第16話 8月14日 ②

 威勢よく決意したところで、外は雹に竜巻に時々雷だった。家から学校までは、歩いて一時間弱、自転車で約三十分、バスや車だと十五分といったところだが、とてもじゃないが、いつもの登校のように自転車を走らせていくわけにはいかないし、傘をさして歩いていこうにも、庭に積もった雹の粒の大きさを見ると、傘を優に突き破りそうだった。

 ネットでバスの運行情報について検索すると、全て運休となっていた。なんでもまた信号のトラブルが発生しているらしく、事故の危険があるからとのことだ。

徒歩、自転車、バスがダメとなると、残るは車しかない。だが俺はまだ免許を持っていないし、両親に運転を頼もうにも、こんな天候の中学校に連れて行って欲しいなどと頼んだら、受験勉強の疲れで頭が変になったと思われるだろう。

どうする……。

 フライパンを頭に被って徒歩で行くか、降ってくる雹を器用に避けながら自転車で行くか、信号機が直るのを待ってバスで行くか、それとも無免許運転で行くか。

 どれも現実的ではないが、車の数が少ない今、無免許であっても車で行くのが一番安全かもしれない。

 バレたら後で父さんにこっ酷く叱られそうだが、この非常時には仕方がない。それにこれは世界を救うためなのだ。やるしかないのだ。

 俺はこっそりと一階へ降りていき、玄関に置かれた車のキーを取った。エンジンの掛け方や走らせ方は分かる。ただ問題は、この悪天候で無事運転できるかだった。信号も止まっているとのことだし、警察官が交差点で信号旗を降ってくれていそうにもない。

 何の前触れもなく、突然リビングから流れていたテレビの音が消えた。

 停電だ。

スマホの電波も確認したが、圏外となっている。

 いよいよまずいことになってきたな……。

 外からの風のせいで重くなっている玄関を力いっぱい開けると、家の中に押し寄せるように風が入り込んだ。両親が風の音に気付かないよう急いで外に出ると、自分から閉まろうとする扉を制御しながら音が立たないようゆっくり閉めた。

 目の前の景色は灰色だった。風や雹や雷の音が絶えず聞こえてくるのに、なぜか静かな気がした。人がいないからだろうか。これは、リアクターを拾いに行った時のグラウンドの静けさに似ていた。音はしているはずなのに、妙な静けさがある。

 近所の悪ガキが面白がって氷を大量に投げつけているかのように雹が降っている。どこからともなく次々と氷がやってきては地面に衝突していく。

 向かいの家は車を車庫に入れていないのだが、その車のフロントガラスにはヒビが入っている。

 これは怒られるだけじゃ済まないかもな……。

 半笑いでそう思いながら、車へと乗り込んだ。エンジンを掛ける音が聞かれないか心配したが、これだけバチバチと雹の当たる音がしている中では大して聞こえなっただろう。

 チェンジレバーをDのドライブに入れ、アクセルを踏むと、ぐっと前進した。車庫の屋根から飛び出たボンネットの上で雹が跳ね始める。次々と降ってくるためよく見えないが、おそらく表面がぼこぼこと凹んでいると思われた。

 構うものかと再度アクセルを踏み込むと、またぐっと体に圧力が掛かり、車が完全に露出した。前からも天井からも後ろからもバチバチと雹の当たる音がする。車の上手な運転方法を検索しようにももうネットには繋がらないため、俺はゲームセンターのカーレースゲームの要領で発進した。


 フロントガラスに当たってくる雹は、ガラスに大量のヒビを入れていき、ワイパーの根本を攻撃し動きをカクつかせ、ただでさえ運転が不慣れな俺からクリアな視界までをも奪っていった。

 けれど案の定、道は人類が滅んだ後のように空いていて、そんな道路の交通整理をしようとする警察官もいなかった。

 あまり気にすることのなかったバックミラーを見ると、ビルとビルの合間に小さくどす黒い渦巻きが見えた。おそらく竜巻だ。あのビルよりもさらに向こうとなると、距離は遠いが、こっちに移動してこないとも限らない。

 一刻を争う事態なのだ。

 サイレンの音が聞こえてきて、消防車と救急車が俺の脇を走り去って行った。

 雹の粒が大きくなり、雷の聞こえる回数が増えてきた。風の強さも増しているようで、車体が左右に持って行かれそうになることがある。

 T字路を左へ曲がると、目の前に正門が見えてきた。けれど門が閉まっていて、左右の門はチェーンで繋がれていた。

 だが俺は車を加速させた。映画なんかではよく鎖に繋がれたゲートを車で強行突破するシーンがあるが、それをやるつもりだ。うちの高校の門が引き戸じゃなくて助かった。もしそうだったこんな方法は絶対に取れないもんな。

 いや、そうじゃなくてもこんな方法試すべきじゃないか?

