あきの虫
一日中、虫の鳴くのが聞こえるの。くるくる、ころころ、訴えかけて。
眠ってばかりいるくせに、起きてしまうと眠れない。たっぷり続いた夜の後に、しつこくしがみついた覚醒。そこから力尽きて眠りに落ちるのは、今も外で仰向けに転がるセミの死体を思わせる。
良くないってこと、わかっているのよ。
夜が好きだと言いながら、穏やかな午後に憧れもする。静かに迎える朝に見惚れて。
セミの声が絶えた後には、秋の虫が代わりに入った。暗い部屋で眠り続けた昼の後、明かりを灯して起き続けた夜の後、代わりに空きの虫が腹で鳴く。
菓子で宥めて黙らせてみても、またじきに泣き出す虫の扱いにほとほと困っている。
いい加減、この不真面目な暮らしにも疲れてきたの。
飽きた様子の彼女の腹で、また不満げに虫が鳴くから私はケーキを半分譲った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます