第四百七話 おまけ インフル中の夢 その三


「分かった……今やって欲しい事を思いついたぞ……」

「「「「?」」」」

 

 もうどうせ夢なんだろ?

 だったら……。

 

「寝かせろ……私を」

 

 ……。

 

「私をこの悪夢から救ってくれえええええええええええええッ!!」

 

 ここが夢なら、死ぬか何かすれば覚める筈だ。

 さっきは多分……気絶だからダメだったのだろう。

 とにかく、こんな精神衛生上悪い夢をもう見たくない。

 

「まず和泉」

「うん」

「私を包丁で何度か刺せ」

「ゑ?」

「良いから刺せ!」

「出来ないよ! 初ちゃん死んじゃやだ!」

 

 私は今すぐにでも死んで夢から離脱したいんだけどな。

 

「じゃあ良いよ……」

「ホントか?」

「もう良いもん! 初ちゃん死んだあとで私もそっちに行くから……」

 

 ひいいいいいいいいいいいいいッ!

 顔! 怖い!

 

「い……良いか!? 私は今伊〇誠でお前は西園〇世界だ! そう思って私を真剣に殺れ?」

「元ネタが分からないけど……やる!」

 

 そのまま和泉は包丁を手に駆けだす。

 

※※※

 

 何度か刺された……なのに……。

 

「痛くない……しかも死んでない……」

 

 腹から血は出てるのに……痛みを感じてない……。

 夢なのは確定だが……これは……。

 

「包丁で刺されたくらいじゃ足りねえって事か……」

 

 高熱の時は悪夢を見やすいって言うが、これは想像以上だ。

 他に何かないのか……。

 

「……あ」

 

 夢なのが確定してるなら、いっそ……。

 

「美咲!」

「なんですの?」

「私に抱きつけ! サイ〇イマンみたいに!」

 

 もう夢なのは確定なんだ。

 家ごと吹っ飛ばそう。

 

「ど、どうなっても知りませんわよ!」

「やれ!」

 

 美咲はスイッチを押した。

 

※※※

 

 ……。

 

「……生き残ったのは私とお前だけか……スタ子」

 

 本来なら内臓ごとはじけ飛んでてもおかしくない筈なのに……私はまだ生きている。

 まるで姉さんみたいに……。

 

「スタ子……」

「な……なんですか?」

「今頼れるのはお前しかいねえ。もうこの街ごと私を消し飛ばせ」

「は……初さん……」

 

 なんて奴だ……と言いたげに見てるけど。

 これ夢だからな。覚めなきゃ仕方ねえ。

 

「早くしろ……さもないと強制的に押すぞ」

「そ……それだけは……」

「ならやれ!」

 

 完全に悪人じゃねえか私。

 

「ど……どうなっても知りませんよ?」

「……」

 

 スタ子はそのまま……。

 

「はああああああああああああああああッ!」

 

 自身の全てを解き放った……。

 

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