 そう思った頃にはもう門は目の前で、考え直す暇もないまま車は正門を……突き破った!

 喜ぶのも束の間、正門を抜けた先には天使が空へ羽ばたこうとする銅像が見えてきて、激突を避けるため俺は全力でハンドルを右にきった。銅像の台座にぶつかって左のサイドミラーが吹っ飛ぶ音がした。ブレーキを思いっきり踏み込む。シートベルトが体にガツンと食い込み、思わず「うっ」と呻いたが、車はタイヤを軋ませて、止まった。

 猛スピードで追ってくる悪の組織をギリギリで振り切ったかのような気持ちでしばらく呆然としていると、ボンネットの隙間から嫌な煙が上がっているのが見えた。

 さすがに無理しすぎただろうか。

 校舎の明かりは全て消えていて、職員室も消えているのを確認すると、俺はもう一度アクセルをゆっくり踏み込み、車体を昇降口の前まで移動させた。ここまで来て雹に頭を打たれるのはごめんだ。

 チェンジレバーを元あったPへと切り替え、俺は逃げ込むように校舎へと入った。

 薄暗い靴箱は、裏路地のコインロッカーのような不気味さを醸し出していた。自分の靴箱から上靴を取り出し地面に放ると、靴裏と床が上手い具合に当たって、パーンと音を立てた。一種の銃声のようにも聞こえたそれは、空間を怯えさせたのか、校舎内が一層静かになったように感じた。

 靴音が自分のものしかないことを確認しながら、部室棟へと向かう。暗い廊下が俺の中の不安を増長させるので、電気を点けようとも考えたが、誰かに見つかるのも面倒なのでやめた。

 我がSF研究部の部室、二十三号室の前まで来ると、俺はノックを三回ほどして中にいるであろう人に呼び掛けた。

「おーい、リアクター。君に話があってきた。鍵を開けてくれないか?」

 しばしの静寂。それから中でかすかに物音がした。

 けれど鍵の開く音がしない。既に開いているのかと思いドアに手を掛けるが、鍵は掛かっていた。

「おーい、リアクターさーん。聞こえてますかー? 俺だよ、藤ヶ谷蒼馬だよ。話があるんだ。開けてくれ」

 しばらくの間があった後、ようやくガチャリと音がした。

 ドアを開けると、会うのは三度目となるリアクターが立っていた。前回会った時と同じく、着ている服はうちの高校のものだった。しかしまたしても変化があった。

 それは、背中の下の方、ちょうどスカートを履いている腰の位置辺りから見覚えのある紐が出ていたのだ。それはコンセントのコードだった。いや、本当は壁に取り付けられてる方がコンセントというらしいので、正しくはプラグだ。プラグのコードだ。

 まあ名称はともかくとして、彼女は時代遅れのロボットみたいに背中からコードを生やしていた。

「そ、それは……?」

 もしかしたらこれまで隠していた、彼女にとって誰にも知られたくないことだったかもしれないのに、俺は何の遠慮もなく聞いてしまった。

「これはコード」

 そんなことは知っている。聞きたいのは理由だ。俺が目でそう訴えかけると、

「充電していた」と彼女は答えた。

「充電? なんで?」

「役割を果たすため」

 役割? それってつまり……

「メモリーが直ったってことか?」

「そう」

「じゃあ、その役割っていうのは?」

 リアクターは、ノリの軽いイケメンの言葉を吟味する女子のような目で俺をじっと見た。

「なぜそれをあなたに?」

「俺はこの後この世界がどうなるか知ってる。その情報と交換しよう」

 いや、待て。彼女は未来人だ。ということはこの後起こる事も知っていて、俺と情報を交換する価値はないのではないか? 

いやでも、それだとタイムパラドックスが起きる。

 彼女はこうして未来から来ているのに、あと五時間後には世界が滅ぶはずがない。

「分かった。教える。どのみちあなたに何を話したところで今後に影響はない」

 リアクターは素っ気なく言った。

 俺が何をしていても関係ないと。それは俺達が死ぬからか? もしやリアクターは真空崩壊にも耐えられる構造をしているのか?

 そんな考えを頭で巡らしていると、彼女はなんの前置きも無しに語り始めた。

「私はリアクター。西暦でいうところの2997年から来た。その時代では、人間は肉体の縛りからも精神の縛りかも開放され、無限の可能性世界に生きている。しかし、無限の可能性が行き着く先は、無だった。そして無からビッグバンが起き、宇宙が再創造された。私たち人類はその繰り返しを、もう867億9216万5521回繰り返していることになっている。リアクターは無限の可能性にない可能性を探るために過去に送られ、未来をリアクトする装置」

 今まで彼女の語るSFチックな話が分かりやすかったことなどないが、今回のは飛び抜けて理解に苦しんだ。無限の可能性ってなんだ? 繰り返してる?

