【GM用】シナリオ

*本シナリオはPC⑤、⑥を除くPCが全員同じ部活動の部員であることを仮定して執筆されている。また表記の煩雑化を防ぐため、今回は表記を「バスケ部」、練習場所を「体育館内バスケットコート」、溜まり場を「更衣室(部室)」と仮定する。これはGM・PLの話し合いによって自由に変更して構わない。



【オープニングフェイズ】

・シーン1:魔の悪い悪魔 PC①(覚醒前のため登場判定を求めない)

あなたは夕暮れの体育館で、バスケ部の練習に励んでいた。しかし、今日はどうも体調が悪い。腹部が痛み、顔には脂汗が滲んでいた。


先輩:「おい、大丈夫かPC①?どこか体調が悪いのか?」

腹部に痛みがあることを伝える。

「そうか、顔色も悪いし、今日は上がっていいぞ。」


あなたは先輩との会話を終えて1人更衣室に向かった。着替えを済ませて、校門までの近道を通ろうとしたときにあなたは同級生の近藤を見かける。

近藤はサッカー部のエースで、顔もなかなかにいい色男だ。その近藤が白いスーツを着たガタイのいい男から、何かを受け取っている。


近藤:「春日さん、今月分はこれでいいんすよね?」

春日:「ああ、上出来だ。キャンディーのことは、一般の生徒にはバレていないのだろう?」

近藤:「へへっ、その辺は任してくださいよ。俺もこのキャンディが、なくなると困るんでね。」


そう言いながら近藤は、春日と呼ばれた白スーツの男から受け取った袋をゆする。しかし、次の瞬間近藤の眼とあなたの眼が合ってしまった。


春日:「誰だ!」


PC①がなにかをするよりも春日の腕が閃く方が早かった。あなたの腹には、大きな風穴が開き、あなたの身体は大きく弧を描いて仰向けに倒れた(演出戦闘のため、HPダメージは発生しない)。


近藤:「PC①……春日さん、こ、殺しちまったのか?」

春日:「ああ、そうだ。今更ガキの1匹や2匹死んだところで何も変わらん。近藤君、我々の取引の秘密の方が重要なのだよ。そもそも、そのキャンディの完成までに何人の人間が死んでいると思っているんだ?」

近藤:「……は、っはは、そうだ。そうだよな。俺達がこのキャンディを使える方が、他の奴の命よりも大事だよな。はははははは」


あなたの遠のいていく意識の中で、聞こえた最後の音は近藤の挙げる乾いた笑い声だった。PC①が死亡した時点で、シーンを終了する。



・シーン2:渇望・憤怒・犠牲 PC②(覚醒前なので登場判定は求めない)

PC②ははじめから登場。PC③、PC④はGMの指定したタイミングからの強制登場とし、以降のシーンはPC②、PC③、PC④の合同オープニングとする。

PC②は同学年の、倉橋と井口、広中に絡まれていた。


倉橋:「なぁ、PC②?俺たち友達だよなぁ?友達が困ってたら助けるのは当然なんじゃねぇの?」

井口:「そうそう。いつもどうり2万でいいからよ~。」

広中:「ほらほら、早くしな。」


PC②は度々倉橋と井口、広中、そして近藤にカツアゲをされていた。

PC②が毅然と言い返すようならば、倉橋と井口は暴力に訴え、広中はそれを煽るだろう。


倉橋:「っんだよ!さっさと金出せって言ってるだろうが。」


逆に、PC②がただ委縮してしまうだけだった場合、倉橋と井口、広中はつけあがり、カツアゲをそのまま続行するだろう。


井口:「っち、これじゃ足りねーじゃねーかよ。明日までに3万だ!用意できなかったら、分かるよな?」


シーンがここまで進行したい時点で、PC③とPC④に登場を求める。2人は最近部活に顔を出さない、PC②を探しに来た設定である。


倉橋:「げ、PC③にPC④。」

井口:「PC②、今日はこの辺にしといてやるよ。」


倉橋と井口、広中はPC③とPC④が現れると、あっさりと引き下がる。2人はそのまま退場する。この時点で夕闇が深くなっており、PC達3人は今日の部活には出ずに、そのまま帰路に着くことにするとよいだろう。




