第13話 8月12日

 八月十二日は、昨日にも増して雨と風が強くなった。空は真っ黒で、昼間だというのに薄暗かった。時折どこかで雷の鳴る音がして、俺は子供のようにその音に恐怖した。雷事態が怖いというよりは、天候の悪化が怖かった。それだけ真空崩壊に近づいているということだからだ。

 テレビには地震があった時のようなL字のテロップが常に表示され、各地の避難勧告や交通状況を報じている。父さんも母さんも仕事場から自宅待機の連絡があったらしく、うちにいた。母さんは慌てた様子で防災グッズを準備したり、備蓄していた食料や水の確認をしている。父さんは部屋に篭っていつもの休日のように趣味でもやっているのだろう。

 首相が官邸内の危機管理センターに入り、官僚や関係省庁幹部を指揮し、既に竜巻被害や土砂崩れ、停電が起きている地域へ自衛隊、警察、消防の派遣を増強させていた。

このスーパーセルは日本を中心に起こっているが、低気圧の動きをみると今日中には世界中でスーパーセルが観測されることになるらしく、アメリカの研究チームが発生予想地域を発表していた。

 人類滅亡を描いたSF映画が一時期流行ったが、まさしくその映画のようだった。

 この状況が、じゃない。

結末が、だ――

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