 意味が分からない。

 突っ込む気力も奪われて俺はその場に立ち尽くした。

「あなたの情報は?」

 リアクターは何食わぬ顔で、当然といった態度で言った。 

 彼女は俺が理解できないのを知って、わざとあんな言い方をしているのではないだろうか?

「おいおい、ちょっと待て。俺はなんも分かってない」

「そう……。そこをどいて。充電する」

 彼女は淡々と言葉を発し俺をどかすと、背中のコードを掃除機のように引っ張り出し、その先をコンセントに差し込んだ。

 随分と現代的な充電をするものだ。

「この時代にはこれしかないから」

 その口調は、田舎に行ってコンビニが無いと嘆く都会人のようだった。

「君が2997年から来たのは分かった。けどなぜ来たのかの理由が分からない」

「それよりもあなたの情報が先。粗方予想はついてるから」

 あぁ、そうかい。やっぱり未来人様はなんでもお見通しらしい。

「あと五時間後の七時半過ぎ、この世界が真空崩壊とやらで滅んでしまう。君だったらそれを回避する何らかの方法を知ってると思ってここに来た」

 俺は手短に説明した。

「そう」

 そう言って、彼女は黙り込んだ。

「おい、知ってるのか? 知らないのか? 君は前に、カメラを使った方法じゃ未来は変えられないと言った。でも、別の方法なら変えられるんじゃないのか?」

 真剣に訴えた。リアクターが真空崩壊の影響を受けないのであれば興味がないのも頷けるが、こっちには全人類の命が掛かっている。

「知っている。そして、私が役割を果たすことと、真空崩壊を防ぐことは同義」

 同義? どういうことだ……。一石二鳥で一挙両得の、そんな上手い話でこの世界は救えてしまうのか?

「リアクターは、過去のある四次元座標上に打ち込まれ、そこから先の未来を無かったことにする装置。可能性世界でタイムトラベルをすることは可能だが、それは自己認識の範疇を超えない。リアクターは可能性世界の外側で本来の世界の過去を変えることができる。けれど、あなたたちの考えるタイムマシンやトラベルの方法ではタイムパラドックスを避けられない。そこでリアクター。過去に打ち込まれた時点で未来を消去すれば矛盾を極限まで小さくできる」

 さっきよりは大分分かりやすくなった。つまり、リアクターを過去のどこかの時点に打って、そこから世界をもう一度やり直すということだ。未来を無かったことにするわけだから、たしかに矛盾は起きないかもしれない。

「つまり、君はリアクターで、未来から未来を無かったことにするためにやってきたから、その役割を果たせば真空崩壊は起きないと?」

「そう」

 リアクターはそう言いながら体育座りで床に座った。

「それで充電を?」

「そう」

「その充電は、あとどれくらいで終わるんだ?」

「三時間」

 なら真空崩壊まである程度余裕はあるわけだ。

「そんな少ない電力で未来は変えられちゃうんだな」

「これは燃料を取りに行くための燃料」

「取りに行くって、ガソリンとかか?」

 彼女は俺に冷たい視線を送ると、

「反物質」

 と答えた。

 反物質くらい、俺だって知っている。だてにSF研究部の部長を務めているわけじゃない。反物質というのは素粒子の電化などが全て逆の性質を持つ物質のことだ。宇宙ができた頃には物質と同じ数あったと考えられているが、なぜか今ではほとんど存在せず、また、物質と衝突すると対消滅を引き起こし、質量がエネルギーになる。そのエネルギー量とエネルギー効率は凄まじく、反物質を使った推進機関はSF作品でも度々顔を出す。

「でも反物質なんてどこから……。まさか粒子加速器を使うんじゃ……」

「雷雲から」

 なるほど。よく分からないが、とりあえず彼女が言うには今現在、空に腐るほどある雷雲の中に反物質があるらしい。それを取りに行くというのだから、今充電している電力で空でも飛ぶのだろう。

 けれどこれでひとまず安心だ。まだ話の三割も理解できていないが、リアクターの充電が完了し、反物質を回収したら、彼女は確定した未来を無かったことにしてくれるのだから。

「でも、なんで君はメモリーが破損してたり、すぐに役割を果たせなくなってたの?」

「正常に発射されなかったためと考えられる」

「正常って?」

「四次元座標の計算が間違っていた可能性がある。前回のリアクターの座標点より未来方向へ発射してしまったため、時空の歪みに巻き込まれた」

 はあ? 前回? リアクターみたいなとんでも装置が何度も過去に打ち込まれてるってことか?

