第百五十六話 藍田再び その三


「いらっしゃいませ~」

 

「……じー」

「……じー」

 

 私達に向けられていた目線の正体。

 それは……。

 

「私は見下されてて、藍田は変態だと思われてるな」

「この世界の女酷い奴しかいねえんだけど……」

「それは共感出来るわ」

 

 貧乳にやたら厳しいし。

 

「アンタが貧乳なのが悪いんでしょ。あと目つき悪いし」

 

 生まれ持ってのものを否定されるなんて残酷だ……。

 

「そうだな」

「お前は生まれ持ってのものじゃねえよ」

 

 それは逃げずに戦え。

 

「自分の中のモンスターに殺されそう」

「江代みたいな事言ってんじゃねえよ」

 

※※※

 

「これ可愛いわよね!」

「ふっ、吾はこれが良い」

「センスの欠片も無いわね」

「どうしてだよぉお……」

「前作者の友人がセンスのない扇子を持ってきてたらしいわ」

「ふっ……本当か?」

 

「あの二人は何しに来たの?」

「あいつらは元からそういう奴らだ」

 

 とは言え私もそこまでやる気は無いんだが……。

 

「バストサイズいくつ?」

「八十一」

 

 姉さんより一つ上か。うん……殺したい。

 

「イライラすると胸が縮むぞ」

「縮む胸もねえから怒ってんだよ察しろ!」

「はい……」

 

「あ、見て見て~。貧乳が変態に怒ってる~」

「ホントだ~。ダメな人同士気が合うのね」

 

 あーもうやだッ!

 初おうちに帰りたい!

 

※※※

 

「何の模様とか良いんだろ……」

「女子高生で模様付いてる奴着る人は限られてくるから、無地で良いと思うぞ。あとは色の好みがわかれば」

「緑かな」

 

 確かに緑髪だったな。

 

「緑のこれを」

「をい待て」

「なんだ初」

「右手に持ってるものは何だ?」

「マイクロビキニです! 近くに頃合いのものがあったので、つい!」

「テメエマイクロビキニ派か……」

「ゑ?」

「いい加減にしろ」

 

 マイクロビキニだとォ……?

 それを私に買うとしたら、私はそいつを許さねえ。

 余計貧乳なのがバレるだろうがァ……。

 

「いや、彼女とまだヤることやってなくて、せめてズリネタが欲しいなと」

「お前どこまでクズなんだよ!」

「彼女ズリネタにするだけだよ!?」

「とにかく普通のにしろ! 良いな?」

「へい……」

 

※※※

 

 何やかんやあって……。

 

「ありがとうございました」

 

「ふぅ~。良いのが買えた」

「そりゃどうも」

 

 私は複雑だわ。こいつが変態というのがこれで明らかになったし。

 

「藍田、マイクロビキニ派とはね」

「あれは私も驚いたぜ」

「ふっ、マイクロビキニ……」

「お前がした妄想は同人誌でやれな?」

「ふっ、そもそもこの作品で同人誌は書けまい」

「それもそうだな」

 

「じゃあ、渡してくる」

 

「おう」

 

※※※

 

 数日後。

 

「……」

「どうした……?」

「既に買ってあるから要らないって……」

「どんまい」

 

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