王都到着
「にゃー」
はい、俺です。
かわいいなぁ、俺の鳴き声。
よし、やるぞ!
というわけで、まずは西に向かって街道を歩くことにする。
しっかし……、ただっ広い草原に街道が一本あるだけのこの景色。
本当に地球じゃない世界に来ちゃったんだなぁ。
前世は子供の頃から入院してたから、こうやって普通に歩くだけでも感動だなぁ。
やっぱり健康っていいな、この猫生では健康第一で生きていこう。
お、なんだあれ?
なんか青くて丸くてプルプルしてるのがいる。
スライム的なモンスターかな?
あ、目が合った。
襲いかかって……こないんかい!
モンスターといっても必ず襲いかかってくるわけじゃないのか。
なるほどね、ひとつ勉強になったぜ!
襲いかかってこないんなら、かわいいなぁスライム的なアイツ。
しばらくキョロキョロしながら歩いていると、前方に道の脇で休憩してる感じの人間が五人見えた。
「おー、人だー」
思わず声に出た。
いかにも冒険者ですって感じの格好してるなぁ。
軽装で剣を持った男三人と女二人。
随分と偏ったPTだなぁ、全員剣士タイプか。
この世界の常識はわかんないからあれだけど、これが普通なんだろうか?
そんな感じであれこれ考えながら歩き、冒険者っぽい五人の横を通り過ぎようとしたその時。
「お、なんだこのモンスター」
「初めて見るヤツだな、新種か?」
「とりあえず捕まえようぜ、ギルドか学者あたりに高く売れるかもしれねーぜ」
えっ?
モンスターって俺のことか?
マジで言ってんのか?男冒険者ABCよ。
あ、そうか。
ガイアに猫って俺だけなんだっけか。
いや、にしてもこんな可愛い見た目の俺をモンスター扱いとか、心が荒みすぎだろ男冒険者ABC。
後ろの女冒険者DEも目が¥マークになってる気がするし、ガイアは怖いなぁ。
薫子さんの加護で俺は素早さがすごいみたいだし、このまま王都まで走って逃げちゃおう!
ダッシュ!
うお、超はえー!
一瞬で冒険者PT見えなくなったし、はるか前方にいたであろう馬車とか馬とか人間とたくさんすれ違ったし!
思ってたよりはるかに速く走れてびっくりしたっつーの。
でもおかげで面倒なことにならずにすんだな、薫子さんマジ感謝。
そのまま少し走ると王都っぽいのが見えてきた。
王都ということで人の出入りが多いのか、門の前には長蛇の列ができている。
そんな門を俺は全力ダッシュで通り抜け、無事王都に到着した。
おぉ~、なんつーか……、まさに中世ヨーロッパって感じだ!
テンション上がるー!
前世じゃ旅行とかしたことなかったからなぁ、一人旅してる感じで楽しいな。
でも、観光は日本人六人を地球に返してからってことで、まずは城と教会かな。
とりあえずそれっぽい所を探そう。
にしても、街の人の表情……、随分暗いなぁ。
人間の国はどこもこんな感じなんだろうか。
がんばってくださいよ王様。
民あっての王ですよ。
人の目につかないように探し歩いてると、空がオレンジになってきた。
日没か……、ガイアは一日何時間なのかな。
お、なんか城っぽい建物発見!
ぽいっていうか、絶対これ城だよね。
これが城じゃなかったらどれが城なんだってぐらい大きいもん。
けっこうわかりやすい所にあったなぁ。
うーん、お城だ。
すごいなぁ、ほんと中世ヨーロッパみたいだ、感動!
さて、次は教会を探さなきゃだけど、たぶん城の反対側にあるあの建物が教会だよな。
いかにも教会って感じだし。
とりあえず行くか。
というわけで、こっそりと教会に侵入!
そしてあったよ女神像。
めっちゃ目立つ所にあるなぁ……、当然といえば当然かもしれないけど。
本物にはかなわないけど、薫子さんらしさはちゃんと表現できてるんじゃないかなぁ。
誰が作ったんだろう、薫子さんと会ったことあるのかな?
てか、像からちょっと離れてても像を介して念話できるのかな。
まぁ、とりあえず試してみるか。
『薫子さん、聞こえる?