「前回ってなんだ」

「前に説明したとおり、リアクターが過去に打ち込まれた時、その四次元座標上に干渉点を作ってしまう。そこから発生する時空境界線の継ぎ目を脅かすと、このような事態が発生する。そのため、一度境界線を作った後、もう一度リアクターを打ち込む場合は、その境界線より過去方向の座標に打ち込み、継ぎ目を消さなければならない。けれど私の場合、計算を誤り、前回の境界線より未来方向に打ち込まれてしまった。その結果、時空の歪みに巻き込まれ、装置を故障させた」

 巻紙でイメージすると分かりやすいかもしれない。巻紙に一本ピンを刺すと、そこに穴ができ、その穴を中心に破れが起きる。そこより更に紙の端に近い方へもう一本ピンを刺してしまうと、その部分がバラバラに破れてしまうので、もう一度ピンを刺したい場合は、紙を束から引き出して、そこに打て、ということだろう。未来は無かったことにするのだから、紙の端がどう破れようと関係ないわけだ。

 でも、巻紙に用紙の限界があるように、この世界にも限界がある。この宇宙が出来てから約137億年というが、途方もない時間に思えてもいつかは終わりが来る。

 もしかして、それで何度も繰り返しているっていうのか?

「そのやり方だといつか終わりが来る。そうしたらどうするんだ?」

「人類の行く末、無まで到達し、またビッグバンからやり直す。文明レベルがリアクターを作れるほど進歩したら、また限界まで打ち込む。その繰り返し」

「その繰り返しを何億回も?」

「867億9216万5521回」

 俺は当たったことはないが、宝くじで超高額当選をしてしまった時の気分とはこんな感じなのだろうか。足が地面についていないというか、与えられた情報が己のキャパを遥かに凌駕してしまっている。

 867億9千2百……うんたら回。リアクターはそう言った。

 宇宙が137億年で、それを867億回繰り返したら…………、とてもじゃないがスマホの電卓アプリでは計算しきれない。筆算なんてする気もおきない。

 バカか? 誰が? 俺か? 

 こんなぶっ飛んでて馬鹿げた話があるもんか。けど、ここ最近馬鹿げたことが起き過ぎて、完全に否定することもできない。

「か、回数はいいとして、その無ってのが分からない。どういう意味だ?」

「私達の時代では、人間、あなた達の考える人間とは少し定義が違うかもしれないが、人間一人一人が自己の認識世界で生きている。認識の可能性は無限大であるため、私達はその世界を無限の可能性世界と呼ぶ。呼ぶ、というのはあくまでこの時代の人間に説明するための表現であり、私たちの時代では言語でもってものを認識することはない。意識したものがそれだから」

 なんだか哲学的というか、量子力学的というか、分かるようで分からない話だ。

「その無限の可能性世界では自己の認識一つで全てのことを実現できるが、そんな極限の知的存在となった人類の行く末は、無の実現。全ての人間が無を自己の認識世界の中で実現させていき、この宇宙が、『無』という意識が『ある』という状態で埋められた時、ビッグバン前の状況と酷似した宇宙は再びビッグバンを起こす」

 またしても意味不明ではあるが、かろうじて理解できたのは、未来人は認識でビッグバン前の宇宙と同じ状態を作り出してしまい、宇宙を再創造して、ループしてしまうということだ。

「そのループから抜け出すためにリアクターを打ち込んでいるってことか?」

「そう」

 言語を利用しないってことは、あのRe:Acterの文字も未来人的センスのデザインが何かなのかもしれない。俺達がヒエログリフを模様として使うのと同じように。

「だけど、なんでもできるんだったら、そのなんでもできる未来であれこれ試してみればいいんじゃないか?」

「全てを試すことをできたことにした結果の答えが『無』。この結末は避けられない」

「じゃあ、元からそういう繰り返しをすることになっていたんじゃないのか?」

 俺がそう言うと、リアクターはキッと俺の方を睨んだ。その目には光の反射せいかもしれないが、薄っすら涙が見えた気がした。

「じゃあ、あなたは悔しくないの?」

 その言葉には、彼女これまでの言葉には無かったものが込められていた。感情だ。

 終始冷静に話をしていたリアクターが、初めて人間らしさを見せた瞬間だった。

「全てを実現するほど進化した人類が、結局はループして、また最初から。そんな未来で、悔しくはない?」

「悔しいって……、俺は君の言った話をまだ完全に理解できたわけでもないし、そんなこと言われても……」

「そう……」 

 リアクターは再び感情を落とした。

「でも、現代人の俺にはよく分かんないけどさ、未来を変えようって必死になれるのは凄いと思う。無限の可能性にない可能性だっけ? それってつまり、円周率にも載ってないってことだよな。そんな可能性があるのかなんて分かんないけど、俺は君たちのやってることを応援するよ」

 そう言った俺に、リアクターが何か伝えようとしたのか口を開き掛けた時、東京タワーぐらいの花瓶を割ったような雷鳴が轟いた。小さな地震かと思うほどの地鳴りが止み、俺はどこへ落ちたのか確認するように窓の外を見た。

