第23話:ドロップアイテムと困惑と
しばらくは勝利の余韻を噛みしめていた二人だったが、すぐに気を取り直してアルストに向き直った。
「アルスト、助かったぞ」
「本当にありがとうございます」
「いえ、あの痛みは俺も経験済みで、最初の頃は足がすくみましたから」
予想していたから動けたというのもある。最初の勢いのままエレナがアスラを倒してくれれば一番だったのだが、もしエレナを抜けてアレッサに迫るようであれば手助けが必要だとも考えていたのだ。
「それに、俺も討伐アイテムは貰えたので」
「そういえば私もアイテムを手に入れました」
「討伐アイテムはパーティ全員が貰えるんです。MVP賞とラストアタック賞だけは対象者しか貰えませんけどね」
「わ、私でよかったのだろうか」
「誰がどう見てもエレナさんですよ。経験値と
「そうだ! ドロップアイテム!」
そこなのかと思ったアルストだったが、そこをアレッサが説明してくれた。
「一階層のボスモンスターからフレイム・ドン・スピアがドロップしたんですよね。それで今回の勝利でドロップしないかって気にしてたんです」
「あぁ、そういうことですか」
アルストには出てエレナには出ない、なんてことはないだろう。確率の問題であり、アリーナは一階層のボスモンスターからレア度5が出ることはないと言っていたが、それでも期待するのは個人の自由なのだ。
アイテムボックスを開いたエレナはドキドキしながらNewと付いたアイテムを見ていたのだが――。
「……はぁ」
そのリアクションを見て、なかったんだとすぐに分かった。
「まあ、アリーナさんも普通は出ることはないって言ってたし、そこまで気にしない方がいいんじゃないですか?」
「……そ、そうだな。一応、レア度が3の装備や素材だったからよかったんだよな」
エレナが手に入れたアイテムも気になったが、一つとはいえ自分が手に入れたアイテムも気になっていたのでアルストもアイテムボックスを開いた。
「――えっ?」
漏れる驚きの声。
エレナとアレッサは顔を見合わせた後にアルストへと向き直る。
「どうしたんだ?」
「何かおかしなことでも?」
「いや、その、ドロップアイテムが……」
何が起こっているのか分からない。何度も言うがレア度5が一階層のボスモンスターから出ることはないはず。
アルスト自身が先ほど口にした言葉であり、アリーナの発言を受けて実際に思っていることでもある。
確率の問題、それはあるだろう。だが、こうも連続して起こることなのだろうか。
「…………またレア度5なんだよね」
「「…………えっ?」」
手に入れたアイテムは前衛職専用装備の脚当――アスリーライド。
現在装備している脚当はアルスター3と同じレア度2なので、レア度5は破格の装備になってしまう。
「な、何が起こってるんだ?」
困惑するアルストはアレッサにもドロップアイテムの確認をお願いした。
「……私のはレア度3の素材アイテムです」
自分だけに高レアリティのアイテムがドロップしている。
その前にあったレアボスモンスターとの遭遇も含めて、何が起こっているのか訳が分からない状況だった。
「……まあ、いいんじゃないですか?」
「えっ?」
そう言ってきたのはアレッサだった。
「レア度が低いわけじゃなくて高いわけじゃないですか。ラッキーくらいに思ってもいいんじゃないですか?」
「いやまあ、ラッキーではあるんだけど……」
「うむ、言われてみればそうだな。別に手に入れて困るものでもないだろうし」
「エレナさんまで……」
だが言われてみればその通りなのだ。
たまたま、本当にたまたまアルストに二回連続で高レアリティのアイテムがドロップしただけの可能性だってある。次のボスモンスターからは逆にレア度が低いものしか出てこない可能性だってあるのだ。
考えても分からない。ならば、運が良かったで終わらせてしまえばよいのだ。
「……そうですね。そういうことにしておきます」
「うん」
「それで、その脚当は装備しないのか?」
「今は止めておきます」
「どうしてだ?」
そこでアリーナさんから忠告を受けたことを説明した。
「なるほど、そんなことがあるのか」
「……でも、それって――」
「あっ!」
説明をしてアレッサの呟きを聞いてから自分の失態に気づいた。
高レアリティのアイテムを装備していたら
「……な、内緒でお願いします」
「分かりました」
「むっ、なんのことだ?」
一人気づいていないエレナは不満気な表情だったが、アレッサは何でもないと言って誤魔化してくれた。
「と、とりあえず、この後はどうしますか? まだ時間があるなら二階層まで足を延ばせますけど?」
その流れに乗ってアルストのこれからの行動について確認をする。
「に、二階層か……」
「ちなみに、今のGはいくらなんですか?」
「……345G」
「……た、試しに上がってみますか?」
「……そうしてくれると助かる」
今回の装備に相当なGをつぎ込んだようでほとんどないに等しい金額だ。うなだれているエレナを励ましながら、三人は二階層へと上がって行った。
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