僕は目を閉じていた

心臓が血液を送っている

筋肉が軋んでいる

耳の中で繊毛が揺れている

僕が窓を指で撫でた


隣で君が寝ている

後ろのトランクの荷物が車の揺れで揺さぶられている

前の席であなたがエナジードリンクを飲みげっぷをした

運転席で彼がハンドルを切った


窓を叩いていた雨は今はもう乾いている

バイクが窓の外を通り抜けた

歩道を誰かが歩いている

前の車が小さくクラクションを鳴らした


僕が窓を開き風が舞い込んだ

街路樹が揺れている

犬がキャワンと鳴きそれに応えてカラスがカアと鳴いた

踏切を電車が通り過ぎている

またひとつカアと鳴いた


祭囃子が街を練り歩いている

どこかのライブハウスが超満員になっている

街宣車が道行く人々に声をかけている

長い長い貨物列車が街を縦断していく


花火が上がる

雷が落ちる

飛行機が雲の上を飛ぶ

地球の表面を風がうねり

地中ではマグマが地上を見上げている


僕が目を開けると

その全ては消え

ただ黒くて太い

まつ毛だけが映った

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