俺の幼馴染がカッコよすぎる!
横芝カイ
第1話 『再会』
昼前、駅前のとある喫茶店。
ダークブラウンで統一されたシックな店内を、陽の光と小さめのシャンデリアが優しく照らす。
所々に置かれた観葉植物が醸し出すお洒落な雰囲気。
カウンターの奥でコーヒーを淹れる男性と、カウンターの下のお菓子を取り出す女性。
俺と母さんは彼らからコーヒーとお菓子を受け取り、角にあるソファー席に座る愛姫と賢治さんの元へ向かい、俺が愛姫の横、母さんが賢治さんの横に座る。
「八千代、こっちだ。おお、春奈、久しぶりだな」
40代ほどの渋いおっさんが俺たちに声をかける。
短髪の白髪を前髪を上げた爽やかな印象。
優しそうに垂れた青い目や口の周りを丸く囲むように生やした白いひげ、つんと高い鼻。
全体的に彫りが深く印象的な顔立ちだ。
彼は、日本各地に多数のホテルを経営する水ノ宮ホテルの社長
外国人とのハーフであり、妻もまた外国人であったが、娘を産んですぐに離婚してしまったらしい。
「おはよー、賢ちゃん。愛姫ちゃん久しぶりねぇ」
そんな彼に返事を返すのは、俺の母親である
既に齢は30を超えているが、それを感じさせないくらいには美人だと思う。
そして彼女には夫がいない。死別や離婚、などではなく元から結婚していない。つまり、俺には生まれた時から父親がいない。
貧乏ながらも女手一つで俺を育ててくれていた尊敬できる母親だ。
「久しぶり、賢治さん。愛姫もおひさ」
「八千代さん、お久しぶりです。春奈も久しぶりね」
俺の返事に続いて挨拶を返した
ハーフと外国人の両親を持つから、ハーフ?クォーター?どっちになるんだろう。
金色の髪を小さな赤い薔薇の髪飾りが付いたリボンで結んだツインテール、宝石のような青い目、均整のとれた顔立ち。
身長と胸に関してはこれからに期待だが、それら全てを含めて容姿端麗なのだと思う。
そしてまぁ、なんともありきたりな話ではあるのだが、俺は愛姫のことが好きだ。
だけど、告白とかはしたことない。する気もない。
もしかしたら愛姫も俺のこと―――なんて思うことは時々あるけど。
多分失敗したら、愛姫の性格からして、そんなことしたらもう二度と話を聞いてくれないと思う。
いつから、とかなんで、とかは分からない。まぁ、好きになるのに理由なんてないってよく聞くし、一緒にいたら自然に好きになっていたわけだ。
だから―――
「春奈に報告したいことがあるって言ったな。言葉を濁しても仕方がないから単刀直入に言わせてもらうぞ」
「わたしたち、結婚することにしました〜!」
「は?」
だから、幼馴染が義姉にジョブチェンジするなんて、夢にも思ってなかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「いや〜、実はな、八千代が引っ越した後もちょくちょく会っていてな。まぁ、元からお互い二人の両親みたいなもんだっただろ?」
「それで〜、色々あって結婚することにしちゃった!でね〜、私たちは賢ちゃんの仕事の関係で向こうに住まなきゃいけないんだけど〜、二人は明日からこっちの学校に入学でしょ〜?」
「え?愛姫もこっち来るの!?」
「そうよ。言っとくけど、あんたに会いたかったとかじゃないから。勘違いしないで」
「そ、そーなんだー」
理由はどうあれ、また愛姫と一緒の学校に行けるのは嬉しい。
いずれは愛姫とあんなことやこんなこと……ぐふふふ……あっ、胸なかったわ。
あれ?愛姫さん?あなたの足が俺の足を踏んでるんですけど?しかもそれヒールじゃないですか?そのまま力入れたりしないでくださいね?
「何言ってんだ、愛姫。春奈が受ける学校をわざわざ聞いてきたのはお前だろう」
「―――え?それってもしかして俺と同じ高校にいだだだだだだだだ!さーせんっ!さーせんっした愛姫さま!」
ヒールが!ヒールが食い込んどる!俺の靴、ただの安もんのスニーカーなんだぞ!
そんな高級そうなヒールで俺の足と心に深い傷を負わせるんじゃないよ!
それにしても、ヒールか……これまた妄想が……はっ!
べっ、べべべ別にそのヒールぺろぺろしたいとか思ってないからね!?
「お父さん、バカ言わないで。わたしが受ける学校をたまたま春奈も受けたってだけでしょ。ほんと、こんなバカのお守りなんでごめんよ」
「バカとはなんだ!お守りとはなんだ!俺はそんな年齢じゃないぞ!」
少なくとも俺は問題を起こしたりはしないし、ある程度の常識は持っている。
それをお守りだなんて……ん?
愛姫が俺のお守りをする……?あれ、最高じゃね?
いやそうじゃなくて、
「……お守り?」
「そうなのよ〜。今日から春ちゃんの家で愛姫ちゃんと暮らしてもらうことになったから〜」
「は?」
「愛姫ちゃん、春ちゃんこーみえて家事は得意だから、悪いところばっかりじゃないの。だから仲良くしてあげてね〜」
「はい、任せてください」
「え!?愛姫は知ってたの!?」
「はっはっは、なぁに、ちょっと春奈を驚かせようと思ってな、春奈にだけ黙ってみたんだが、予想通りだったな」
賢治さんが豪快に笑うが、俺はそれどころじゃない。
だって好きな女の子と一つ屋根の下だよ?
これはもうあんなことやこんなことが起きない方がおかしいよね?ね?
っていうかむしろ強制的にイベント起こしちゃう?ぐへへ、妄想が捗るぜ。
あっちょっ、痛いです愛姫さん、なんでそんなテクニシャンなんですか?力を強めたり弱めたりするんですか?
ハマっちゃうじゃないですか。
「そん……な……」
「なによ、嫌なわけ?」
「いーや、むしろ最高ですな。今日から愛の共同生活ってわけだろ?長い夜になりそいたっ、いたたたたたっ!もう折れちゃうよ!」
ふぅ、危うく折れるところだったぜ。
だがこれは俺が愛姫のために守り続けてきた童貞とおさらばできるのも近いな……!
あれ、でも待てよ、愛姫が処女って確証はないよな……?
いや、幼馴染ヒロインが処女じゃないなんてそんなラブコメあってたまるかよ!
だけどほんと、愛姫が処女じゃなかったら、泣くよ?いや、むしろ愛姫を殺して俺も死ぬわ。
愛が重いって?ふふ、これが俺の10年以上積み重ねてきた愛の重さだよ。
あっ、やめて、もう俺の足指限界だから―――
「あふんっ」
うおぅ……あまりの痛みに女の子みたいな声出ちゃったよ。もうこれ折れててもおかしくないよ?
メインヒロインが三年ぶりに会った幼馴染の足の指折るって、それなんてエロゲ?
「はっはっは、二人とも相変わらずだな。その調子なら仲良くやれそうだ。まぁ、頑張ってくれよ」
うん、テーブルの下が見えてたらそんなことは言わないんだろうね。
これから毎日、愛姫の攻撃に俺の身体が果たしていつまでもつのか……
足、折れてないといいけど。
「とりあえずこれからよろしくな、お姉ちゃん」
「キモい!」
「はぁん!」
あ、逝ったわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます