番外編SS・『夏といえば!』(会話文のみ)

「あっぢぃなー……」

「勇者、品のない声を出すな。今は姫だろう」

「勇者だって姫だって人間だぜ? 暑けりゃ参るんだよ」

「貴様、前世の旅の途中で伝説の剣が眠る火山に立ち寄らなかったか?」

「忘れたー」

「くそ、不毛なやりとりだな……我まで暑くなってきたぞ」

「マオたん海行こうぜ海ー」

「海だと?」

「白い砂浜、青い海。水着でサービスしちゃうぜ?」

「水着」

「暑い夏にピッタリな、着たまま泳げる露出度の高い衣装のことだぞ。生足魅惑の人魚姫になれるぜ!」

「そ、そんなことぐらい知っておるわ! それより若い娘が生足だのヘソ出しだのとはしたない!」

「いやヘソ出しは言ってねーけど……水着だって伝説の装備なんだぞ」

「なにを馬鹿な……」

「いやマジで。海の近くの神殿の奥で大事に守られた宝箱に入ってた」

「水着が」

「セクシーで可愛いなんかヒラヒラした布のついたビキニが」

「むむ……あんなに防御力の低そうな装備がか?」

「たぶん装備者を守る魔法がかかってたんだろうなー」

「それで貴様、その水着はどうしたのだ?」

「……勇者一行は野郎しかいないからさ」

「察した」

「誰も装備できないからそっと宝箱に戻したよ……」

「なんというか……虚しいな……」

「そうだ! あの神殿が今もあるならビキニも残ってるかも!」

「む」

「伝説の装備、興味ないか?」

「そう言われれば……惹かれなくはないが……」

「今なら俺も装備できるしな! 見たいだろ?」

「そ、それはっ……」

「マオたん顔真っ赤だぞ。やらしー」

「ぬなっ!? き、貴様が妙なことを言うから……余計暑くなったではないか!」

「わりぃわりぃ。魔王様は意外と純情でいらして」

「…………」

「ほ、本気で睨むなよう。ごめんて」

「……ふん!」

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