EP26 巨大すぎる力



「なんだって!フィラの中に強力な魔力が眠っているだと!?」


リッカルドは仰天した。

アイシャは首を横に振って人差し指を立てた。


「強力なんてもんじゃない。あの娘が覚醒して本気を出したらこの国も消し飛ぶぞ」


「リオティアが…消し飛ぶ…!?」


あまりに現実離れしている話にリッカルドは現実味がまるで湧かなかった。


フィラは華奢なか弱い少女だぞ。(リッカルドにはそう見えている)


「う、ウソでしょう?フィラからは何の魔力も感じなかったよ…?」


リアムも困惑しているようだ。

アレクスとランベールも絶句だ。


「嘘でも戯れ言でもないわ。フィラの心の奥深く。潜在意識にフィールドが何層にも重ねられて封印されている」


「う〜ん、こうなると、フィラに眠る『ゼロ』という力は、世界を跡形もなく破壊して、文字通り全てをゼロにしちゃうってことなんですかねー」


恐ろしいことを軽やかに発言するカディルの頭をリアムがはたいた。「あ、痛!」とカディルは後頭部を押さえた。


「そうか……。フィラは本当に伝説の天使だったのだな…なんと桁違いな力だ。…しかし、それならば尚更兄上にフィラを奪われるわけにはいかない…!」


一同はリッカルドを見つめた。

異議はない。


「だな!」


気合いを入れるようにアイシャが両の手を打った。金の瞳が爛々と光る。


「まず俺はフィラの覚醒を急ぐぞ」


「ああ、頼むぞ。カディルはなるべくフィラについていろ。アレクスは私の警備に加われ。ランベールはフェリクスと共に兄上の動向を探ってくれ。リアムはヴィクトーとバルバトスの行方を探せ」


「御意」


ランベールはサッと立ち上がり、会議を終了させた。一同はそれぞれ割り当てられた仕事に向かう。


アイシャはカディルを振り返った。


「悪いが今夜は外させてもらう。フィラにはお前から詳しく説明しておいてくれ」


「ええ。承りましたよ」


「頼むな!明日またお前の屋敷にいくわ」


去っていくアイシャにカディルは頷いた。








夜、屋敷に戻ったカディルは再びフィラの部屋を訪ねた。


ノックを何度かしても返事がないので不審に思い、そっと扉を開けてみる。

彼女はベッドに座り精神統一していた。

なにやら真剣な様子だ。


見てしまって良かったのかとカディルは迷い、考えた末、見なかったことにして帰ることにした。


しかし、そのときフィラが目を開けた。


「あっ」


カディルと目が合って、驚いたあと彼女は顔を赤くした。


「お帰りなさい、カディル様。変なところ見られちゃって…恥ずかしいぃ〜!!」


ベッドにうつ伏して悶えるフィラにカディルは微笑んだ。


「封印を解こうと頑張っていたんですね。何度かノックしたんですけど返事がないもので、心配になって覗いちゃったんですよ。私こそすいませんでした」


「着替え中だったらどうするつもりですか〜!責任問題ですよっ」


ふざけて笑うフィラにカディルも笑った。


「そうなったら責任取るしかないですね〜」


そこでフと疑問を持つ。


「…て。責任てどうとるんでしょう?」


「責任…」


二人で呟いて、赤くなった。


「あはは、次からは気をつけます」


カディルは気を取り直してフィラに真剣な眼差しを向けた。


「遅い時間で申し訳ありませんが、あなたに聞いていただきたいことがあります。よろしいですか?」


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