「止まった」

「あぁ、止まった。全くどこに落ちたんだ」

「違う。電気が」

「えっ……」

 慌てて部室の蛍光灯のスイッチに駆け寄って、二、三度パチパチしたが、電気は点かない。リアクターは無表情で俺を見つめていた。そんな目で見られても、この場で頼りになるのはお前のほうじゃないのか。

「止まったって、やばいんじゃないのか? まだ充電は終わってないんだろ」

「まだ」

「そんな……」

 ここまできて、停電のせいで全てが崩れ去ってしまうのか。普段の停電なら少しすれば回復するが、この天気に加え、今は世界滅亡数時間前だ。そんなやわな停電とも思えない。

 どうする……。

「た、たしか発電機が学校のどこかにあったはずだけど……」

 あるとしたら災害時の備蓄を保管している倉庫だが、倉庫に入る鍵がないし、倉庫の鍵がある職員室の鍵もない。

「おそらく発電機では間に合わない」

 と言われても、電気が復旧するのを待っている余裕もない。

「万策尽きたか……」

 納品日に間に合わないことを悟ったアニメ会社の制作のようなセリフを吐くと、また雷が落ちた。今度もすぐ近くのようで、空間を割くようなその音は、部室の窓を震わせた。

 バック・トゥ・ザ・フューチャーではバッテリー切れで未来に帰れなくなったが、リアクターは過去に戻れなくなっている。俺はリアクターの燃料がゴミでないことを恨んだ。

 いや待てよ。バック・トゥ・ザ・フューチャーでは、どうやって未来に帰った……?

 電撃が走るように俺の頭に妙案が浮かんだ。

「なあリアクター、君って雷耐えられる?」


 A棟の屋上に向かって部室を後にした俺達だったが、廊下に響く足音は一人分だった。というのも、リアクターのバッテリーを少しでも温存するために俺が背中でおんぶしていくことを提案したからだった。見た目は一般的な女子高生のため、ある程度の重さは覚悟していたのだが、彼女の体重は正八面体の重さと同じだった。こういうのを質量保存の法則というんだっけ。

 彼女が嘘のように軽いのと同じように、俺はさっき聞いた話を未だに完全には信じきれていなかった。リアクターという存在自体は揺るぎないものだし、そのオーバーテクノロジー振りも疑いようのないものだが、未来が云々、人類がかんぬんみたいな話にはそれなりの説得力があっても、根拠がない。諒太ならばこんな時に冷静に話を分析するのだろうが、俺にはそこまでの頭も時間もない。

できるとしたら、聞いたことを自分なりに整理することだ。

 人類が進化に進化を重ね到達点まで行くと、なんでもできるようになり、なんでもできるがあまり「無」という状態を作ってしまう。それを全人類が行うと宇宙が無となり、再びビッグバンが起こるという。確かに最新の研究では、宇宙は「無」から生まれたとされていて、その場合の「無」は哲学的な何も無いという状況ではなく、+と-が打ち消し合っているような状態だという。だとすれば、リアクターの言った、「無」を作り出している意識が「ある」という状態は、たしかにビッグバンの起きる前の宇宙と近いのかもしれない。

 その「無」からのビッグバンによって宇宙が再想像されるというループを抜け出すために、別の未来になるように数撃ちゃ当たるの精神で過去に打たれているのがリアクター。

 リアクターは打ち込まれた時間から先の未来をなかったことにするというが、もし本当にそんなことができるのなら、たしかにタイムパラドックスは起きにくいかもしれない。

 だけど今回のように、リアクターがやってきた未来があるにも関わらず、真空崩壊が起きる未来がカメラに映るというパラドックスが起きることもあるわけで……。あぁ、そういう矛盾があるから真空崩壊が起こりそうになっているのか。

いや、それは違う。真空崩壊が起きるから矛盾が出るわけであって、決してその逆ではないはずだ。

 だとしたら真空崩壊の原因はなんだ?

「なあリアクター」

 俺は首を右斜め後ろに向けながら言った。

「今回真空崩壊が起きることになった原因ってのはなんなんだ?」

「次のリアクターが打ち込まれたこと」

「次のって、またリアクターが未来からやって来たってことか?」

「やって来ている。真空崩壊の起きる時間は、私と次のリアクターが相互干渉する瞬間」

「時空を通り過ぎる時に反応し合うってことか?」

「イメージとしては合っている」

 耳の側で響く女子の声は、相手が得体の知れない未来人であっても俺の心を高揚させた。

「なんでまた次のリアクターを? 君が正常に発動してないことを未来の人は知らないのか?」

「知らない」

「それはどうして」

「緊急時の自動送信メールが正常に送信できなかったから」

 停電の次の日、部室のパソコンに届いていたあの謎のメールか……。

「そのメールを今から未来に送ることはできないのか? 修理は終わったんだろ」

「これ以上未来に干渉することは好ましくない。真空崩壊を早めるだけ」

「そうか……」

 俺はそう言って空のリュックのように軽い彼女を背負い直す。

「因みに、君の前に打ち込まれたリアクターっていうのは、いつに打つこまれたものなんだ? 君はそれよりも過去に打ち込まれるはずだったんだろ? あ、四次元座標とかじゃなくて、普通に何月何日の何時でいいからな」

