私の宝石箱

桜々中雪生

無題1

 真白いカーテンが風になびく。キッチンの窓辺、白くあたたかな朝陽が射し込んでいる。ぴかぴかに磨かれたシンク、水滴を反射する食器たち。穏やかな朝。

 キッチンのすぐ傍、ダイニングには、白く塗られたテーブル、四角いレースのテーブルクロス。その上には、ふたりぶんの朝食。こんがり焼けたトーストに目玉焼き、真っ赤なトマト、そして、湯気のたつコーヒー。エプロンをするりと脱いで、椅子に腰掛ける。いつもの青いチェックのパジャマを着替え、糊のきいたシャツを着た彼が向かいに座る。フォークの音と小鳥の声。コントラストが楽しい。「美味しいね」「今日は何をしようか」とりとめのない会話をする。

 さわさわ。

 風が、風に揺れる木々が、ふたりに返事をする。カーテンから覗く白樺の並木が散歩道へと誘う。

 穏やかな朝。幸せな時間。世界は優しくあたたかな白に包まれている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る