第二十六話 図書室

私がよく来る場所がある。それは図書室だ。

 図書室は良い空間だ。静かだし、基本的にここには私と和泉、学校の比較的まともな奴しか来ない。

 まあ本性は誰にも分からないが。

 しかし視線が痛い。しかも噂話が聞こえる。

 

「あの人ってさあ、最近噂の子だよね?」「あ、そうそう。確か二組の和泉って子を抱きしめた上にディープキスまでしたって言う」「うわっキモい」「そんな事よりおうどん食べたい」

 

 最後に至っては話に参加出来てねえ。

 

「あの人って名前なんだっけ?」

 

 噂なのに知らねえのかよ。

 

「うん、やっぱり面白い」

 

私が読んでいるのは『何故〇の』だ。最近カクヨムで有名になり、書籍化までしたというラブコメである。ステマじゃねえぞ。

何と言うか、ヒロインに親近感がある。

ヒロインの名前は『朝〇さん』というのだが、朝倉と言えばすぐに思い浮かぶのは、戦国大名の朝倉義景だ。

そして私の苗字は『浅井』。浅井朝倉と言えば祖父の代から同盟を組んでいた事で有名。

だからだろうか、何と言うか親近感がある。

それだけじゃない。学校一の美少女と呼ばれているが、実は貧乳だったり。私はスクールカースト最底辺だが、貧乳だからか嫌いになれない。

 

「なんか笑ってる」「私を抱こうとか思ってるんじゃない?」「うわっキモ」

 

「うるせえな黙っててくんない!?」

 

「あの……浅井さん。お静かにお願いします」

「すんません」

 

 じゃねーだろおおおおおおお!?

 いやいやいや、まずこいつら黙らせてくれてもいいじゃん!?

 

「あ、今度は怖い目つきになった」「何と言うかさ、あれどっかで見た事ない?」「いや、あんなブス顔の芸能人見た事ないよ」

 

 ……殺して良いか?

 

※※※

 

「あれ、初ちゃんここにいたんだ」

「おう和泉。何の用だ?」

「料理本借りようと思ってて……初ちゃんそれなーに?」

「あーこれ最近発売したラブコメ」

「初ちゃん本当にサブカルもの好きだね」

「これからの時代、サブカルものを作れるって重要な才能だからな。馬鹿に出来ないぞ?」

「よくわかんないけど、凄いね」

 

 マジか……AI普及したら、この世界ヤバいんだけどなあ。

 

「初ちゃんは頭良くて良いなあ……」

「馬鹿でも良い。出来れば普通のままでいてくれよ?」

「う、うん。よく分からないけど」

 

 うん、やっぱり図書室は良い。和泉とこうしてゆっくり話せるし、癒さ

 

「あ、和泉ちゃんがいる」「襲う気だぞあいつ」「よく見とくわよ」

 

 うるせえてめえらは失せろ。

 

「あ、あっち睨んできたぞ。怖いなあ」「和泉ちゃんだけに飽き足らず、私達まで襲う気!?」

 

 うるせえ違ぇって言ってんだろ!

 

「あ、こっち来そう」「逃げるわよ、犯されちゃう」

 

 もう勝手にしろ……。

 

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