「七月三十一日の午後八時」

 七月三十一日って……花火大会の日じゃないか。

「じゃあ今向かってきているっていう次のリアクターはいつに打ち込まれる予定なんだ?」

「おそらく七月三十一日の午後七時五十分。私が五十五分の予定だったから」

「リアクターは五分刻みに打ち込まれるのか?」

「一般的には」

 ということは、137億年で5分だとして…………うん、やめよう。ただでさえ頭がパンクしそうなのに、これ以上負荷をかけるべきではない。

「通り過ぎた時に真空崩壊が起きるっていうのはどういう理屈なんだ? もし俺に分かるように説明できるならしてほしい」

「次のリアクターがこの時間軸上を通る時、私を自動的に起動してしまうため、境界線より未来方向でのリアクトが起き、真空崩壊が起こる」

「それを考えたら、打ち込む座標を間違えても、故障して正常に作動しなかったことはせめてもの救いってことか」

「そう」

 部室棟の一階から連絡通路を通りA棟へと抜け、西側の階段を三階分上ると、誰が持ってきたのか分からない机や椅子の置かれた踊り場に出る。うちの高校は一応屋上が開放されているのだが、案外昼休みに弁当を持って屋上へ上がる人は少なく、逆にこの踊り場のほうが人気らしい。先客がいる時は使わないという暗黙の了解の元、南高生の秘密基地となっている。

 リアクターを下ろし、屋上への扉の前に置かれた机をどかしていると、雹のことを思い出した。

 そもそも俺達が屋上に来たのは、この高校の避雷針がA棟の屋上にあるからで、それに触れていれば雷を充電できると考えたからだ。もちろん避雷針にどれだけしがみついったって雷が降ってくれる保障はないが、短時間で電力を補充するならこれが一番だろう。

ただ避雷針は、屋上に出て左手のはしごを上って、さらにもう一度はしごを上ったところにあり、この雹の中そんなことをしていたら全身打撲では済まないかもしれない。

「つ、机か椅子で頭を守りながら行くか?」

 それを聞いたリアクターの顔を見て、俺は間抜けな声で間抜けな提案をしたなと後悔した。

「雹なら、電磁バリアで防げる」

 バッテリーがないのにそんな名前からして電気を消費しそうなことをしていいのかと思ったが、本人のことは本人が一番良く分かっているのだろう。

「行こう」

 特にこれといった掛け声もなくバリアは張られていたらしい。扉を開け外に出ると、雹が降ってきているのは見えるが、それらは俺達の周囲にある半球状の陽炎のような揺らぎに当たると消えていった。ものすごい風の音や雷の音が聞こえるはずなのだが、バリアによって音も弾かれているらしく外の音はなにも聞こえない。

 大きなガラスボウルに入って進んでいるような感覚で屋上を横切り、リアクターが先にはしごへ手を掛けた。

「ちょっと待って。俺が先に」

 そう言って彼女の前に割り込むとはしごを握った。いくら未来から来た超人類とは云え、スカートを覗かれるのが嬉しいはずはないだろう。

 鉄は真冬を思わせるほど冷えていた。

 どうやら電磁バリアは自由にその大きさを変えられるらしく、半球状の揺らぎはさっきよりも大きくなっていた。ただその分電力は消費しているはずで、俺は手早くはしごを上った。

 俺のすぐ後にリアクターも上ってきたので、また次のはしごに手を掛け、上る。雨で冷やされ滑りやすくなったはしごは、手全体に緊張感を持たせ、変なくすぐったさを生じさせる。ふと下を見ると、校舎四階分プラスアルファの高さに足が震えた。

 垂直にかけられたはしごは脚立なんかと違い、思いのほか上りにくく、避雷針の設置場所まで上った時には、手に力が入らなくなっていた。

 避雷針を近くで見るのは初めてだったが、想像していたよりも長く、大きなシャーペンのようだった。少し手で触ってみたい気もしたが、いつ雷が落ちるか分からないから怖くてやめた。

「なぜあなたまで」とリアクターが言った。

「なんでって、提案したのは俺だし、君一人じゃ心配だから」

 実際のところ、現代人の俺と未来人のリアクターでは立場が違う気もするのだが、バッテリーが切れてしまったら全てが終わってしまうため、その点では心配だ。

「そう」

 そう言ってリアクターは西の方の空を見た。夏だし、まだ日は落ちていないはずなのだが、空全体に暗幕を張る雲のせいでかなり薄暗かった。彼女はしばらくその方向を見つめた後、避雷針へと向き直り、右手の手のひらを支柱に押し付けた。

