Salon de Coco
ぴおに
1st story
アオイ
1
久々に日本に戻った。
TVでニューアルバムのプロモーションを終えて、帰りにマネージャーに誘われた。
「ちょっと飲んで行こうか?」
「あぁ、いいっすね」
明日からしばらくoffだし、友人にはまた別の日に会おう。それにマネージャーの坂田さんは日本に居る間だけ付いてくれる人で、まだあまり馴染みがない。親睦を図るにはいい機会だ。
「ちょっと面白いお店なんだよ。アオイも覚えておくと便利だよ」
そう言ってニヤリと笑う坂田さんの顔はちょいワル親父だった。
繁華街のど真ん中、ビルとビルの間に建つ狭ーい古ーい雑居ビル。こんなとこの店なんて、ウナギの寝床みたいな狭いカウンターバーとかじゃないの?なんかあんまり気乗りしねぇな…。
エレベーターを4階で降りると、坂田さんは隅にある鉄製のドアを開けた。ここがお店?いや、階段だった。
「何処行くんですか?」
「5階だよ。お店は5階にあるんだ」
なんかヤバくね?
エレベーターは4階までしかないのに、5階があるの?屋上じゃなくて?俺、付いていって大丈夫?
確かに上に続く階段がある。
5階に着くと、マンションの一室のようなドアが一つだけあった。坂田さんがそのドアを開けると──
「いらっしゃいませ」
ドアの向こうは思ったよりずっとキレイで広かった。
やっぱりマンションの一室のようで、大きなソファが向かい合い、間には小さなテーブルが3つ。奥のテラスの前にもテーブルが2セット。脇に階段があってロフトに繋がる。左にはカウンター。カウンターの向かい側の壁には大きなスクリーン。ちょっと広めのワンルームマンションみたいな造りだ。入口で靴を脱いでスリッパに履き替える。いらっしゃいませ?ここがお店なの?
「久しぶり」
坂田さんが親しげに声をかける相手は、カウンターの中で作業していた。
「あら、お久しぶりね」
柔らかく微笑むその女性は
どう見てもキッチンで家事をする可愛い奥さんだった。
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