絵に描いたような学園ファンタジーの世界に飛ばされた場合の対処法

継生 大秀

第1章

転校先がおかしな学校だった場合の対処法

 2時間ほど走っただろうか……

 高速道路を降り、一般道をひた走るドイツ製のセダン車。東京から2時間も離れた地では、少し目立っていたかもしれない。

 周囲には山々が見え、日本の首都、東京とは全く異なる景色が広がっている。

 いわゆる田舎いなかである。



 またしばらくすると、田舎の中でも栄えていたであろう中心街から離れ、車は木々に囲まれた道を進んだ。

「ここは…どこですか……」

 私がおそおそる運転手に質問すると、

「もうしばらくすれば、到着いたします」

 とだけ答えた。



 5分ほど経った時、車が停車した。

 窓の外を見ると、先ほどと変わらず木々きぎが道路の周りに広がっている。

 しかし、違う点が一点あった。

 それは、フロントガラスから外を見ると分かった。

 巨大な門が車の進む先に立ちはだかっていたのである。マンガに出てきそうな赤レンガで作られた柱に、鉄製であろう格子状こうしじょうの扉が付けられている。



 いきなり現れた門の存在に驚いている私をよそに、門は開いた。

 人が開けたわけではないので、自動なのだろう。田舎にある学校の割には、お金があるのかもしれない。



 門の先を車で進むと、森が開け、4階建ての建物が両脇に現れた。門と同じ、赤レンガで作られているようだ。

 しかし、建物に人気ひとけは無かった。なんの建物なのだろうか……



 道路の両脇に並んでいた建物が途切れると、正面にこれまた4階建ての建物が現れた。先ほどの建物と、見た目は変わらないが、かなり人気ひとけを感じる。

 車は建物の前で、旋回せんかいするようにして停車した。

「お疲れ様でした。到着でございます。この先は、あちらの者が案内させていただきます」

 運転手が後部座席のドアを開けて言うと、建物の入り口には、よくあるメイドさんの格好をした女性が立っていた。



 何故なぜメイドさんの格好なのか不思議に感じながらも、後をついていくと、1階の一番端の部屋へ案内された。

 その部屋に入ると、廊下の広さからは考えられないほどの広さが目の前に広がった。本棚が立ち並んでいるため、奥行きはわからないが、横の広さは15メートルから20メートルほどあるようだ。部屋としてはかなりの広さである。

 何故、この広さがあるのか…。廊下は確かに、通常の学校の広さと変わらなかった。外から見ても、建物の端だけ拡張されたようには見えなかった。



 またもや不思議なことが現れたなぁ、と考え込む私に気づいたのか、奥から声が聞こえた。

「おや、人が来たようだ。君は、新たな転入生だろう。そんなに考え込まず、奥へ来なさい」

 本棚の奥から声が聞こえた、4列目あたりの本棚だろう。

 声の通り、本棚と本棚の間を進むと、5列目の本棚で本を探す老人を見つけた。

 恰幅が良く、まるでダンブルなんとかという魔法学校校長のような風体だ。白ひげも長く生やしているし、もはや本人なのではないだろうか……

「わしはダンブルドアではないぞ。彼奴は、空想上の人物じゃろうて」

 白ひげの老人は笑いながら、否定した。



 数秒の間が空いた。

「えっ」

 私は、思わず声を出してしまった。

 私、今、この人の見た目のこと声に出したっけ。いや、流石さすがにそんなことはしてない……

 何故、私が思ったことに対して否定してきたんだろうか……

 また、疑問が出てきてしまった。



「君が、真木まき詠乃うたのちゃんだね。待っていたよ。わしは、ここの校長、馬掛まがけ信詠しんえいじゃ」

 差し出された右手に反応するまま、私も右手を差し出し、握手した。

「ここは学校なんですか」

 私はとりあえず、校長という人物の自己紹介に対して質問してみた。

「そうじゃが…。お母さんから説明聞いてないのかね」

 校長は少々困った顔を見せ、説明を加えた。



「そうじゃな。例えば、わしは先ほど君が思っていたことに対して、答えたね。君はそれに困惑していたが、これはわしの能力の一つで、このとしにもなれば自分の能力を操るなど造作もないことじゃよ」

 疑問が解決したように感じたが、新たな疑問が増えてしまった。能力って何よ……

「能力というのは、それぞれの人が持つ魔法のようなものじゃ。まあ、ここら辺の話はまた後で知るじゃろう」

 また心を読んできた。これでは下手なことは考えられない。

「魔法が、私となんの関係があるんですか」

 いきなり情報量が多く、少し強めの口調になってしまった。

「それもいずれ分かる」

 笑いながら、校長は部屋の奥へ消えていった。



「諸手続き等をさせていただきますので、どうぞこちらへ」

 先ほどのメイドさんが後ろに立っていた。

 私は多少驚きながらも、そのメイドさんの後をついていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る