第3話


 読み終わった世夜は目をぱっちくりとさせて呟いていた

「何で野菜一つでこんなネガティブになってんだこいつら」

その呟きには呆れの色が色濃く現れ、なにしてんだこいつらとつぶやている。

「仕方ないんです」

それに答える何かの顔は笑っており、軽く答える。

「妖怪が住み着いていますから」

「妖怪ってこんなことしてどうすんだよ

「こうすることで画面向こうの相手を弱らし生気を奪っていくんです。そしてどんどん弱らしていき最終的には食います」

「食べるのか!」

「はい、食べます。パックリと頭から魂を。肉体は最近の妖怪には不味いから食べないんですけど。昔はおいしかったらしいんですけど……。最近はガスやらなんやらが溜まって不味くなったとか。それに妖怪の思考事態が代わったらしくて。これも現代かに対向したことによる変化ですかね」

「いや、別にそんな話はどうでもいいんだけどよ……。妖怪の進化録とかあんま今日みねえしよ。そうか。妖怪は人間を食べるのか」

「はい。食べます。ちなみに妖怪に魂を食べられた人間は廃人になり穏やかに死んでいきます。大体五日がぐらいですかね」

「へぇ」

「それを阻止するために妖怪退治をするわけです。というわけではい。何か書き込んでください。明るくなるよう2ですよ」

「何を」

「なんでもいいからはい。はやくしないとデータを消去しますよ」

「やらせていただきます」


62 名無しの野菜嫌い

野菜食べないぐらいで大袈裟過ぎだろ




世夜が打ち込んだのはそんな言葉だった。ぶっちゃけこれ以外思い当たらなかった。たかだか野菜が嫌いなだけ。まあ、書き込みを見ていたらいい大人がとは思うけどそんな人たちだっているだろう。ニートだって○ちゃんの中にはたくさんいるのだ。そんな深く呆れるべきではない。それでも野菜を食べないだけで人生の負け犬などなんと鼓舞したらいいのか全くわからない。

そんな世夜の目の前で文字が打ち込まれていく







63 名無しの野菜嫌い

食べないぐらいじゃないんだよ!

食べないってのは酷いことなんだ!


64 名無しの野菜嫌い

そうだ! そうだ!

食べなきゃ成長しないんだぞ!


65 名無しの野菜嫌い

そうだ! 俺なんて四十代になって今だ148なんだぞ!


66 名無しの野菜嫌い

うふ……


67 名無しの野菜嫌い

おぉ……


68 名無しの野菜嫌い

がんば……




ちなみに俺は178

ただし外にでないし野菜食べないからへにゃへにゃのへにゃへにゃ。日の外に出ると一時間で倒れる


69 名無しの野菜嫌い

こっちもおぉ……


70 名無しの野菜嫌い

やっぱ野菜食べないとこうなる


71 名無しの野菜嫌い

野菜嫌いの運命


72 名無しの野菜嫌い

嫌いなことが多いからな


73 名無しの野菜嫌い

野菜嫌いは苦手を克服できない

だからすぐに挫折する


74 名無しの野菜嫌い

これからも挫折する


75 名無しの野菜嫌い

人と食べにいけない


76 名無しの野菜嫌い

上にいけない


77 名無しの野菜嫌い

外にいけない


78 名無しの野菜嫌い

野菜嫌いは


79 名無しの野菜嫌い

人生の


80 名無しの野菜嫌い

負け犬


81 名無しの野菜嫌い

78~80 じゅうこーん!


82 名無しの野菜嫌い

はぁ~


83 名無しの野菜嫌い

これだからもてないんだ……


84 名無しの野菜嫌い

そっか……


85 名無しの野菜嫌い

だから彼女いない歴=年齢なのか


86 名無しの野菜嫌い

そうだわ


87 名無しの野菜嫌い

彼女はいるけど野菜食べれないからご飯食べにいけなくて不満持たれてる……


88 名無しの野菜嫌い

爆発しろ~とか言いたかったけど可哀想に


89 名無しの野菜嫌い

俺も似たようなもんだ


俺の場合もう結婚しようって感じなのに野菜食べれないからなんか結婚生活が不安で俺が彼女にプロポーズできない。待っているみたいで最近は少し苛々してる。あってもそれとなく結婚の話をされて……。好きだけど疲れる


90 名無しの野菜嫌い

うわぁ……。プロポーズ待ちとかマジやば


91 名無しの野菜嫌い

このままそのままでいたら破局するパターン


92 名無しの野菜嫌い

もう秒読みだったり


93 名無しの野菜嫌い

かわいそす


94 名無しの89

言うなああああ!

俺も考えないようにしてんだああ!


95 名無しの野菜嫌い

強く生きろよ


96 名無しの野菜嫌い

しかし! 89だけの問題ではないのだ!

このスレの人間みんないつかそうなるかもしくは……



彼女すらできない


97 名無しの野菜嫌い

うわぁああああああ!