今教会に着いたんだけど、像が目立つ所にあるからちょっと離れた椅子の下に隠れて念話してるんだけど。
神気消耗しないで念話できるかな?』
『はーい、聞こえるよー。
その距離なら大丈夫みたい。
まずは最初の目標は達成だね!
お疲れ様でした!』
『よーっし、おぅけ~い!
んじゃ、次はどうしたらいいかな?』
『それなんだけどね、ジズー。
私はあのあと地球の神に現状の報告に行ったの。
そしたらね、女性二人については「本人たちに帰る意志があるなら送ってくれ」って言われたんだけど、男性四人については「あいつらは四人とも悪いヤツらだから城を出ると必ず何らかの悪事に手を染めるだろう。そのときにそっちの基準で適当に処分してくれ」って言われちゃった』
『えぇぇ~、悪いヤツって……』
『こっちとしてもそんなのを四人も押し付けられるのは困るけど、そもそもがこっちの不手際だからね。
しょうがないからこっちで引き受けようと思うんだ。
できればこっちで改心して、幸せな人生を送ってくれれば嬉しいんだけど。
でも今はまだ改心なんてしてないだろうし、一緒にいる女性二人が心配だから早急に接触してほしい』
『了解、すぐ城に向かうよ。
じゃあ六人の情報教えてもらっていい?
見た目の特徴とかさ』
『あ、そうだね。
まず六人とも日本人だから黒髪だね。
ガイアには黒髪の人間は基本的にはいないから黒髪が目印ってことでいいと思うよ。
で、まずは最優先ターゲットの女性二人から。
一人目は佐藤澪、髪が腰くらいの長さで二十二歳。
英雄継承の義で魔女の能力を宿してるね。
二人目は佐藤雫、髪が肩くらいの長さで二十二歳
この子は聖女の能力を宿してる』
『魔女に聖女……、ファンタジーだ!
そういう肩書憧れるけど、いろいろ大変なんだろうなぁ。
てかどっちも佐藤さんなんだね』
『この子たちだけじゃないよ。
他の四人もみんな佐藤みたい、召喚に同じファミリーネームの条件でも入れたのかな?
偶然だったらすごいけど』
『六人の佐藤……、すごい!』
『で、次は男性四人について。
一人目は佐藤竜一、勇者、なんかすっごい悪そうな顔してるわ。
二人目は佐藤二郎、剣聖、こっちも悪そうな顔ね。
三人目は佐藤修三、弓聖、なんかすごく暑苦しそうな顔だわ。
四人目は佐藤四郎、拳聖、この人も悪そうな感じの顔ね。
なんだろう、うーん。
それ以外特徴が言い表せない!
ちなみに六人とも二十二歳なんだけど、こっちに召喚された際に少し若返ってるみたいで今はみんな十七歳になってる』
『おっけー!
一人突っ込みどころがあったけど今は我慢するよ。
じゃあ無難に女性のどっちかに接触するって感じでいいかな?』
『そうだね、それが無難だと思う。
で、接触したあとのことなんだけどね。
まず最終的には、大陸の中心に龍の巣と呼ばれるどの国にも属してない森があるんだけど、そこに世界樹があるからそこに二人を連れてきてほしいの。
私はまだ未熟だから世界樹を介さないと外界に介入できなくてさ。
世界樹を介して二人を地球へ転移させるのが最終目標。
城を抜け出したり、王都を抜け出したり、追っ手から逃げながら世界樹を目指したり、すごく大変なことだらけだと思う。
それを全部ジズーに任せちゃってほんとにごめんなさい。
でも、二人は元の生活に戻さなきゃいけないから……、改めて協力お願いします!』
『気にしないでよ、もう十分なほど謝ってもらってるし。
嫌だったら最初から引き受けてないよ。
それに今は薫子さんの眷属でもあるからね!
どーんと任せてよ!』
『うぅぅ、ほんとありがとね……、ぐすん』
『よっし、それじゃ行ってくるよ。
教会に戻ったら声かけるね』
『いってらっしゃい、気をつけてね!』
行ってくる、いってらっしゃい、なんか夫婦みたいだな。
なんて馬鹿なことを考えながら教会を出た。
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