・シーン3:衝撃・覚醒 PC⑤(覚醒前なので登場判定は求めない)

あなたは近道をしようと、学校裏手の茂みを歩いていた。そこには、息も絶え絶えなPC①が倒れていた。助けを呼びに行こうと振り返ると向こうから、PC②、PC③、PC④が歩いてくる(全員に登場判定は求めない)。

再びPC①に視線を戻すと、無残に息絶えたPC①の姿があった。

しかし、あなた達は不思議な光景を目にするPC①の傷口が塞がっていく。そして強烈な衝撃波のようなものがPC①から発せられた。


椿:「あなたたち!そこで何をしているの?」


そこに現れたのは、あなた達よりもほんの少し年上に見える。3人の男女だった(PC⑥に登場を求める。PC⑥は既に覚醒しているので、登場判定を求める)。しかし、3人とも明らかに異常だ。女性の髪は風もないのに、さらさらと動き、男性の手に握られているのはどうみても日本刀だった。


椿:「隼人、ワーディングは?」

隼人:「張ってる。……春日恭二は逃げた後みたいだな。」

椿:「でも、私たちの任務よりこの子たちの保護が優先みたいね。ワーディングの中でも動けてるってことは…たぶん友達の覚醒に影響されて、全員…」

「あなた達、名前は?」

「わたしは玉野椿といいます。こっちは高崎隼人。それと、彼(彼女)はもしかして知り合いかしらPC⑥よ。3人ともあなた達が今見たような超常現象を専門に扱う組織のエージェントをしています。」

「全員、悪いのだけれど私たちの拠点まで来てくれないかしら。」


PC達がそれを承諾すればシーンを終了する。椿は彼らが納得するまで、説得を続けるだろう。場合によっては次のシーンで霧谷が語る内容を椿に語らせてしまってもよい。


【ミドルフェイズ】

・シーン4:世界の真実 PC①(登場判定はここからは全員に発生する。注意せよ。)

全PCに登場を求める。

PC①の意識が戻るところからシーンは始まる。場所は市内にあるUGNの倉庫。簡易的な医療設備があり、そこのベッドにPC①は寝かされている。その向こう側にはソファーなどの雑多な椅子が円を描くように配置されている空間があり、他のPCと椿と隼人がそこに居る。壁は巨大なスクリーンになっており、30代前半に見える男性が映っていた。


霧谷:「目が覚めましたかPC①さん。」

「わたしはUGN-ユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワーク-日本支部、支部長の霧谷雄吾といいます。」

「ここはUGNがもつ拠点の1つで、あなたに害を与える存在はいません。ここにPC①さんを運んだのは、UGNのエージェントである玉野椿さんと同じくエージェントの高崎隼人君です。」

「まず、あなたの身に何が起こったかについてお話ししましょう。あなたはFH-ファルス・ハーツ-のエージェント“ディアボロス”春日恭二によって一度殺されました。」

「しかし、あなたが知っている世界は変貌していました。それがあなたの命を救った。」

「およそ20年前にレネゲイドというウイルスが世界に広がりました。このウイルスは人類のほとんどに感染しています。そして、身体や心に過度な負荷がかかると発症して、人間をオーヴァードという存在に変えます。」

「オーヴァードは、人間には不可能な強大な力を持ちます。あなたの傷の再生もオーヴァードの力の1つです。」

「しかし、オーヴァードの力を使いすぎると、人間はレネゲイドに浸食され、理性を失ってしまいます。我々はこれをジャームと呼んでいます。」

「PC①さんは体に受けた傷が、そして他の皆さんはPC①さんの死と再生を見てしまったことによってオーヴァードに覚醒してしまったようです。」

「今、現在オーヴァードになってしまった人間を元に戻す方法はありません。無論ジャームの理性を取り戻させることも無理です。」

「突然のことで動揺されているかもしれませんが、これが現実、真実の世界です。幸い玉野さん達があなた達を見つけてくれました。玉野さんはオーヴァードになったばかりの方に力の抑え方を教える仕事をしています。高崎君も幼少の頃から活躍している優秀なオーヴァードです。」

