第四十五話 江代とコンビニ店員の会話 ✝


 ……初めて吾に視点が回ってきたようだな。

 吾の名は浅井江代。闇の魔剣士……とでも呼ぶが良い。

 吾の使命はもう一つの闇の世界から現れし魔王を自らに封印し、この世界を支配する事。

 それまで吾は戦う。吾はその為に生まれてきた。

 

「……」

 

 今日はコンビニに来ている。ふっ……皆が吾に注目している。

 吾の力が強い証拠だな……。

 

「うわぁ……痛い人だ」「いや、でもあれ見た事ないか?」「江代令嬢にそっくりだな」

 

 ふっ……気持ちが良い。皆が吾を恐れている。人間の恐怖は吾にとって、力の源だからな。

 吸収せねば。

 

「はァァァァァァァァッ!!」

 

 ふっ……回収完了。あとはこの書物と食料を調達するのみ……。

 

※※※

 

「いらっしゃいませ! こちら温めますか?」

「おい貴様……」

「え、なんでしょうか?」

「吾が何者か知っているか?」

「あなたですか……? ああ! 江代令嬢さん!?」

「それは吾が持つ仮面の一つに過ぎん。吾の真の姿を、貴様は知らないだろう」

「え?」

「吾は闇の魔戦士。それだけはゆめゆめ忘れるなよ? 若造」

「は、はい。でも僕二十三なんだよなぁ……」

「吾は四百歳」

「嘘吐かないでくださいッ!」

 

 嘘などではない。吾の持つ身体は仮初のものに過ぎないのだから。

 

「それで、こちら温めますか?」

「ふっ……吾の魔術があれば炭に

「はい、温めますね」

 

 なぁんでだよぉッ!

 

「はい、温めましたよ」

「貴様、ちょっと良いか?」

「今度はなんですか?」

「鳥の揚げ物・灼熱地獄風を一つ」

「はあ!?」

「あるだろう? 鳥の揚げ物・灼熱地獄風」

「灼熱地獄……? ああ、スパイシーチキンですか!?」

「察しの悪い小僧だな……正解だ。早くしたまえ」

「は、はい!」

 

 手のかかる店員だな……こやつは。

 

「はい。八百円です」

「千円で頼む」

「二百円のお返しになります。ありがとうございました」

「待ちたまえ」

「え? まだ何か?」

「これもくれてやる」

「えっ……こんなに……良いんですか?」

「吾は闇の魔戦士と同時に、江代令嬢でもある。このくらいくれてやるさ」

「えっ……いや、しかし」

「受け取れよ」

 

 そのまま吾は去る。

 吾の闇の魔戦士。今日も戦い続ける。

 

※※※

 

初「今回私、初めて出番なし」

 

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