第四十六話 釣り その一


「初、明日釣りに行くわよ」

「ボーリングで疲れ溜まってるから却下」

「ん? 殴られたい?」

「……和泉連れて行こうか」

 

※※※

 

 某カフェにて。

 

「え、釣りに行くの!?」

「ああ。姉さんがいきなり行きたいって言いだしてよ。私は疲れてるって言うのに……」

「行きたいな~」

「そうか?」

 

 正直あいつらと一緒に遊びたいと思う奴は、申し訳ないが頭がおかしい奴だと感じている。

 

「私は初ちゃんと一緒ならどこでも良いよ~?」

「……」

「どしたの?」

「もう一度今の台詞をどうぞ」

「え? 私は初ちゃんと一緒ならどこでも良いよ?」

「これ、二十話の加害者が言える台詞じゃないかも知れないけどさ……」

「二十話?」

「お前どうしたん? レズになる薬でも飲まされた?」

「ち、違うよ~! 私はただ、初ちゃんと一緒にいたら楽しいって言いたいの! その……えっちな意味じゃないんだよ」

「へーそーなんだー」

「信じてよ~」

「はいはい」

「も~」

 

 実際どうなんだか分からないから、この世界の登場人物って怖い。

 

「あ、今日初ちゃんの家に行って良い?」

「はあ!?」

「淀子ちゃん達とも話したいな!」

「いや、あのクソ姉共と会話したらお前までクソになるぞ!」

「初ちゃん? せっかく兄弟姉妹がいるんだから、大切にしてあげなよ?」

 

 兄弟姉妹を大切にする前に、まずあいつらが私を大切にしてほしい。

 

「自分から愛を与えなきゃダメなんだよ?」

「愛を与える前に、愛を引っこ抜かれてる感じだよ……」

 

 おかげであいつらの分までプリンを買わされる始末。

 

「ん~、ならどうしようも無いかなあ……」

「諦めんなよッ!」

 

 いや、まあ人生諦めが肝心とは言うけどさ……。

 

「とにかく、淀子ちゃんや江代ちゃんの事、大切にしてあげなきゃダメだよ?」

「丁重にお断りする」

 

 和泉が頬を膨らませるのをチラ見してから、私は涼しい顔でカタラーナを完食した。

 

※※※

 

「お~、ここが初ちゃんの家?」

「広い以外が自慢の、何もねえ家だけどな」

「お父さんとかお母さんはいないの?」

「……旅行中だ」

 

 まあお金は私のバイト代、江代の動画クリエイターとしての収入もあるから何とかなっている。姉さんがカツアゲしたお金? 何それ美味しいの?

 

「夕飯は私が作るから、気にしなくて良いぞ」

「私がやろっか?」

「和泉が?」

「うん。こう見えても料理得意なんだよ~?」

「マジか。任せても良い?」

「うん! 今日は泊まるんだし、その位やるよ~!」

「楽しみにしてるぜ」

 

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