「PC⑥さんはあなた方のようにオーヴァードになった後、力の使い方を2人に教わっているところです。」

「皆さんには、しばらくこの拠点まで通って頂き、力の使い方を2人から教わって欲しいと思うのですが、どうでしょうか。」


PC達が承諾するまで霧谷は、熱心に説得する。どうしても承諾しないPLがいる場合には、ここに選択肢の分岐がないことを伝え、話を先に進めること。


「ありがとうございます。それでは玉野さん、高崎君、頼みましたよ。」


霧谷がそういうと、2人は「はい。」と返事をし、霧谷との通信が切れる。

ここで隼人は大きな欠伸をする。


隼人:「ふぁーーあ。真面目な椿は、じゃあ今から訓練とか言い出すと思うけど、もう夜も遅いし、こいつら(PC達)の親御さんが心配すんじゃねーの?」

椿:「……んん、それもそうね。」

隼人:「ってことで、今日はここまで!解散!あ、ただオメーら親や学校のやつらにオーヴァードとか、ジャームとか言うんじゃないぞ。信じてもらえないどころか、警察呼ばれて、俺らも駆り出されるのがオチだからな。」


隼人はそこまで言うと手を払う動作をしてさっさと帰れと示す。PC達が拠点を後にした時点でシーンをカットする。



・シーン5:赤薔薇の令嬢 PC②

あなたは帰る方向が1人だけ異なり、夜の街を1人で帰っていた。すると全身黒で統一し、ヴェールに日傘、透き通るように長い金髪の上にのせた帽子に赤薔薇をつけた少女が、伏し目がちに立っていた。

あなたが近づいたことに気づくと、少女は顔を上げあなたのゆく道をふさいだ。


レリア:「こんばんは。あなたがPC②さんですね?」

「私はFH幹部アルフレッド・J・コードウェルお父様からの使者、レリア・ジュリーと申します。」

「今日は、あなたに招待状を持って参りました。」

「あなたが学校で辛い思いをしていることは知っています。しかし、UGNにいてもその現状は変わらない。UGNは力を抑える事しか教えません。」

「FHは欲望を開放せよと教えています。力の有効な使い方を指南するのです。」

「あなたのその力を使えば、近藤も、倉橋も、井口、広中も…周りで助けようとしなかった全てを破壊することが可能ですのよ。」


PC②がレリアの誘いに乗った場合は以後のシーンは描写せず、指示があるところから再開する。


レリア:「そう、私は別にあなたがこの招待を受けなくとも構わない。」

「その代わり、若い芽のうちに摘んでおくのがお父様のため。ごめんなさい……あの人とお父様のために、死んでください。」


ミドルフェイズ戦闘に移行する。敵はマスターレイス09レリア・ジュリー1体。PCと敵との距離は5mとする。PC①、PC③、PC④、PC⑤、PC⑥はワーディングを感知できるため、2ターン目の開始時に戦闘に参加できる。勝利条件はレリアを一度戦闘不能にすることである。レリアは戦闘不能後[蘇生復活]で復活し、[瞬間退場]で退場する。また、戦闘不能を経ずとも2ターン目のクリンナッププロセスには退場する。



レリア:「今回はあの方の恩情ということにしておきましょう。私は本来の任務に戻ります。」


椿と隼人が異変に気付き何があったのか聞こうとする。


椿と隼人との会話終了後、シーンをカットする。


PC②がレリアの誘いに乗った場合、以降のシーンを描写する。


レリア:「物わかりの良い方は、嫌いではありませんわ。」


レリアがPC②を手招きし瞬間退場Ⅱをしようとするが、そこに椿と隼人が切りかかる。演出戦闘を1ターン行った後、ワーディングを感知したPCの登場を許可する。

ミドルフェイズ戦闘に移行する。敵はマスターレイス09レリア・ジュリー1体。PC、椿、隼人は同エンゲージとして扱い敵との距離は5mとする。演出で既に1ターン戦っているので本戦闘は2ターン目からの開始とする。勝利条件はレリアを一度戦闘不能にすることである。レリアは戦闘不能後[蘇生復活]で復活し、[瞬間退場]で退場する。また、戦闘不能を経ずとも2ターン目のクリンナッププロセスには退場する。

