朝のはじまり


 朝、同棲している恋人の髪をブローして、前髪をワックスで上げてやる。

 普段はオドオドしている男だが、俺が朝スタイリングをしてやると、途端にキリリとした顔つきになる。

「今日も男前だぞ」

 鏡に映った恋人に声をかける。

「当たり前だろ? トップスタイリストのお前がセットしてくれたんだからな」

「髪の毛セットしなくても自信持てよ」

「お前がやってくれないと、営業部長の俺じゃないからな。さぁて、これで今日のプレゼンは楽勝だな」

 今日のプレゼンが通ったら臨時でボーナスが出るらしい。

「じゃあ俺、特上寿司食いてえわ」

 そうして完璧な男のダメダメな朝を完璧に仕上げて、俺の一日が始まる。

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