第三百二十一話 江代の恋 その二


 良かった。

 本当に良かった。

 どうやら私が犯罪者の姉として全国に知れ渡る事は無さそうだ。

 

「それにしても、可愛い子だな」

 

 普段からカッコつけた表情をしている江代と並ぶ姿は、女顔だからか双子の姉妹のようにも見える。

 

「京極先輩には勝てねえけど」

 

 これ絶対。

 

「でもあの子……ちょっと顔色悪そうだなあ……」

 

 あまり健康そうな顔色には見えない。

 血が行き渡っていないというか……。

 

「まさかな」

 

 私は頭から離して、二人を尾行した。

 

※※※

 

 最初に向かったのは、異世界道具店……の珈琲屋の方だ。

 

「まあベタだけど良い判断だ」

 

 一般人にあの店は異空間との繋がりがあるなんて説明しても理解に苦しむだろうし。

 

「初ちゃん何してるの?」

 

 ぎくっ……。

 

「何しに来た……和泉」

「何って、初ちゃんがこそこそしてるから気になったんだよ」

 

 ストーカーされるストーカーとか笑えねえよ。

 

「先輩?」

「ちげえよ。江代に彼氏が出来たから、見守って欲しいんだとよ」

「ふえええ! 江代ちゃんに彼氏!?」

「やっぱりお前もそう思うよな……」

 

 あのショタロリコンにな。まあ私も二次元限定ならロリコンだけど。

 

「黒澤ル〇ィちゃんだっけ? が好きなんだよね」

「貧乳低身長は正義」

「私は?」

「二次元限定って言ったよな?」

 

 人の話聞いてます?

 

※※※

 

「関係ない話するけどよ……江代って最近何かと作者に好かれてるよな」

「そうなの?」

「おう」

 

 なろう時代は扱いづらいとか言われて登場回数あまりないのに、こっちだと何かと主役やる事多いし。

 

「それにあいつ、確か作者が書いてる〇トガの同人誌にもう一人の主役として出るらしいぜ」

「よく分かんないけど凄いね……」

 

 あともうひとキャラ出すかもとか言ってたけど……私だと良いな……。

 

 お前出ても俺とビジュアル被るからダメだ。By作者

 

「ぐっ……」

 

 てかそれはお前のビジュアルを私風にしたのがいけねえんだろ。

 大体男キャラなのに長髪って……。

 

 良いじゃねえか別に! By作者

 

 理想が女子の需要と逆方向だからお前はモテねえんだよ。

 

 あとで覚えてろ。By作者

 

 間違っても同人誌でかませキャラだけはやめてくれ。

 

 いや出さねえし。By作者

 

「てか私必殺技とかないから無理だわ」

 

 ス〇ブラごっこの技は無理矢理ない所から絞り出しただけだし。

 江代はパクリ技のレパートリーなら多いからなあ。

 

「誰か私と初ちゃんがイチャイチャする同人誌書いてくれないかなあ」

 

 無理。

 

「即答しないでよ~」

 

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