本戦闘ではPC②に一切の行動を認めない。


椿:「待て、卑怯者!」

隼人:「……PC②、少し話せるか?」


隼人はPC②を少し離れた位置まで連れていき問いかける。


隼人:「俺は口が下手だから、うまく言えないけどさ。」

「おまえをいじめてるやつらって、お前が化け物になってでもぶちのめしたいやつなのか?」

「お前はまだ見たことないだろうけど、ジャームってのは見ていられないもんだ。俺はお前が、お前たち全員がそんな怪物になるところは見たくない。」

「だから、護る。……それだけだ。オーヴァードじゃなくてもお前はやつらより強いんだ。」


隼人の話が終わったところでシーンをカットする。



・シーン6:半人前 PC③

全PCに登場判定を求める。

翌日は学校も部活も休日だった。あなた達はUGNの拠点となっている倉庫に集まっていた。


椿:「全員、力の制御はできるようになってきてるわね。」

隼人:「まだまだ、半人前って感じだけどな。」

椿:「余計なこと言わない!」

「さて、昨日の襲撃もあってあまりのんびりとしていられなくなったわ。」

「あなた達自身を狙う何者かがいることはもちろんだけど、マスターレイスがこの街に現れたということは、この街で今何らかのFHの作戦が行われている可能性が高いわ。」

隼人:「特に、俺たちはお前たちが通ってる高校が怪しいと思ってる。PC①は見たことあるだろ。白スーツのコイツ(モニターに春日恭二の画像が映る)。コイツの目撃が高校の周辺で多い。」

椿:「本当は覚醒したばかりのオーヴァードにUGNの仕事を託すなんて…君たちの負担だと思うけど、私たちは昨日のレリア・ジュリー、マスターレイス09を追うよう別命が下ってしまったの。」

「春日恭二の企てを暴くことは、あなた達の日常を護ることにもつながるはずよ。お願いできる?」


PC達が承諾したら情報収集フェイズに移行する。承諾してもらえなった場合、マスターレイスの脅威や、春日恭二がへっぽこであること、高校で行われている計画が進行すれば、霧谷の告げた世界の真実が公になることを材料に承諾するまで説得すること。


椿:「では、あなた達5人に正式にUGNイリーガルの資格を与え、春日恭二が高校で行っている事件の調査解決を命じます。」


シーンをカットする。



【情報収集フェイズ】

・a-1春日恭二

情報UGN:8

UGNエージェントに倒された回数は数えきれないが、その度に何度も蘇る不屈のFHエージェント。近接戦闘を得意とし、強力な生命力を武器に戦う。これまでに複数のFHセルからスカウトとリストラを繰り返されており、現在は日本で活動しているFH幹部、アルフレッド・J・コードウェル博士の関心を引こうとしているようだ。


・b-1近藤洸丞

情報噂話:9

PC達と同じ高校に通う学生。サッカー部のエースで、女子生徒からの人気も高い。不自然なのは、彼は昨年度までは特段スポーツで目立ったところがなく、クラス内でも目立つ生徒ではなかった。その彼は今年度のある日を境に、ほとんど1日で変わってしまった。今では、昔の彼を語る人間の方が少ない。


・c-1倉橋光・井口大斗・広中ゆうた

情報噂話:7

PC②をいじめている不良学生。最近は近藤洸丞の腰巾着になっており、近藤が人目のあまりないところで彼らに何かを渡している姿が目撃されている。最近何かと金遣いが荒いようであり、PC②以外でもカツアゲの被害にあったという報告が上がっている。しかし、金を何に使っているのかは不明。


