18 リツ

あれから事態は終息した。


最初こそパニックだったが、その後エージェントも俺もノーコメントを貫き、その後一切、続報もないので人々は興味を失った。

大炎上していた彼女のSNSは謝罪文を出してアカウントが全て削除された。

妊娠も狂言で、俺との結婚を焦った彼女が、芸能記者にそそのかされたのが事の顛末だった。俺は知り合いに頼んで、彼女を拾ってくれそうなエージェントを手配してもらった。


「事なきを得たね」


「うん、良かった」


一歩間違えれば、いろんな人の人生が狂う。

俺の肩には『俺以外の何か』がたくさん乗っている。

ココさんは何も言わないけど、俺は知ってる。

あれから続報が一切出ないのは、俺の後ろにココさんがいるからだ。ほんとに透明マントだなこの人。



「それで、話があるんだけど」


ココさんはソファに座って、話し始めた。


「私達の関係はどうする?」


えっ?どっち方向の話?


「どうするって?」


「私の存在がリツの人生を乱しているなら、もう逢わないほうがいいと思うの」


ココさん、あの話聞いてたんだな。


「ココさんのせいじゃないよ」


「じゃあどうして?」


「俺が真面目に付き合わなかったから」


「なんで真面目に付き合わなかったの?」


「なんか流れで付き合ったというか…俺、結婚願望がないから、実は結婚絡みで別れることが多かったりして…」


「結婚願望ないの?」


「うん」


「どうして?」


「両親を見てきたから。あんまり夢を持てない」


「そっか…。じゃあ、付き合う前にそう言えば?」


「そうだね、今度からそうする。だからココさんのせいじゃないから、今まで通りでいて」


「そうね、とりあえずは」


なんか意味深だなぁ。

今回はほんとに参った。

すぐにLAに戻らなきゃいけないけど

もう1日だけ延ばしてココさんとドライブに行きたいな。

あの海へ─

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る