第二百三十五話 文化祭 その七


「着いた……着いたぞ」

 

『期限よりも早く、メロスは王城へ到着した』

 

「随分と早い帰還だな。約束通り、私と勝負する権利をやろう」

「頑張れメロスっち!」

 

『そしてバトルが始まる』

 

「我が衛兵よ! その厨二病を殺れ!」

「うおおおおッ!」

「喰らえ……ギガウィンド!」

 

 江代の木刀から、勢いよく風が放たれる。

 衛兵は勢いよく吹き飛ばされた。

 

「ぐあっ!」

「馬鹿め! 後ろにもいるぞ!」

「読んでおったわ! 回転斬りッ!」

 

 ゼ〇伝のリ〇クの如く、江代は回転する。

 

「ぬあっ!」

「あとは貴様だけだな……暴君ディオニス」

「お前……」

「どうする? 子供を吾に差し出すなら、貴様を許してやらなくもない」

 

 なんでお前が許す流れになってんだよ。

 

「ふふ……はははは……はははははははッ!!」

「何がおかしい?」

「お前は何も分かっていない。趣味嗜好も、そして……わしの真の力も!」

 

 ディオニス役の女子生徒を包むように、青いオーラの演出が始まる。

 一面が暗くなり、そして。

 

「これがわしの真の姿だ!」

 

 如何にもラスボスのような容貌の着ぐるみを着て、ディオニス役は剣を取る。

 

「それが……貴様の真の姿か。欲にまみれた貴様の内を、そのまま表したようだな」

 

 お前の欲も大体あんな感じだと思う。

 

「お前には分かるまい。わしの心が。子供が成長する事が無ければ、わしは可愛い幼子を永遠に愛せると言うのに。子供は成長し、そして大人になる。醜い大人にな!」

「違う。大人になっても、自分に甘えてくれる。そんな子供を、吾は愛している!」

「黙れッ! 黙れ黙れ黙れッ!!」

 

 これがもっとまともなら良いシーンになるんだけどな。

 

「吾の力を受けてみよ! 喰らえ! ワイドギガウィンド!!」

 

 いつもより広範囲のギガウィンドが、ディオニス目掛けて放たれる。

 

「小賢しい! ギガフレイム!」

 

 マッチの雨が、江代目掛けて降り注ぐ。

 

「ギガウィンドに比べてショボ過ぎる……」

 

 てかあれ……。

 

「ぬああああああああああああああああッ! あついッ! あついいいいいいいいッ!!」

「ふっ……それが貴様に捨てられた子供たちの心の痛みだ!」

 

 言ってる場合か!

 死ぬぞ! マジで!

 

「あれ大丈夫?」

 

 大丈夫じゃないです先輩。

 

「僕助けに

「ダメです! 自分を大切にしてください!」

 

 先輩の美しい顔が崩れたら嫌だ!

 

「うわああああああああああああああッ!」

「ふっ……あっけなかったな」

 

 もうどうにでもなれよ。

 

※※※

 

『暴君ディオニスを撃破し、江代は子供たちが捕らえられた牢屋へと向かった』

 

「大丈夫か!?」

「お、おねえちゃんだーれ?」

「吾は貴様らを助けにきた。もう心配ない。捨てられた子達も、皆吾が拾ってやる」

「おうさまは?」

「先程焼け死んだ」

「そ、そんなぁ……」

「大丈夫だ。吾が

「ばかぁ! なんでおうさまころしちゃうの!」

「ゑ?」

「おうさまはぼくたちをかわいがってくれたもん! それをころすおねえちゃんゆるさない! ころす! ころす!」

「ゑ?」

 

『グサリ!』

 

「どうしてだよぉお!!」

 

『勇者は、ショタに刺し殺された』

 

 やっと終わった。

 

「江代っち……早く助けてくれえ」

 

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