・abc-1キャンディ

情報UGN:9

春日恭二とその部下が開発したチューインガム型のレネゲイド活性化薬。使用した対象のレネゲイド浸食を加速度的に高め、身体能力を向上させる効果がある。その代償として、使用者は9割を超える確率でジャーム化する。また、生産コストが高く量産できていないという問題がある。


・abc-2ⅰ春日恭二と近藤洸丞の関係

情報裏社会:9

近藤洸丞の心の中にあった嫉妬や妬みに付け込んだ春日恭二が、近藤をキャンディのはじめの被験者に選ぶ。近藤はキャンディの力によって部活動での成功と、校内での地位を得た。近藤は不良を手駒として使い、校内を裏からも支配しようと企み、高校をキャンディの実験場として提供。春日恭二は近藤を通じて、不良高校生たちに金銭と引き換えにキャンディをばらまいていった。春日を除くと、彼らは全員レネゲイドやジャーム化について知識を有していない。


・abc-2ⅱキャンディ制作工場

情報裏社会:10

キャンディ製作工場は高校から20分ほど離れたところに所有者不明の廃工場があり、そこを春日恭二が改造して使用していることが分かる。キャンディの備蓄分は工場横の倉庫に保管されているようだ。


・abc-3ⅰレリア・ジュリー

情報裏社会:9

春日恭二の計画を察知したコードウェル博士が派遣したエージェント。コードウェル博士から春日恭二の計画には、スポンサーになるだけの価値があるのかを見極めるように指示されており、そのための障害になる人間がいれば排除するように命令されている。現段階で彼女は春日恭二のキャンディ計画はコストパフォーマンスが悪いと思っている。キャンディの保管場所が分かればそれを奪取しようとするだろう。


・abc-3ⅱキャンディ制作工場へ行く

項目「キャンディ製作工場」が開示されたのちに宣言できる。トリガーシーンへと移行する。


・d-1玉野椿

情報UGN:7

UGNチルドレン出身のエージェントで、UGNチルドレンの教官も務める優秀なオーヴァード。「怒ると怖いセンセイ」といわれる真面目な性格だが、生徒の生還率は高く、信頼も篤い。爪を伸ばし遠距離から白兵攻撃を行う能力から“シルクスパイダー”と呼ばれる。


・e-1高崎隼人

情報UGN:7

UGNチルドレン出身のエージェントで、UGN本部エージェントの1人として各地に派遣されている。やる気のない態度や緩い雰囲気などUGNチルドレン出身者らしからぬ態度を持つ彼だが、任務を放棄することは一切なく、友情や義理は固く守る。複数の相手を1人で引き受ける白刃戦から“ファルコンブレード”と呼ばれる。



【トリガーシーン】

・シーン8:面倒 PC④

あなたの端末に高崎隼人から通信が入る。他のPCは任意登場だが、登場していることを推奨する。


隼人:「おーい。全員揃ってるか?」

「調査の進捗状態を教えてほしくってさ。俺は、大丈夫だろうって、言ったんだけど、椿がうるさくって……ア、イテ」


電話口から殴られたような音が響く。


隼人:「え、マジか。春日恭二のアジトが分かったのか。それはどこなんだ?」

「俺たちが追っているやつもその辺りに潜伏しているって話があるな。」


声が少し遠ざかり、椿と会話する隼人。


隼人:「わかった。お前たちはもうそこに向かってるんだな?」

「現場に着いてしまったら、おそらく戦闘になる。俺や椿の助力は期待するな。自分たちで相手を倒すことを考えるんだ。」


ここで、隼人は少し黙り言いにくそうに続ける。


「……お前たちから聞いた情報が確かなら、今から向かう場所でお前たちは自分の同級生に出会うかもしれない。……でも、迷うな。そこにやつらがいたのなら、そいつらはもう手遅れだ。お前たちの手で楽にしてやるんだ。」


隼人はそこまで言うと、もう伝えることはないといった形で、通信を切る。GMはPC達にロイスの取り忘れがないかを確認し、シーンをカットする。



【クライマックスフェイズ】

・シーン8:ディアボロス・ファクトリー PC①

全PCに登場を要求する。

夕暮れに沈む街。春日恭二の工場は錆鉄色を夕焼けと同化させながら、異様な雰囲気を放っていた。扉は既に開け放たれ、陽光を反射するメガネの男が後ろ手に組んだ手を解きながらゆっくりと振り返る。彼の純白のスーツは空の色を映して紅く紅く染まっていた。


