Judge Myself外伝【とある支部長の任務記録】

@parkour0620

第0話:荒巻隼人、正月を迎える。

あの事件が終わって一、二週間ほどが経った。事後処理やら何やらが終わり、卒業まで約三か月を切った頃。そう、正月である。

この期間は学校が休みになるから遊び放題!……というわけにもいかず、俺と誠司の二人は折角の休みだというのに冴塚支部に呼び出されていた。

俺も誠司も当然のごとく徹夜しているから眠い、とにかく眠い。

え?オーヴァードだから体力はあるだろって?……うるさい、眠いものは眠いのだ。

そんなこんなで今、誠司と二人で文句を言いながら支部に向かっている。


「あー、めんどくさいな。ったく……人遣いの荒い支部長だ」


「ふぁあ……。流石にオーヴァードになっても眠いものは眠いよね、別に倒れるわけじゃないけどさ」


「大丈夫か?もし辛いんなら休んでもいいんだぞ?」


「いや……でもやる事って支部の片づけでしょ? それくらいなら……ふぁあ……大丈夫だよ……うん……」


「普通に眠そうじゃねえかよ、行くならシャキッとしとかないと支部長なり茉莉に殴られるぞ」


「大丈夫大丈夫……とと、ふらふらながらについたね。案外家から近いのが救いだね」


「さーて、少し遅刻か?まあ今更怒られることもないだろ」


そんな事を言いながら扉を開ける。

そこにはいつも通りの風景が広がってると思いいきや……


「……なんだ、これ」


そこにはしめ縄、高そうな陶器、干支、獅子舞、凧などなど……沢山の正月アイテムが転がっていた。断じて飾られているわけではない、転がっている。


「お、あけましておめでとう。誠司、隼人。年始早々からすまないな」


「あけましておめでとうございます、支部長さん。いつもお世話になってますし、このくらい!楽勝ですよ!」


「誠司は元気だな~~~、俺的には謝るくらいなら呼ぶなって感じだが?」


「そう言うな、隼人は誠司を見習え、サイレン撃つぞ」


「こんな場所でサイレンなんて打つバカがいるか、店ごと吹っ飛ぶわ。」


「まあまあ、せっかくの正月なんだし。隼人もゆっくり片付けしようよ~~~」


二人が騒いで、誠司が苦笑しながらなだめる。そんないつも通りの事をしていたところに、掃除をしていたのかMKN-003こと、 三枝 茉莉がやってきた。

……いつもに比べてだいぶご機嫌だが一体どうしたというのだろう。


「ふんふんふ~~ん♪ふんふふ~~ん♪ふ~~~ん♪」


俺たちが来たことに気付いているのか、それとも敢えて無視をしているのか。

……あの顔は多分気付いてるな、何であんなにご機嫌なのかはわからないが無視は良くないな、こちらから仕掛けるとするか。


「……どうした、随分ご機嫌みたいだが。恵莉に新しい物でも買ってもらったのか?」


「あ、あけましておめでとう、隼人。そうです、この前ワタシに似合う振袖を買ってもらったんですよ!」


やけにドヤ顔で言うものだから反応に困ってしまう。こいつ、そんな感情も持ってんのか……?そもそも拡張パーツの中に振袖くらいありそうなものなんだけどな。


「ま、まあそういう事なら良かったな。三が日超えた辺りで初詣行くか……流石に今日は嫌だぞ、人混みがエグイ」

「あ、ついでにあけおめ。今年もよろしくな、茉莉。」


「初詣ですか、行ったことは無いので楽しみですね……今日はお掃除で忙しいので明日にでも行きましょうか?」


「そうしようか、2日でも大分混んでるもんなんだけどな……」


「せっかくだし、みんなで行こうよ。僕らも借りるか買うかしないとね、そういう……振袖?的なの。」


「あ、誠司も来てたのですね、あけましておめでとうございます。」


「あけましておめでと、今年もよろしく!」


「はい、よろしくお願いします♪……ところで、先ほどの発言には疑問があるのですが」


「ん?なんだい?」


「貴方はモルフェウスでしょう?……だったら着物を作るのも、それこそ本格的な物を作るのでさえ、一瞬で出来てしまうのではないでしょうか……?」


「え?どうなんだろ……今日の仕事がひと段落したら試してみようかな?」



こんな感じで新年の挨拶を終えたところで思い思いに年末やっていたことを喋り始める。

ちなみに俺は年末誠司の家で過ごしたので、酒が飲めなかった。……酒が飲めない年越しなんて味気ないなんてものじゃなかった、いや、正確には去年も飲んでないが……なんか物足りなかったんだよなあ。

来年からはここ(支部)で年越しを迎えるよう、そうしよう。

そんなこんなで雑談をしていたら恵莉が会話を切り上げて話し始める。


「さーて、四人そろって思い出話は色々あるだろうが……片付けと飾りつけ、始めるか。」


「「はーい!」」

「……飾りつけはまだしも何で片付けは終わらせてねえんだ、ズボラかよ。」

「サイレン」「許せ」


茉莉と誠司は元気な返事をする中、俺だけは文句を垂れ流していたりする。(脅しには屈した)


「とりあえず私の部屋は私がやるから、お前らは情報室、居間、娯楽室、応接室、キッチン、トイレ、風呂、ベランダ、庭の掃除を頼む。……隼人、お前の部屋は自分でやれよ。」


ニヤニヤした顔をしながら恵莉が言ってきた、エロ本でも置いてあるとでも思ってんのかこいつは。


「言われなくても年越し前にやってるわ、恵莉と一緒にすんな。……それで、どうする?水回りの掃除とかは茉莉が得意そうだから頼んでいいか?」


「お任せください!私はメイドロボットですからね!」


「僕はどうすればいい?力仕事なら任せてよ!」


袖をまくり上げた誠司がやる気マンマンに言ってくる、お前眠気はどうした。


「そーだな、ならベランダと庭頼むわ。倉庫とかあるしそこの整理もよろしく。」


「りょーかい!」


「俺は他全部かな……あ、恵莉。娯楽室と表のバーの掃除は頼むぞ?」


「おう、任せろ。わざわざ汚していったりはしないさ。何せ私の帰る場所はここだからな」


そう言った恵莉の言葉はどこか寂しそうに見えた。……気のせいだろうけどな、この頭ハッピー太郎に寂しいなんて感情があるはずがない。どうせ衝動も覚醒も大したことないだろ。


「ああ、そうだ隼人。」


「あ?なんだ?サボりの相談か?」


「いや、今日の仕事……ってか掃除が終わったらついてきてほしい場所があるんだが?」


……?またスイパラか?などと思っていた俺に投げられた場所は想定外の場所だった。

恵莉はニッと笑って


「UGN日本支部だよ」


「……は?」


荒巻隼人の、新たな一ページが開こうとしていた。

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