98 名無しの野菜嫌い

ぎゃああああああ!


99 名無しの野菜嫌い

のぅうううううう!


100 名無しの野菜嫌い

こ、これ、が野菜嫌いの末路か……


101 名無しの野菜嫌い

か、悲しい……


102 名無しの野菜嫌い

いきる気がなくなる……


103 名無しの野菜嫌い

一生家のなかでももういいもんね







「おい。これどうすんだ」

「どうにかしてください」

「どうにかってどうやって!」

「さあ? あいにく人間を元気にすることばを私は知りません」

「俺も知らねえよ! ニートに人間を励ますことができると思うな!」

「まあ、頑張ってください」

「俺の話聞いてんのか!! チクショ! やってやら! 伊達にニートやってたわけじゃないんだ! ニートが釣れる言葉ぐらいなら分かるんだよ!

 …………………………………………………………多分!」




104 名無しの野菜嫌い

女にもてたいなら野菜を食うようになればいい!





いや、絶対そんなに簡単なことじゃないけどな。

そう思いながらも世夜は打ち込んだ。ニートとというか彼女いない非リア柔野郎にはこの台詞がなんとなく効くとかなんとかパソコンばかりを見続けたうちに分かっていた。







105 名無しの野菜嫌い

おお~!




ってそんなに簡単にいかないんだよ


106 名無しの野菜嫌い

そうか、その手が




なんて言えたら苦労しねえよ


107 名無しの野菜嫌い

それ言い!




で、野菜嫌いが直ったら人生らくだよな


108 名無しの野菜嫌い

人生なめるな


109 名無しの野菜嫌い

確かに女性にはもてたい! だが野菜は大嫌いなんだ!!


120 名無しの野菜嫌い

その通り! 野菜よ撲滅しろ!


121 名無しの野菜嫌い

野菜なんて、野菜なんて、嫌いだー!


122 名無しの野菜嫌い


そうだ。みんな恵みだ~




「いやだめだろ」

本気で呆れて世夜は画面をみた。なんというか呆れを通りこして滑稽にたどり着き、最後には憐れに行き着くスレである。野菜嫌いなだけでここまでとは……

「打ち込んだら」

さきの呟きにたいして何かがそう言うのに世夜は首を振っている。

「もう打ち込んでる」

「早いですね」

「ついな」




123 名無しの野菜嫌い

大丈夫じゃねえだろ……


124 名無しの野菜嫌い

大丈夫なんだよ! サプリメントさえあれば栄養素はなんとか吸収されるんだ!


125 名無しの野菜嫌い

そうだ!そうだ!

考えてもみろ人類が何故野菜なんかを作ったと思う。それは栄養をとるためだけなんだ! だから栄養をとれたら食べなくてもいいんだ!


126

その通り!

野菜は栄養のためにある!! あえて食べる必要なんかない!!


127 名無しの野菜嫌い

そうだ! 野菜を食べる必要はない


128 名無しの野菜嫌い

野菜すべてを破棄だ~!


129 名無しの野菜嫌い

人生負け犬でも生きてやる~!!

野菜は嫌いだー!


130 名無しの野菜嫌い

それでいいのか!?







「なに、打ち込んでるんです」

「いや、なんか思わずビックリして……こいつらなんか幸せもんだな」







131 名無しの野菜嫌い

いい!


132 名無しの野菜嫌い

野菜嫌いがどうしたー!

こうやって成長しとるわー!!


133 名無しの野菜嫌い

え? でも彼女や結婚の件はどうすんだ







「おい」

「はぁ! いかん不可思議すぎて……」







134 名無しの野菜嫌い

うっ!


135 名無しの野菜嫌い

グサ!


136 名無しの野菜嫌い

なんて奴だ。俺らの弱点をついてくるとは……



ゴホッ(吐血)


137 名無しの野菜嫌い

大丈夫か! まだ行ける!!



ドサッ(出欠多量)


138 名無しの野菜嫌い

うわぁああああああ!

しんじまう!!


139 名無しの野菜嫌い

俺はもう死にました……



はぁ~。別れるしかないのかな……。はぁっ


140 名無しの野菜嫌い

諦めるなああああ!



俺ももう無理かな(体育座り







「どうしてくれるんですか、これ」

「え、いや、すいません」

「どうにかしてください」

「はいっす」







141 名無しの野菜嫌い

いや、諦めんなよ、ホラ、野菜嫌いの好きってやつもいるかも?


う、うん。言えば受け入れてくれるさ







「無理でしょ」 さすがに私でもわかりますよ……。と妖怪である何かが呆れたようにつぶやくのに世夜の肩が小刻みに震えた。

「これしかねえんだよおおおお!」

 嘆くように怒鳴った世夜は、ニートに考えさせたって碌な言葉はでてこないのだあああああと心の中でも怒鳴っている。

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