あきの虫

 一日中、虫の鳴くのが聞こえるの。くるくる、ころころ、訴えかけて。

 眠ってばかりいるくせに、起きてしまうと眠れない。たっぷり続いた夜の後に、しつこくしがみついた覚醒。そこから力尽きて眠りに落ちるのは、今も外で仰向けに転がるセミの死体を思わせる。

 良くないってこと、わかっているのよ。

 夜が好きだと言いながら、穏やかな午後に憧れもする。静かに迎える朝に見惚れて。

 セミの声が絶えた後には、秋の虫が代わりに入った。暗い部屋で眠り続けた昼の後、明かりを灯して起き続けた夜の後、代わりに空きの虫が腹で鳴く。

 菓子で宥めて黙らせてみても、またじきに泣き出す虫の扱いにほとほと困っている。

 いい加減、この不真面目な暮らしにも疲れてきたの。

 飽きた様子の彼女の腹で、また不満げに虫が鳴くから私はケーキを半分譲った。

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