炸裂!猫パンチ
澪と雫が城から逃げたことがバレて、追っ手が出発した。
そう薫子さんに聞いて、俺たちはどう対処するか話し合った。
「とりあえず果物採ってきたし、軽く食べながら話そう」
「ありがとう、いただきます」
「いただきま~す」
「俺は魔女とか聖女がどういうものなのか全然知らないけど、どういう魔法が使えるの?」
「いろんな魔法があるよ、さすが英雄だなって思ったよ。
わかりやすくゲーム風に言うと、属性魔法っていうの?
火水土風雷光闇の魔法が使えるよ。
攻撃魔法だけじゃなくて、例えば風だと空を飛んだり闇だと人を拘束して動けなくしたりとか。
光だとすっごい光を出して目を眩ませるってのもあるかな。
まぁ、わりといろいろできるよ」
「へぇー、すっごい便利そうだなぁ」
「私は傷を治したり解毒したり、アンデッドに効く攻撃魔法とか~。
あとはなんかバリアみたいなのも張れるよ、魔力が続く限りだけどね~」
「そっか、魔力があるんだっけ。
魔力が尽きるとやっぱやばいの?」
「やばいというか、普通に倒れちゃうね。
数日寝込むとかそういうレベル」
「そっか。
となると、うーん……」
「追っ手の人数が手に負える範囲のうちは、その都度撃退したほうがいいんじゃない?
へたに追っ手をやり過ごしちゃうと、この先にある街とか村で追っ手がいないかどうかビクビクしなきゃいけなくなるし」
「お~、それがいいかもね~。
いずれ指名手配されると思うけど、普通の庶民レベルの服を着れば、城の人間以外にはすぐにはバレないと思うし~」
「なるほど……。
じゃあそうしよっか。
澪と雫は二人で空中にいてもらって、澪には兵士を魔法で動けなくして欲しい。
空中にいても攻撃されるかもしれないから、雫はバリアで自分と澪の二人を守ってもらっていいかな。
俺は動けなくなった兵士を順番にぶっ叩いていくよ、顎とか鳩尾とかさ。
で、兵士を気絶させたら武器と鎧を壊してしまおう。
そうすれば一旦城に帰ってくれるよね」
「了解!
それくらいなら問題ないよ」
「私たちはいいけど、ジズーちゃんは大丈夫なの~?」
「俺は大丈夫。
薫子さんの加護で怪我しないし、身体能力強化もしてもらってるから。
でももし俺がうまくやれなかったら、その時は悪いんだけど澪に任せても大丈夫かな?」
「任せてよ。
この国の兵士って嫌なヤツしかいなかったからね。
ぶっとばすのになんの躊躇いもないよ!」
「だよね~」
「そ、そうなんだ。
あ、ついでにさ。
追っ手は騎兵だってことだから、馬を二頭頂いちゃおう」
「あ、いいねー!」
「馬がいると旅が楽になるね~」
『ジズー、もうすぐ追っ手がくるよ。
がんばってね、でも無理しないでね』
『ありがとう、気をつけるよ!』
「もうすぐ追っ手がくるらしい。
街道でお迎えしようか」
「「わかった」」
自然と顔が強ばる。
いくら怪我しないといっても、殺し合いは怖い。
足がすくんだりしなきゃいいんだけど……。
街道に出た。
心臓がすごくバクバクいってる。
二人は落ち着いた顔してるなぁ。
訓練の賜物なんだろうか。
ん、遠くに砂塵が見える。
鎧を着た人間が馬に乗っている。
人数はっと……、二十人か。
あれで間違いなさそうだ。
「来たよ」
「え?どこどこ?
……あ、見えた」
「よ~し、がんばるぞ~!」
追っ手がもう目の前まで迫っている。
でもスピードを緩める気配がない。
このまま突っ込んでくる気なのかな?
……、さすがにそれはないよな……?
「相手は話をするつもりもなさそうだね。
雫ちゃん、ジズー、いくよ!
はっ!」
澪が追っ手二十人全員を魔法で拘束する。
あ、二十人全員一気にできるんだ……、ビックリした。
澪と雫はすでに高さ十メートルくらいの所に浮いていた。
「くそっ……!
魔女め、卑怯だぞ!」
「お褒めの言葉あざーっす」
「生意気な――ぶべら!?」
「へぶっ!」
「おげぇ!」
俺は一人ずつ順番に気絶させていった。
確実に顎を肉球で打ち抜くだけの簡単なお仕事だ。
最初の一人はそこそこ強めで殴ったら、びっくりするぐらい吹っ飛んだ。
身体能力強化……、強すぎ!
二人目からは軽く叩く感じにしたら、ちょうどいい感じで気絶してくれた。
これからは加減に気をつけよう。
二十人を気絶させ終わると、澪と雫が降りてきた。
「最初の隊長大丈夫?
なんかトラックにでもはねられたみたいに吹っ飛んでたけど……」
「一応生きてる……はず。
俺も自分でびっくりしたよ。
人を殴るのは初めてだったから加減がわからなかったわ」
「猫パンチで人が吹っ飛んだのはほんとビックリだね~」
「ちょうどいい感じに馬が逃げずにいてくれてるから、確保しようか」
そう言って澪が馬に近づくが、馬はその分だけ逃げる。
雫も近づいた分だけ逃げられてる。
「俺は今のうちに剣とか鎧を壊しておくよ」
二人にそう言って倒れている兵士の元へ行った。
一本ずつ剣をへし折り、一つずつ鎧をボコボコにしていく。
「あれぇー、もしかして怖がられてるのかなー……」
「大丈夫……、怖くない……」
雫はアニメ映画の主人公のようなセリフを言いながら何度もトライしている。
効果はないみたいだが……。
俺も馬の傍に行ってみる。
あれ?
馬逃げないな。
小さいから怖がられてないのかな。
さて、どうやって捕縛しよう。
二人を見ると、相変わらず逃げられてるみたいだ。
『ジズー。
聞こえる?』
『あ、薫子さん』
『ジズー最初は言葉を話せなかったでしょ?
それで魔法で話せるようにしたわけだけど、それって対象は人間だけじゃなくて生き物全てなのよ。
だから馬とも話ができるはずよ、試してみて?』
『あ、そうなの?
なんて都合のいい……。
ありがとう、話してみるよ』
馬に話しかけるなんて痛い人みたいではあるけど、今の俺は猫。
傍から見れば猫と馬の戯れ。
何もおかしなことはないはず。
「あのー、俺の言葉わかりますか?」
「ヒヒーン。(む、お前俺たちと話せるのか)」
「はい、あなた達にお願いしたいことがありまして、みなさんを集めて頂いてもよろしいでしょうか?」
「ヒヒーン。(わかった、少し待て)」
そう言って馬は駆け出した。
「馬が急に集まってるよ~。
どうしたのかな~?」
「なんか俺、人間以外とも話せるみたいでさ。
みんなを集めてもらったんだ」
「えぇー……、もうジズーなんでもありだね」
「ヒヒーン。(集めたぞ、願いとはなんだ?)」
「俺たちは龍の巣に行きたいのですが、人間の国に追われています。
できるだけ早く龍の巣に着きたいのですが、人間の足じゃ限界があります。
なので、みなさんにご協力いただけないかと思いまして。
どなたか二頭、この二人を乗せて一緒に旅をしてくれる方はいらっしゃいませんか?
お願いします!」
そう言って俺はガバっと頭を下げた。
それを見て澪と雫も頭を下げた。
馬たちはそんな俺たちを見てざわついている。
協力してくれることを願って、俺は言葉を待つのだった。
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