一流女優、一人の母

 わたしは、七色の声帯を持つ女優と呼ばれてきた。

 動物、掃除機、エンジン音だって真似できる。芸を披露すれば、客は大爆笑だ。

「船の音がするよ、大型船かなあ」

 目の光を失った息子が、無邪気に聞いて来た。

 ここは病院の無菌室。窓はない。

 でも彼の視界には、広大な海の景色が広がってるのだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る