第四十九話 釣り その四


「……全然釣れねえ」

 

 釣りを開始して一時間以上が経過したが、三匹しか釣れない。

 姉さんと江代は、作戦を実行したらしいが……。

 

「姉さん、それはどういう作戦だ?」

「下着姿になって、魚の方から来てもらう作戦。あと餌はサーロイン」

「そんなんで釣れるか露出狂!」

「アンタに変態扱いされるのは、ちょっと変な感じね」

「はいはいまたどうせ『万年発情期処女の極み(レズ)ゴッド』とか言うんだろ?」

「ホモは帰りなさい」

「そっちかよッ! てか私は女だ!」

 

 随分前のネタ引っ張ってきたな……。

 

「処女の血を付着させた女神の果実でもダメか……」

 

 血付きの林檎を餌にしているらしい。

 

「お前の血が付いた林檎とか誰得だよ……。女の子の日のアレじゃねえだろうな?」

「馬鹿か、指先の血だ。お主じゃあるまいし、そんな事はせぬ」

「お前昔の事思い出させるなよッ!」

 

 中学三年の時に、偶然バレンタインとあの日が重なった時の話を今になってされるとは……。

 

「てかこれ……マズいだろ」

「この程度で十八禁に引っかかるとは思えないけどね」

「作者危ない橋渡らせすぎだろ……」

 

 ……。

 

「てか服着ろよ!」

「魚を釣る為なら恥を忍ぶようじゃダメなのだよワ〇ソンくん」

「誰が〇トソンだ!」

 

 こんな頭の悪いホームズ嫌だわ。

 

「下着の女ァッ! 犯させろォォォォォッ!」

 

 あ、変態が池から飛び出して……。

 

「街へお帰り」

 

※※※

 

 ボコボコにされた挙句、奴は逃げ出した。

 完全に失敗したな、あいつ。

 

「ふっ、人間共。昼の宴を始めよう」

「お、昼飯か?」

 

 うわぁ、江代の料理かぁ……。嫌な予感しかしない。

 まあ姉さんのよりはマシか。

 

「誰の料理が吐きそうな程マズいって?」

「心読むな! てかそこまで言ってねェッ!」

「ふっ……見たまえ」

 

 御開帳。

 まずは一段目。

 

「一段目から嫌な奴出て来たァァァァァァァァァァッ!」

「嫌な奴とは何たる言い草……。異形の肉だ。異形の肉」

「スーパーで絶対こんなもん買えねえだろ!?」

「店は……秘密だ」

 

 放送禁止レベルのグロさ……。こんなん誰が食べたいんだ?

 

「ん? 割とイケるわよ」

「ええええええええッ!!」

 

 姉さん、それは私を釣る為の罠じゃねえよな?

 いくら釣りに来てるからって、そんな釣りが私に通用するとでも……。

 

「ギャグのセンスなさ過ぎて草」

「そんなつもりで言ってねえ」

 

 これ美味いのか……?

 

「はむっ……」

 

 少ししょっぱい。だが……。

 

「あれ……これ意外と美味くね?」

 

 何と説明して良いか分からないが、イカの塩からに味が似ている。

 グロいもの程実は美味というのは、江代の謎料理にも当てはまるらしい。

 

「でも次は分かんねえな……」

「ふっ……次はこれで宴をしよう」

 

 二段目。形状はたこ焼きに似ているが……すげえ真っ黒。

 

「この真っ黒な集団は……?」

「……貴様はこれの元を知っているのではないか?」

「堕〇使の泪?」

「ご名答」

 

 割とやべえ奴じゃんこれ……。

 何だかよう分からん生地の中に、タバスコを大量に詰め込んだアレだろ……?

 

「うおああああああああああああッ!」

 

 姉さんでさえ悲鳴を上げる辛さらしい。

 私は辛い物大丈夫だが……。

 

「やべえ……超美味い……」

 

 何でだ!?

 変なものばっか使ってんのに、すごく美味え!

 

「あとでこれ作ってる店、連れてってくれ」

「良かろう」

 

 この世界がどうなったのか知っておく必要がありそうだ。

 

「三段目……吾が一番苦労した膳だ。喰らうが良い!」

 

 三段目はどうだ!

 

「ん?」

 

 三段目は、どうと言う事の無い普通のおにぎり。

 具が入っているわけではなく、塩むすびらしい。

 

「喰うが良い……」

「まあ、これまででお前の料理は大丈夫だって分かったし……いただきます!」

 

 味も普通。江代の料理にしては珍しい。

 

「ふっ……最高の味だろう? 魔戦士の塩むすび……そこには吾の汗から生成した塩が

「ぶゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

 

 はあ!?

 

「おまっ……なんちゅうもん喰わせてんだァァァァッ!」

「エリート塩って言うのがあってな」

「〇子さん!? 蛭〇さんなの!?」

「こういうのを『我々の業界ではご褒美』と言うのだろう?」

「お前の男ファンは喜んで食べそうだな……」

 

 うん、唾液か血にしな?

 

「初、これ全部食べといて?」

「私はゴミ処理係か何か!?」

 

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