春日:「UGN……というよりも素人の集まりか。この“ディアボロス”春日恭二も舐められたものだな。」

「私の邪魔をしようというのだろう。お前たち如きガキに大人の私が負ける訳がない。」

「私は、手加減をするのが苦手でな。骨が残らなくとも悪く思うなよ!」

「近藤!!」


春日が呼ぶと、廃工場の入り口に金属バットを持った近藤洸丞、倉橋光、井口大斗、広中ゆうたの4人が現れた。


近藤:「春日さん、こいつらみんな殺っちまっていいんすよね。」

春日:「ああ、近藤。ところで、お前には、さんざん良い思いさせてやったよなぁ。……もう充分だろ?」

近藤:「えっ…?」


春日が指を鳴らすと、近藤達4人の身体が見る見るうちに膨らんでいき、雷と風を纏いだす。ファンタジー作品に登場するオークを思わせる姿となった近藤達が次に口を開いたときに出てきたものは、既に言葉ではなかった。


近藤・倉橋・井口・広中:「オオオオオォォォォーーー!」

春日:「さて、役者は揃ったというわけだ。私の実験品の最終試験を始めようではないか、ガキども!!」


衝動判定を行う。

意思:9

衝動判定に失敗した場合、バッドステータースの暴走を得る。その後全PCは浸食率を2D10上昇させる。


戦闘配置は全PCが1エンゲージとなりその前に10mを開けて春日恭二が、近藤、倉橋、井口、広中はそれぞれ独立したエンゲージでPC達の後方10mに配置する。

勝利条件は、エネミーの全滅。エネミーとは春日恭二、近藤洸丞、倉橋光、井口大斗、広中ゆうたを指す。


近藤、倉橋、井口、広中はエージェント:アタッカーのデータに修正を加えたものを用い、4人のデータに差はない。


春日恭二は、はじめのイニシアチブプロセスで「異形の転身」を用いてPC達に接敵し、PCのエンゲージからの離脱を阻止しようとする。

「私の前からは逃げられん!」


春日恭二は自分の手番以外にメインプロセスは行わない。自分の手番ではコンボ「不屈の強撃」を使用し、白兵範囲選択攻撃を行う。命中した装甲値を無視してダメージを与え、HPを8点回復する。さらに、ダメージを与えたPCに6点を追加で与え、追加攻撃で与えたダメージの合計分だけHPを回復する。追撃は3回まで、5回目以降は単体攻撃となる。

「これが私の新たな力だーーー!ワハハハハ!!」


春日恭二はリアクションでは、ガードしか宣言しない。ガード値は3D+10。ただし、4回目の攻撃からは3Dのみとなる。

「そんな攻撃、痛くもかゆくもない!」


春日恭二は重圧を受けた場合のみ解除する。

「んうーー、利かんわーーー!」


春日恭二は戦闘不能になると1度目は「不死不滅」によって、HP20で復活する。

「私は、私はまだ死ねん……」


春日恭二は2度目の戦闘不能後「魔獣の証」によってHP50で復活する。直後に「加速する刻」を用い、メインプロセスの内「巨神獣化」をマイナーアクションで使用し、メジャーアクションを放棄する。以降のリアクションは「竜鱗」か「復讐の刃」を使用する。

巨大化した春日恭二は人語を介さず、巨大メカのような外見になる。


春日恭二は3度目の戦闘不能後こっそり蘇生復活し、瞬間退場するが、気づくと死体がないといった形で、アクティブな描写は行わない。


近藤、倉橋、井口、広中はそれぞれ白兵単体至近攻撃を行う。セリフは特になくうめき声のみであり、コミュニケーションは不可能である。リアクションは回避を行う。


全てのエネミーの戦闘不能後(春日恭二は逃亡するが)バックトラックを行う。



【エンディングフェイズ】

・シーン9:マスターレイス マスター

どこともつかない暗い部屋。窓から入ってくる光には色がついており、ステンドグラスをはめ込んだものだと分かる。部屋には長身の片メガネの男、アルフレッド・J・コードウェルがたたずんでいる。