 その姿は、天から与えられし力を受け取る天使のようだった。

「ここは危険」

 リアクターは呟くように言った。それは知っている。なぜなら彼女の立っているすぐ脇の看板に「危険 立入禁止」と書いてあるからだ。

「うん。だけど、こうなったのは全部俺のせいなんじゃないかって思うから」

「どうして」

「君を見つけて、カメラを使って、いろんな未来を見て、そういう過程全部が最初から決まっていたのかどうかなんて分からないけど、なんとなくそういう気がするんだ」

「あなたのせいじゃない」

「だけど……」

「私が未来からここに来るまでに通ってきた時空に影響を及ぼし、さらにこの時間軸に不時着したせい」

 リアクターは俺に背を向けたまま言った。

「だから、それを全てリアクトする」

 そう言った彼女の背中は、どこか寂しそうだった。

 その言葉に返す言葉が見つからず、その後、俺達は黙って避雷針に雷が落ちるのを待った。

 

よくよく考えれば、無事リアクターが過去に打ち込まれてしまえば、この夏のことは全て無かったことになってしまうのだ。関東での大停電も、千尋と姫ちゃんの水着を見たことも、炎天下のなか諒太とグラウンドを這いつくばったことも、リアクターと会ったことも、カメラを使って競馬を当てたことも、模試の答えを見たことも、千尋の返事を聞こうとしたことも、全部無かったことになるのだ。

 良いことも悪いことも、楽しかった思い出も悲しい記憶も、全てなかったことに……。

 誰も覚えてない。俺も、部活のみんなも、世界中の人も、未来人も宇宙人も覚えてない。

 リアクターとの出会いによってもたらされたこの夏の出来事は、本当に消えてしまうのだ。

 こんなことなら、もっとリアクターと話しておけばよかった。飛び立ったらなにもかも忘れてしまうとしても、せめてこの時代を立つ前まではいい思い出を持っていてもらいたかった。

 未来からリアクターが次々と打ち込まれてくるのなら、無かったことになっている毎日が山のようにあるのだろう。どれだけ素晴らしい出来事であっても、一瞬のうちに無かったことにされてしまっているのだろう。

 しかも、それが何百億回と繰り返されてるんだ。この世界がパソコンのようにレジストリを貯めているとしたら、きっともうガタがきてもおかしくない。リアクターの座標計算が間違った理由は分からないけど、もしかしたらそういうことが原因なのかもしれない。

 すると、これから起きようとしている真空崩壊は、もしかしたら未来人達の求めている選択肢ではないだろうか。彼女は自分の役目を全うしつつ、俺達現代人を救おうとしてくれているが、本当はなにもしないことこそが正解なのではないか。

「なあリアクター」

 ここに来て二時間近くが経った頃、俺は背を向けたままのリアクターに向かって言った。屋上という場所、背中を向ける彼女、長い沈黙、そんなシチュエーションだけを考えてしまうと、この状況はまるで愛の告白のようだった。

 いや、ある意味告白かもしれない。

「考えたんだけど、このまま真空崩壊が起きるのを待つっていうのは、君の求める未来をもたらすんじゃないかな」

 リアクターは聞こえない振りをするかのように黙っていた。電磁バリアで外の音が一切聞こえない状況でそんなことをしても無駄なのに。

「なあ、どうなんだよ」

 向こうの空で稲妻が走った。その光がやけに眩しく感じたのでふと周りを見渡すと、街中が真っ暗なのに気付いた。暗かったのは空が曇っているせいだけでなく、街の明かりが全て消えてしまったいるからでもあったのだ。

「それは違う」

 リアクターはそう言うと、手は避雷針に触れたまま振り返った。

「それは可能性の一つでしかない」

「ならなぜ、君たちはそこまで真空崩壊を避けようとするんだ。リアクターを打つ時間をこだわったり、時空の境界線とかを気にしたり……。それっておかしくないか」

「人間を信じているから」

 そう彼女は言った。

「真空崩壊ではなにも変わらない。変えられるのは人間だけ」

 また稲妻が見えた。今度はさっきより近い。

「でも人間にも無理だったんだろ。何回も何回も試したんだろ」

 俺がそう叫んだ時、リアクターの触れている避雷針に雷が落ちた。電撃は柱を通り、リアクターの身体へと流れ込む。けれどその状況の中、彼女は俺への返事として何かを伝えようと口を動かした。

 しかしその声は、半球状のバリアを二つに分けるように内側に張られた新しいバリアによって弾かれてしまっていた。きっと雷が俺の方まで流れるのを防ぐためなのだろう。

 針の先に引っ付いていた稲妻が消えると、リアクターの手が避雷針から静かに離れ、彼女はその場に倒れた――

 刹那、周囲の陽炎が消え、大量の雹が降り注ぎ、風が吹き始め、雷鳴が耳に飛び込ん

でくる。

電磁バリアが消えたのだ。

俺は狂ったように降る雹から頭を守るように手を頭上で広げながら、リアクターへと駆け寄った。着ていたパーカーを素早く脱ぎ、両手でそれをテントのように掲げた。

「リアクター、おい、大丈夫か?」

 呼び掛けに反応する様子はなく、彼女は頭と両腕を体の左側にだらりと垂らしていた。俺は左腕をL字にしてパーカーを支えながら、右手でリアクターを揺すった。

「おい。おい。聞こえてるか?」

 返事がない。リアクターは死んだかのようにその場に倒れたままだった。

 そんな……。リアクターは雷に耐えられるんじゃ……。

 俺が聞いた時、彼女はなんて言った?


