地下鉄【マカシリーズ・3】

hosimure

昼間/大学にて

「ねぇねぇ、帰り、カラオケ行こーよ」

「おっ、良いね」

「あっ、わたしも行くぅ」

 そう言って手を上げると、周囲にいた友達がきょとんとした。

「えっ、ルカ。行けるの?」

「今日、バイトあるって言ってなかったっけ?」

「わたしのバイト、夜勤なんだ。だから昼間はへーキ」

 にっこり笑って手を振ると、今度は不安顔。

「え~。なら、寝た方が良いんじゃない」

「夜勤ってきっついよ。今から帰って寝たら?」

「大丈夫だって。明日は授業、午後からだし。ちょーどバイト代、入ったばっかだから奢るよ」

「えっ、ホント?」

「ラッキー。今日はルカの奢りね」

「はいはい」

 奢り、という言葉に気を良くした友人達と一緒に、大学の校舎を出る。

「ねぇねぇ、そう言えば聞いたぁ? 最近、ヘンな地下鉄が出るんだって」

「『地下鉄が出る』? ある、じゃなくて?」

「それがね、真夜中にいきなり地下鉄の入り口が出るんだって。それでうっかりそこの階段を下りて、地下に行くと、この世じゃない所へ行く地下鉄に出会っちゃうんだって」

「へぇ…。でも乗らなきゃ平気なんじゃない?」

「さぁ。アタシが聞いたのは、そういう所へ行くってことだけだから。最近さぁ、霧が多いじゃん? だからそういうウワサ話が出るんじゃないかなぁって」

「ああ、あるかもね。ちょっと前にも、ケータイの都市伝説はやってたし。でもいつの間にか消えていたよね」

「ごほっ!」

 何も口に含んでいないのに、思いっきりむせた。

「ごほっがほっ!」

「なぁに、ルカ。怖かった?」

「ケータイ電話のウワサ話も、嫌がってたもんね」

「いっいや、ちょっとノド渇いただけ。先にファミレスにでも行かない? そっちも奢るからさ」

「いや~ん。ルカ、太っ腹!」

「良いバイト、見つけたんだね」

「まっまあ、夜勤だからね。それに身内に紹介されたヤツだから特別なの」

「でも気を付けなよぉ。最近霧が多いせいで、変質者増えているみたいだしぃ」

「ヘンなウワサもあるからね。行く時とかタクシーでも使って行きなよ」

「うん、さんきゅっ。でも大丈夫、人気の多い所だから安心して」

 心から心配してくれる友人達に笑みを浮かべて見せる。

 ほんの少しの罪悪感と共に。

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