第四百六十七話 三姉妹の絆編 その十五


「……」

「何を言うかと思えば、初さんではなく貴女を相手にしろと? 馬鹿な事を言わないで欲しいですの。初さんより弱そうな貴女に、私の相手など務まりませんわ!」

 

 逆にお前に私の相手は出来なそうな気もするけど。

 

「友達が喧嘩を売られてるんです。それなら私が引き受けたいんです」

「心美……お前には

「やらせてください! 昨日の恩返しだと思って、私に任せてください」

 

 いやいやいやお前じゃ仇で返す事になるだけだぞ……。

 

「面白いですわ……弱そうな貴女がどれだけ戦えるか見物ですわね」

「私は負けません!」

 

 そう言って二人は筐体の前に並ぶ。

 

「あ……」

「何ですの? 今更初さんに交代は

「初さん、百円ください」

 

 やっぱり変わるのはナシか?

 

「無しですわ」「なしです」

 

※※※

 

 一曲目。

 

「さあ……地獄の始まりですわよ! 初さん!」

 

 ホントだよ……。私がやれば美咲に絶対勝つのに……。

 

「負けられません……」

 

 無理だよ。

 

「……」

 

 江代は腕を組んで、冷静な顔で見ている。

 

「お前よく冷静だな」

「あやつの実力がどれ程か見ようかと思ってな。今の実力がどうであれ、もし光るものがあれば我が騎士団に加える事も考えようかとな」

「要するに?」

「弟子にしてやる事も考えなくない」

 

 多分その光るものはない筈だから格ゲーやりに行けば?

 

「〇拳はやった事無いのでな……」

 

 確かに鉄〇しかねえな……ここの格ゲー。

 

「〇撃FCとかやりてえな」

「アレは吾がキャラが分からん。キリ〇しか分からん」

 

 こいつゲームオタクだからラノベあんま読まねえけど、SAOだけは私と映画見た事あるからな。

 SA○のゲームも、ゲームシステムが好きでやってるらしいし。

 

「それより今は試合だ」

 

 もう絶対心美ゲームシステムを理解してねえだろ。

 

「ほら……」

 

 一曲目は敗北……。しかも初心者の癖に難易度鬼。

 こんなの勝てるわけがねえ。

 

「今からでも交代させてくれ……」

「まだ勝負はこれからです!」

「随分威勢が良いですわね。でも……叩き潰しますわ!」

 

 もう私のメンタルが叩き潰されたぞ。

 

「江代……光るものねえだろ」

「いや、そうでもないかも知れんぞ。途中から動きが違ったのだ」

「え?」

「まあ次を見てみろ。恐らくだが、次はあやつ勝てる」

 

 ……。

 

※※※

 

 二曲目。

 

「今回は私勝てますわね」

 

 二人とも難易度鬼を選択し二曲目。

 今のでゲームシステムを理解したとしても、勝てるのだろうか。

 

「いきます!」

 

 だが……。

 

「な……何ですって!」

 

 開始早々、美咲はおろか、私にも出来ない譜面を完璧に叩く。

 

「ゑ……」

「……ッ!」

 

 隣では江代が、笑うどころか驚いている。

 

「これは……吾の想像以上だ……」

 

※※※

 

 その後、美咲が三曲目と四曲目を選曲したが……全て心美が圧勝した。

 

「勝ちました……」

「どうして……どうしてですの……」

 

 絶望しきった表情の美咲。

 

「……ぐすん……ぐすん……」

 

 泣いてるけど助けねえからな。

 

「初さん」

 

 助けねえからな。

 

「助けて欲しいですの」

 

 助けねえからな?

 

 

「助けて欲しいですの」

 

 た・す・け・ね・え・か・ら・な?

 

※※※

 

「うう……今月の小遣い残り僅かですのに、何の服を買わせる気ですの?」

「そうだな……心美」

「はい」

「こいつは一応私の財布だから、ブランドもの買って良いぞ」

「貴女方には遠慮はないんですの!?」

 

 私達がお前と関わりたくねえって言ってるのに勝負を仕掛けるお前にこそそれを言いたい。

 特大ブーメランだと。

 

「ブランドもの……と言われても私には分かりません……」

「よしですわ……」

「私が教えるから大丈夫だ」

「余計な事すんなですわ!」

「いやダメだ。こいつちょっと世間知らずだから私達がこうして現実を教えてやらねえと」

「ダメですわ! こいつらなんかより私の方が現実を教えるのに適してますわ!」

「何教える気だ?」

「この世界は私の為のもので、心美さんは私の部下だって事ですわ」

「それこそ嘘じゃねえか!」

 

 何言ってんだこいつ……。

 

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