第七十六話 童貞医を救え! その一


 風邪を引いてしまった。

 しかも両親がいないこんな時にだ。

市販の薬も切れている。よって私は、重い身体に鞭打って病院に来ていた。


「けほっ……こほっ……」

 

 おい作者、わざわざここにせき込んでる台詞入れんなや。読者に尺稼ぎだと勘違いされるだろ。

 

「114514番の方どうぞ」

 

 私だ。てかどんだけ番号あるんだよ。

 

※※※

 

「うーん、こりゃ風邪だね」

「知ってた」

「ですよね」

 

 この会話どっかで聞いたな。

 

「取り敢えずこれから薬局行って風邪薬もらって下さい」

 

 うわマジかよめんどくせー。

 

「今めんどくせーとか思いました?」

「お前神なのか!?」

「いや、そう言えって言われた気がして」

「それうちの作者のせいだから、気にしなくて良いぞ」

「え、あ、はい」

 

 まったくあのアホは……。

 

「まあ取り敢えず、薬出しますね」

「はい」

 

※※※

 

「こちら処方箋になります」

「どーも」

 

 はあ……この後薬貰ったら家かあ。

 バイトにも行けないし、学校終わったらあいつら帰ってきてうるさくなるし、もう憂鬱だよ……。

 

「京極先輩に看病されたィィィィィィッ!」

 

 京極先輩にお粥をあーんとかされてえし、なでなでされてえし! ノリでベッドに押し倒してセ〇〇〇とかしたいィィィィィィッ!!

 

「あの、お客さん。考えてる事がうるさいので、お静かにしてもらえますか?」

 

 考えてる事がうるさいって何だ!?

 てかホントにモブキャラまで私の思考を読み始めたぞ!?

 

「あーあ、また誘えなかったなあ……」

 

 気だるい男の声。誰かに悩みを聞いてほしいと言わんばかりに悩んだ素振りを見せ、私の方に歩いてくる。

 

「ん、あれは」

 

 あれ、私の方に近付いてくるぞ。

 何に接近してるんだアレは。

 

「うおあっ!」

 

 え、あれ? 視界が塞がってる。ネクタイとワイシャツしか見えない。

 しかも何だか、ちょっと感じてる。すごく気持ちいい。

 

「……あれ?」

「……ん?」

 

「うぎゃあああああああああクソ貧乳のおっぱいぃぃぃィィィィィッ!」

 

 誰がクソ貧乳だ!

 

「てか、あれ? よく考えたら、断崖絶ぺ

「それ以上言うんじゃねえェェェェェッ!」

 

 ごりゅっ!

 

「あァァァァァァッ!! 俺の俺がァァァァァァァァッ!!」

 

※※※

 

「あーん♪」

「はあ……」

「ん? どうしたよ医者」

「藍田(あいだ)白(しろ)世(よ)って名前あるからそっちで呼んで……ってそうじゃなくて! お前確かこの作品のツッコミキャラで、しかも主人公だよな!? なんで俺の時だけお前が美味しい想いしてんの!?」

「はあ? そんなのテメエが私の胸揉んだからに決まってんだろ?」

「いやお前に胸なんてな

「その股間使えなくするぞクソ童貞」

「テメエも処女だろうがッ! てか俺の股間蹴り上げた罪は!?」

「そんなん私の胸揉めたんだから帳消しだ」

「あァんまりだァァァァァァッ!!」

 

 はあ……仕方ねえ。

 

「何でも言う事聞いてやるよ」

「え……今何でもって……」

「一応言うけど、七十七話と七十八話に出て来たあのバカのようなお願いはダメだからな?」

「いや、俺その話知らねえし」

「あとで読めカス」

「初登場なのに扱いが酷い……」

「初だけにか?」

「やかましいわ」

 

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