平成32年硬貨
葵流星
平成32年硬貨
それは、ある日のことだった。
喉が渇いた俺は、飲み物を買いに家の近くの自販機に歩いて行った。
「さて、何にしようか。」
自販機には、缶コーヒー、紅茶、水、お茶、清涼飲料水といった普通な物しか置いて無かった。
コーヒーと紅茶は、家にあるので買う必要はなく。
また、栄養ドリンク的なエナジードリンクも飲みたいとは、思わなかった俺はペットボトルのコーラを買うことにした。
ボタンを押し、財布から100円玉2枚をポケットに入れた俺は、自販機から落ちてきたコーラを取り出すと、後から落ちてきた小銭を自販機から取り出そうと右手を差し込んだ。
すると、どうやら前の人が小銭を取り出すのを忘れたらしく、10円玉が残っていた。
俺は、それを50円玉と一緒にズボンのポケットに入れて家に戻った。
机の上にコーラを置いた俺は、ポケットの中から小銭を取り出した。
何の変哲もない50円玉と、10円玉だった。
俺は、その小銭を財布に入れようとしたその時10円玉に書かれた文字が目に入った。
そこには、『平成三十二年』と記されていた。
俺は、昭和の見間違いだろうと思い、そのまま財布にしまった。
数日後、俺はまたその自販機に行った。
何故かコーラが160円だったので俺は、また200円を自販機に放り込んだ。
俺は、出てきた10円玉を一枚確認すると昭和65年と書かれていた。
その場で、コーラを飲み切った俺は家に帰るとそこには母さんと弟が居た。
俺は、その光景を懐かしく思い、今度はコーヒーが飲みたくなったのでまた、自販機に向かった。
玄関先で、弟の友達にあったのでこんにちわと俺は、話しかけた。
しかし、返事が返ってくることはなく俺は不愛想な奴だなと思い家を後にした。
自販機で缶コーヒーを買った俺が再び家に戻るとそこには弟と母さんの姿は無かった。
俺は、ソファに腰をかけテレビを見始めた。
しばらくして、父から電話がかかってきた。
財布の中には、10円玉は一枚も無かった。
平成32年硬貨 葵流星 @AoiRyusei
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