傍らにはレリア・ジュリーが控えている。クライマックスフェイズ終了までにPCの誰も廃工場のキャンディの在庫を抑えていなかった場合、レリアの足元にはキャンディの箱が山と積まれているだろう。

コードウェル博士の視線の先にはボロボロになった白いスーツの男、春日恭二が4つん這いの状態でいた。


レリア:「…結果は歴然……私は意見を申しませんわ。お父様いかがいたしますか?」

コードウェル:「…………」

春日:「コードウェル博士、…も、もう一度チャンスを!わ、私にマスターレイスとなるチャンスを……」

レリア:「……ップ」


レリアの仏頂面が崩れ、僅かにだが噴き出す。


レリア:「あなたが、マスターレイスですって?FHの幹部にして、お父様の子を名乗るマスターレイスに?あなたが?」

コードウェル:「……弱きエージェントは必要ない……09、消せ。」

レリア:「はっ!」


コードウェル博士が静かな声でつぶやくと、マスターレイス09レリア・ジュリーの掌から放たれた光が、春日恭二を包み込んだ。悲鳴を上げる間もなく、彼は更にボロボロになったスーツだけを残して消滅してしまった。

今回の元凶が消え、PC達の前に非情なる敵の存在が示された所でシーンをカットする。




・シーン10:これが日常だったのだろうか PC②

合同エンディングとなる。主軸はPC②に置くが他のPCの登場を妨げるものではなく、また個別のエンディングを妨げるものでもない。GMはPLと話し合い、今後のキャラクターの進路を定めるとよいだろう。


PC②は普通の学校生活に戻った。バスケ部の練習にも出られるようになり、PC①も1度死んでしまったとは思えないほどに回復している。しかし、あなたは誰よりも痛感しているはずだ。自分をいじめていた4人近藤洸丞、倉橋光、井口大斗、広中ゆうたの痕跡はあの後、跡形もなく消えていた。名簿には空欄ができ、机は用務員室へと消えていった。サッカー部にはエースナンバーをつける学生はおらず、クラス写真からも彼らは消えている。UGNの玉野さんは記憶処理だと言っていたが、自分はとんでもない組織にいるのではないかと不安になる。

あなたは部活のために更衣室へと向かうそこには丁度、PC①、PC③、PC④がいた。彼らしかいなかった。ここで残りのPCにも登場を促す。

ここであなた達は、霧谷、椿、隼人の好きなエージェントと連絡を取ることができる。宣言したNPCがPC②の端末にテレビ電話をかけてくれるだろう。

彼らの話は、あなたの不安の全てを取り除くことはできないだろう。

オーヴァードの存在が公表されれば、世間はパニックになり疑心暗鬼になった人間のジャーム化や魔女裁判のようなオーヴァード狩りが起こり、人類とオーヴァードの戦争が起こってしまうだろうから。その種族のラインを踏み越えてしまったあなた達はもう戻れない。世界のバランスをギリギリのところで守っているUGNに参加するのもいいだろう。全てを夢だったことにして、オーヴァードであることを受け入れなくてもいいだろう。でも、あなたには5人ものこんなに身近な仲間がいることそれだけは決して忘れないで欲しい。3人のエージェントは異口同音にそう口にするだろう。

PC達には出来ればこのセッションが終わるまでに、この後もUGNイリーガルを続ける、UGNエージェントの訓練を受ける、オーヴァードのことを忘れるの選択をしてほしいが、時間がかかるPCがいるのならば、次回セッションまでの宿題として、考える時間を貰うのも一つの方法だろう。

新たなオーヴァード達の歩みは今始まったばかりだ…



To be continue...




経験点配布

・クライマックスフェイズにおいて全てのエネミーを倒した…10点

・キャンディの在庫の奪取を阻止した…2点

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