いとしのemily
「お待たせしました……」
遅れて入ってきた女の子を見て、俺は思わず声を上げてしまった、
「お麻理!」
驚いた理由は他にもあった、あの時間に厳しい彼女が遅れて来るなんて……
「プール用のコンタクトとかの支度に手間取っちゃって……
本当にごめんなさい!」
お麻理が申し訳なさそうな顔で遅れた事を謝罪する、
「大丈夫だよ、麻理恵お姉ちゃん、女の子の準備に時間が掛かるのは当然だし、
特に水着で人前に出る時はいっそう念入りになるからね」
天音が助け船を出す、
「ねっ、弥生ちゃんもそうだったしね」
突然振られた弥生ちゃんが慌てて答える、
「天音ちゃん! それも秘密にしてって約束したのに……」
そのやり取りに一同和やかな雰囲気に包まれた、
良かった、お麻理も笑顔になってくれた……
「僕が麻理恵お姉ちゃんにも声を掛けたんだよ、
いつも猪野家を応援してくれている、影の功労者だからね」
そうか、天音も理解してくれていたんだな……
お麻理は直接、歴史研究会の活動には参加した事は無いが、
中学時代から引きこもっていた俺を、辛抱強く毎朝誘いに来てくれたり、
高校に入学してからも、隣で見守ってくれていたお陰で、
立ち直るきっかけになったんだ……
「お麻理、来てくれてありがとな、」
「べ、別に、宣人の為に来たわけじゃないからね!
私は天音ちゃんに誘われたから、ちょっと顔を出してもイイかな、なんて……」
お麻理が急に慌て出す、いつもの調子が戻って来たようだ。
「麻理得お姉ちゃん、念入りに準備してきたのが、バレバレだよ、
パーカーの隙間から可愛い水着が、チラチラ見えているし……」
天音の鋭いツッコミに、お麻理がタジタジになるのが分かる
お麻理は長めのパーカーを水着の上に羽織っており、半透明ではあるが、
身につけている水着は完全には見えない……
「麻理恵お姉ちゃん、ゴメンね……」
「えっ! 天音ちゃん いきなり何するの?」
天音が思いがけない行動に出る、お麻理のパーカーを
器用な動作で後ろから、一気に剥ぎ取った、
お麻理の水着姿が露わになる、
一瞬、何が起こったか、理解出来ていないお麻理よりも
俺は思わず見とれてしまい、間抜けな顔をしていたはずだ……
「こうでもしないと、きっとパーカーを脱がないままで
麻理恵おねえちゃんが帰っちゃいそうだったから……」
天音が申し訳なさそうに、お麻理に謝る、
お麻理の水着はトップスに白いクロスショルダーのビキニ、
胸元の下から背中にかけてクロスバンドのデザインが
只でさえ大きな胸を強調する、
アンダーは華やかな花柄のサイドストリングスのショーツタイプが
セクシーだ……
「わっ! おっぱいおっきい、憧れちゃうな……」
花井香菜ちゃんが無邪気な感想を洩らす、
「これ、実はパットで盛ってるだけだよ……」
お麻理が恥ずかしがりながらも、お姉さんらしい返しをする。
女の子同士だと結構楽しそうだな……
「さて、全員揃いましたので、歴史研究会定例お茶会を始めましょう!」
真菜先輩の号令と共に席に着く、
楽しい一日の始まりだ!
浮かれたその時の俺には、全く気がついていなかったんだ、
お麻理とのやり取りを、遠巻きに見ていた弥生ちゃんの悲しそうな表情に……
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