「ワタル?!

 ダメ!!

 逃げてぇ!!」

















 イラベルがさやから剣を抜いた。


 その瞬間周りの時間が止まっているのではかというくらいゆっくりになる。


(ああ……これがよく聞く死の間際の……タキサイキア現象だっけ?)


 1秒が何百倍にも伸びたようにゆっくりとなり、それに伴って冷静になる。


(これはもう、死ぬだろうな……)


 それは諦め……もう死を受け入れてしまったということだ……


(もし俺がイケメンなら……恋人なんかを作ることにも積極的だったのかな?)


 あり得ないことを妄想する。

 

(もっと風俗にでも行くべきだったか?)


 結婚なんかには微塵も興味はなかったが、女の子に興味が無いわけではない。

 性欲は普通にある。


 ふと、ごくまれに人肌恋しくなることだってある。


(お金を出してでも、もっと可愛い女の子のおっぱいや尻に顔をうずめたかった……)


 二次元だけではなく、もっと現実の女性と触れ合いたい……それは確かに存在する願望だった。


(せめてビスチェだけでも逃げてくれ……出来る限りしぶとく時間稼ぎしてみるから……)


 なんだかんだ言ってここまで一緒に居た女性は初めてだ。

 変にこいつに手を出して危害を加えられないか……それが心配だ。


(だから早く逃げてくれ!!)


 俺はしがみついているイラベルの腰をさらに強く締め付ける。







(ん?)


 そして気付いた。

 目の前には……美女の柔らかいお尻……


(どうせ死ぬなら……もう、欲望に忠実になってもいいよね?)











――――――――――――――――――――――――――――









 男というのは、他人から見ればどうしようもないことに信じられない力を発揮することがある。

 渉の今わの際に訪れたこの力は……エロ力!!


 渉の五感は、今までにないほど研ぎ澄まされた……頬の感覚はそよ風の向きや強さすら感じれるほど敏感になり、嗅覚は犬にも届こうかというほど鋭くなる。


(ああ……柔らかい……そして……悔しいけどいい香り……)


「ビスチェ!!

 頼むから逃げてくれ!!」


「くっ、離しなさい!!」


「ワタル?!」


 渉の抵抗が激しくなり、さすがのイラベルもバランスを崩す。


 魔王とはいえ、男女の対格差、体重差があるため、身体を多少持ち上げられれば力の入り具合に狂いが生じる。


 渉が自分を守る為に、命がけで時間を稼いでいる。

 ビスチェは彼を見てそう思い、自然と瞳には涙が溢れてくる。


 しかし渉は……


(ふおおおおおおっ!!

 いい香りと素晴らしいお尻様じゃあああっ!!)


 心のうちはエロ魔人と化していた。


「きゃっ、ふぅん?!

 は、離しなさい!!」


「だめだあああああっ!!」


(どうせ死ぬんだ!!

 この至福の時を簡単に終わらせてなるものか?!)


 ビスチェからは死に物狂いな渉の声しか聞こえず、心が引き裂かれそうになる。


 周りにいる野次馬たちも、渉が何のために必死になっているか……それを誤解し、ある者は目を背け、ある者は涙を耐える。


 だが、よく見ると渉の口は口角が上がっていた。

 殴りたくなるほど鼻の下を伸ばしている。












「いけ!!

 ヘラクレススカラー!!」


「ごぉふっ??!」


 そんな渉の脇腹に、とんでもないモノが突っ込んできた。

 そう、Gである。


 

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