「なあリアクター、君って雷耐えられる?」

「そうする」


「そうする」という言葉を、耐雷モードへ移行するか何かだと理解したが、考えてみればリアクターは理解不能な話こそすれど、いまいち噛み合わない返事をする奴ではない。

 あの言葉には別の意味があったっていうのか……。

「おい、リアクター! 目を覚ましてくれよ。君が起きてくれなきゃ、全部が終わっちまうんだ!」

 俺は、我が儘を聞いてもらえなくておもちゃを振り回す子供のようにリアクターを揺すった。左腕に掛けていたパーカーはいつの間にか風に飛ばされたようで、全身に殴られているような痛みを感じながら。

 けれど、彼女は目を覚まさなかった。しかしそのまま揺すり続けると、身体全体がぼんやりと光り始め、その眩しさに一瞬目を瞑った瞬間、リアクターは元の正八面体へと戻っていた。

 なんで……。なんでだよ……。

無理なら無理って言えよ……、馬鹿野郎。

 全部ダメなのかよ。世界の最期がこんなんでいいのかよ。

 人間ならできるんじゃないのかよ。真空崩壊が起きたってまた繰り返すだけなんだろ。

 だったら無駄かもしんないけど、人間の未来を次に繋がなくちゃならないだろ。

 こんな空の下で、虚しく世界が終わるのをただ黙ってみてるだけなのかよ。

 母さんも父さんも、千尋も姫ちゃんも諒太も、クラスの奴も学校のみんなも、街の人も、日本国民も、世界中の人も、どっかにいるかもしれない宇宙人も、みんな死んじゃうんだぞ。

 これでおしまいかよ。

 俺は何かにすがるような気持ちで空を見上げた。それは神様かもしれないし、仏様かもしれない、未来人かもしれないし、まだ見ぬ超文明を持った宇宙人かもしれない。とにかく誰かが何かが助けてくれることを祈った。もう祈るしかなかった。

 ここまでやったんだ……。


 その時、後方の空からジェット機のような何かが飛んできた。灰色の雲を切り開いていくように飛ぶそれは、空に一筋の光を描いていった。

 見えたのは一瞬だった。幻のようにも感じられた。

 あれは一体……。そう考えた時、俺ははっと気付いた。


 リアクターだ。


 次のリアクターだ。彼女の次に未来から飛んできていたというリアクターだ。

 彼女は言った。真空崩壊の起きる原因は、次に飛んでくるリアクターが自分を自動的に起動させてしまうからだと。だから彼女は、自分を雷によって破壊することで、起動するのを防いだんだ。

 彼女は初めから雷に自分が耐えられないことを知っていたんだ。それで敢えて自分を破壊することを選んだ。よく考えれば分かることだった。もし雷で充電できるなら、部室のコンセントを使ったりしてないはずだ。

 俺はリアクターの切り裂いた雲の割れ目から差し込むわずかな太陽の光に大きな希望を感じた。この世界は、リアクターが命を落として俺達に繋いでくれた未来だ。

 必死に生きなきゃならない。未来が怖いなんて言っている場合ではない。

 だって失敗したって、リアクターが俺達の知らないうちにやり直させてくれているのかもしれないのだから。

 毎日がスタートなのかもしれない。朝起きたその瞬間は、明日の失敗を無かったことにして戻ってきた今日なのかもしれない。

 どうせやり直すのだから頑張る意味なんてないという人もいるだろう。

だけど俺はそうは思わない。

やり直せるんだから頑張る。頑張って失敗しても、知らないうちにやり直してるかもしれない。失敗したことも覚えてはいないけど、前回とは違う可能性を選択できるかもしれない。リアクターも人類の進化の到達点を変えるためにやり直してるんだ。

 リアクターは言っていた。人間を信じているって。

 大切なのは信じることなのかもしれない。自分を信じること。

 未来は誰も知らないし分からない。でもそれと同じくらい俺達は過去について知らないし、分かろうとしてないのかもしれない。過去を知ることは自分を信じることにも繋がるのにもかかわらず。

 自分を信じて、自信を持てば、未来なんて知らなくてもいいのかもしれない。

 そんなふうに、思えた――

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